第22話
「いいか?未央音、今から俺が言う言葉をちゃんと復唱するんだぞ?」
「……ん……分かった」
「朝、寝ている男の布団に潜り込んではいけない……言ってみろ」
「朝……寝ている男の布団に……潜り込んでは……いけない」
「よし、そうだな」
「……でも」
「…ん?未央音?俺はでもとか言ってないぞ?」
「…れーじは……別」
「言ってない、言ってない」
学校で未央音に男の布団に潜り込む事がどれだけの危険性を秘めて居るのか指南している所だが、御覧の有り様と言うかなんと言うか、思いの外難航している所だ……いや……この手の話題を未央音とする時は難航した記憶しかないかもしれない。
「…やだ……」
ぎゅっ
くおっ、負けるな冷迩、いくら可愛い幼なじみと言えど俺達はもう高校生………いつまでもこの行為を容認している訳には行かないんだ……
「…やだぁ………」
抱き付いて来る未央音からうるうると可憐な小動物を最大限まで発揮するような仕草が伺える。
「……全く、未央音には敵わないな」
まぁ、未央音の懇願に俺が勝てる訳もなく、今日もいつもの『布団に潜り込んで来るのそろそろやめた方がいいんじゃない?』会議は俺の敗北で幕を閉じた。
なんて言うか……あれだな、敗北した筈なのになんかこう清々しい気分の自分もいるな……うん……いつもか。
「二人共何の話ししてんのー♪」
そんなやり取りをしていると、暇をもて余した六炉が俺達の間に割って入って来た。
「ん?あぁ、いつもの会議をちょっとな」
「あー、またやってんのあれ、冷迩も飽きないねぇ、いい加減諦めたらいいじゃん?幼なじみなんだから一緒に寝る事位いいじゃんねー?未央音ちゃん」
そのとんちんかんな会議の存在を知る六炉はいつものように未央音の肩を持っていた。
六炉の意見はそれはまぁ小学生とか幼い頃の話しだったら理解も出来るが高校生になっても一緒の布団で寝ていると言うのは幼なじみと言うだけでは少し説得力に欠けると思う。
「…ろっく~……いい事言った……今度ちょっと…高級な割り箸……持ってきて…あげる」
「うん、未央音ちゃん何で時々俺に割り箸食べさせようとすんの?」
「まぁ、それについては笑えるけど…」
「笑えないんですけど!?何?俺普段から未央音ちゃんに割り箸食ってると思われてんの!?だとしたら由々しき事態なんだけど!?」
「落ち着けよジョン」
「落ち着いてたまるか!!英語の教科書か!!」
ツッコミポイントを増やしても順次適応して行く六炉、正直評価(笑)に値する。
「じゃあお前だったら朝起きて一葉が隣で寝てたらどう思うんだよ」
「一葉が……寝てる…?……俺の……隣で…?」
六炉はまるで名探偵に全てのトリックを見破られたかのように驚愕の表情を浮かべながら後退りしていた。
「冷迩、質問していいか?」
「…なんだ?言ってみろ」
「一葉が俺の隣で寝てるんだよね?その時の俺は生存してる状態なの?」
なんだこのクソみたいな質問は……
「は?どう言う事?」
「…いや、だって一葉が俺の隣で寝るとか、そんな状況あり得なくね?……寝てるんだよ?俺の隣で?一葉がだよ?じゃあ死んでるじゃん俺」
「……………………」
どういう方程式を使えばその答えにたどり着くのかは知らないし、なんなら知りたくもないが……こいつ等幼なじみ同士が普段どうやって生活してるのか少し心配になって来た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます