第3話・モンスターの進化

 ゲームを始めて色々な事が起きた。


 まず畑の世話を終えたら都市を探索していると図書室があり、そこで色々本を読んだりして情報を集めたり、受付嬢に話を聞いて、他に依頼がなにか調べたりした。


「クエストですか?」


「はい。クエストボードにあるものだけですか?」


「いいえ、あそこにあるのは共有クエスト。冒険者なら誰でもできる依頼を張り出しています。冒険者様なら、生産クエストも受けられますね」


 生産クエストは生産職専用らしい。銅の片手剣×3の納品とか色々あった。マッシュマックもあって、売らずに取っておいた★2の野菜をクエストで消費。


 他にも似たような野菜のクエストをこなして畑を拡大する。次は3500必要だ。


 銅の片手剣を作る為に、鍛治のチュートリアルを受ける。レンタル生産場と言うところを借りて受ける。それで銅の片手剣を作り、銅鉱石をゲットしたりした。


 兵士の草原は他にプレイヤーがいる為、俺は人気が無い『廃坑山』へと向かい、そこでレベリングとアイテム集めに勤しんだ。


 ◇◆◇◆◇


 兵士の草原のボスモンスター草原狼は複数の狼の群れと戦うボス戦だ。草原から先のフィールドに出向くにはこいつを一度でも倒しておかないといけない。


 パーティ人数は少ないが勝てるだろうと思い、ボス戦へと挑む。


 緑色の狼達が現れ、すぐに戦う準備をする。


「シンクは狐火で範囲攻撃、俺は接近戦からタロウは周りにいる狼のけん制してくれ」


 全員が頷き、戦闘が始まる。数は4匹、普通だな。ハズレだと8匹だったりする。まあドロップアイテム狙いだと8匹は当たりになるんだけどね。


 戦闘はファイタードックよりキツイと言う設定だろ。一対一なら問題なく倒せる。


「タロウはそのまま攻撃を躱しつつ他の奴らを抑えて、シンクは狐火をじゃんじゃん使え。俺はすぐに一匹落とす」


 とはいえ、そう簡単にソロで通してくれないのがボス戦だった。一度目は死に戻り、デスペナを受けてしまう。


「デスペナすると、しばらくステータスの半減。再度死に戻りはさらに半減するから、畑で作業しような」


 これはテイムモンスターにも適応される、死に戻った子は休ませないといけない。


 今度は気を付けて挑戦して通る事はできた。掲示板でも慣れた奴で数が少なければレベル4で通れるって言ってたけど本当だな。


 とはいえこのまま目的地まで移動はできそうにない。今日は諦めておこう。


「尻尾がレアドロップだったな。爪と牙はまあまあだ」


 そう呟くと、


【ワールドアナウンス!ワールドアナウンス!】


【兵士の草原のボスモンスター『草原狼』が単独討伐されました!】


『スキルのレベルが上がりました!』


『アッシュ様には報酬として草原のネックレスとSP3、称号『草原の兵士』が送られます』


「えっ、単独討伐?俺勘違いしてたか?」


 もうすでに単独討伐されてそうだけどと思ったが、俺が初らしい。レアドロップアイテムらしいネックレスとSPが手に入った。


 騒ぎになりそうだから急いでその場から離れる。草原狼は草原の端で現れるからプレイヤーと出会うことはなく、都市に戻りログアウトできた。騒ぎになって無きゃいいけど。


 ◇◆◇◆◇


「水晶の欠片が手に入るのはありがたい」


「コンコン」


「はいはい、シンクのおかげで、空中を飛行するコウモリバットを倒せているよ」


「コーン♪」


 得意げなシンク。狐火の範囲が広く、小さく動きが厄介なコウモリバットを倒せている。MP管理が大事だな。


 アイテムを稼いだりしながら、すぐに戻るを繰り返す。


「キャラクターレベルは5に上がって、斧はやっと6レベ。従魔を連れて居るから従魔術も6レベに上がってくれた」


 農業と歌唱も上がっている。歌いながら畑の世話してるからね。意味は無いよ。


 そもそも調べたけど演奏と歌唱はいまだ使い道は分からない扱いだ。意味あるのこれ?


 生産クエストは意外と知れ渡っていないから、掲示板に書きこんだ。独占しても意味ないからね。


 それからやっと畑代3500エン集められた。これでマッシュマックをより広げられるぞ。


 新しい野菜に乗り出したいが、ゲーム時間が限られているから、絶対に安定して育てられるのしか試せていない。新しいのも育てたいが怖いんだよな。掲示板にも肥料やり過ぎて枯らす人もいるみたいだし難しいな。


「また町の中のクエストを調べるか」


「コン」


 頷くように返事するシンク。マフラーのように首に巻き、頭にタロウを乗せて移動する俺。このスタイルに慣れてしまった。


 町に付いたらクエストの途中のゴミ拾いクエストをしておこう。俺はこんな感じだが早い人はレベル8になってるらしい。


 銅鉱石を手に入れたし、また銅のインゴットを作り置きして銅製品にするか。鉄鉱石もあるけど、数が限られているからな。


「おお、新入り。掃除中か」


 管理人のドワーフさんが話しかけてくれた。鍜治場でインゴットを作り終えて薪でできた灰を集めて捨てているところ。なぜか感心された。


「良い良い、そういうところが一流と三流を分けるからな。ここはみんなの鍜治場だ、大切にしてくれ」


「はい」


「そうそう。薪など、木材や炎で高炉が変化することがある。その高炉で鍛冶をすると、性能が上がっていたり、特殊な貴金属になったりする。覚えておくと良い」


「特殊な能力か、分かりました」


 そんなことを聞きながら、掃除を終えてクエスト消費。


「次は加工道具と品種改良セットを合わせた奴を買おう」


 値段はセットで12000もするが、どちらも単品だと7000する。両方必要だから安く買える抱き合わせで欲しい。


 それを目指してやっていると少しずつ変化が起こり始めた。


 ◇◆◇◆◇


「学校終わりにログインっと」


 納屋から出るとシンクとタロウが畑を一周したりしていた。畑に実るのは薄いピンク色のカリフラワー。マッシュマックだ。品質は★3を維持している。


「意外とこれの収入が大事だからな、大切に育てないと」


 収穫してから適当な歌を歌いながら種まきと水まきをしようとする。歌を適当に歌い、マッシュマックを収穫すると歌唱のレベルが5になった。


『春の歌を習得しました!』


「はい?」


 種まきに移ろうとしたら、そんなアナウンスが流れた。春の歌ってなに?


 調べると魔法を覚えて居ないのに、魔法一覧があった。どうも歌唱魔法と言う扱いで魔法を選べる。春の歌は歌いながら作業すると育てている物の品質を上げると書かれている。


 早速使用するとBGМに農業に適した歌が流れ出して歌いながら作業する。


 肥料も使い、品質を上げようとする。少しでも上がれば店で売るのが助かるんだ。


「しかし歌唱魔法、そんなものがあるんなら歌唱や演奏は魔法カテゴリーなのか」


 春の歌の習得条件を確認したら、歌いながら農作業をすると書かれている。


 歌いながらが条件なら、試しに戦闘とかも歌いながらするか。目立つといけないから、廃坑山でやろう。あそこでいまだにプレイヤーに合わないのは凄い。そりゃβ版で調べ尽くしたとか言われてるけど、なんか増えてるかもしれないのにね。


 ◇◆◇◆◇


 そうして戦闘していたらタロウが光り出した。


 進化だ、従魔は一定のレベルや条件を満たすと進化する。このゲームの売りの一つだった。


「おおっ、進化先が出て来た」


 掲示板などで分かっている『エススライム』。手乗りサイズからドッチボールくらいの大きさになるがある。


 けど『水晶スライム』って知らない種族があるぞ。


「これは水晶一択」


 そうして水晶スライムを選んで進化させる。透明なつやつやボディに、手乗りサイズから少し大きい饅頭か肉まんくらいの大きさになったタロウ。


 水晶弾と言う技や、加工:なめしと言うスキルを覚え、俺はおおっと驚く。


「お前、皮を加工できるようになったのか?」


「(コクコク)」


 頷くタロウに、皮素材を渡すと革に変えてくれる。なめしの実で漬けてから時間を置く作業が簡単になった。


 皮もただ売るより革にして売った方が高く売れる。シンクも喜び、俺も喜んだ。


「よーし、流れが来たぞ」


 そんな事を言いだすが、実際そうであった。良い流れが来て居る。それは俺だけじゃなく、他のプレイヤーも巻き込むほどの凄い流れが待ち構えていた。

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