第48話

「よし……少し落ち着いたな」



白目で地面に倒れる六炉、丸いアイスを三個頭の上に乗せたようなたんこぶを作っている志乃を前に冷迩は腕を組んで頷いていた。



「うぅ…少々取り乱したでござる」



分身と並んで正座しているというシュールな光景を見せる志乃。



ってか分身にもちゃんと物理攻撃効くんだな。



「少々?些か反省が足りないみたいだな」



もぎゅもぎゅ



冷迩は笑みを浮かべながらそのアイスのようなたんこぶを分身諸とも掴んでいた。



「あだだだだだだだだ、れ、冷迩殿!!痛いでござる!!二倍痛いでござる!!」



二倍痛いのかよ!!分身としては欠陥が過ぎる。



「………ろっくー…寝てるの?」



「あれ、おかしいですわね…いつもはすぐ再起動する筈なんですが……充電がないのかもしれませんわね」



「俺に充電が出来るシステムはねぇよ!!」



「………あの、冷迩殿?」



「どうした?下らない質問だったらたんこぶ引きちぎるぞ」



「お、恐ろしい事を言うでござるな……まぁ、ただ純粋に気になっただけなんで御座るが……」



「なんだよ、言ってみろ」



「冷迩殿と未央音殿は喧嘩にルールを設けているみたいでござるが、それはどうしてなんでござるか?」



バーサーカーだった志乃も、絶対的な力の前に漸くひれ伏し………落ち着きを取り戻したのか、素朴な疑問と言った様子で分身と一緒に首を傾げた。



俺も一つ疑問なんだけどその分身いつ消えんの?中々の威力を叩き込んだつもりだったけど……



「……いや…まぁ……それは」



「………………」



志乃の質問に視線を泳がせながらちらちらと未央音に

視線を送ると、未央音はまだ機嫌が悪いのか目があった瞬間にむっとした表情を浮かべ、頬を膨らませて視線を反らした。



「いや……なんでだったかな、忘れたわ……あはは」



なんて悠長に後ろ頭を掻いていると……



ドスッ



「……うぐっ!?」



唐突に未央音の頭突きが自分の腹部に突き刺さった。



「って~……何すんだよ!!」



「……れーじの……ばか……きらい」



頭を腹部に当てたまま…未央音は小さく呟くと、とぼとぼと歩き、教室の扉に手を掛けた。



「…………………」



教室から出て行くかと思ったが、未央音は無言のまま少しその場に留まっていた。



「……んぅ……ばかは少し……いい過ぎたかも…」



「ん?み、未央音?」



「…でも……きらい…少し……ちょっとだけ………ほんの少し……どっちかって言うと…好きよりの…きらい…だから」



「…未央音ちゃんそれは最終的に好きの方が強くなっちゃってない?」



「……………………」



「……………………」



まぁ、最終的にどうなったかと言うと再び俺の隣に戻って来た未央音はそっぽ向いたまま再び手を繋いだ訳だが……



一体何がしたかったんだこいつは。



「……………………」



「うぉっ!?」



あとなんか気付いたら一葉が真顔で鼻血を流していた。

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