第16話・城でのお茶会

 洞窟の中に巨大な空洞があり、その中に立派な白亜の城がある。廃坑山の奥はこうなっているのかと言う雰囲気で、小さな鎧兵士や小さな妖精が巡回や庭の手入れしている。


「くっふっふ。我が城を見て驚きを隠せないようだな」


「維持するのに時間を掛けてますから」


「ええ、びっくりです」


「ん?よく見れば、第一層でよく出入りする冒険者だな。奥には来ないのかと見て居たが、くっふふ。お主は盟約を守っているようでなによりだ」


 セーフ。俺は盟約を破っていない。だが聞かないとこの先に進めない。


「すいません、不勉強でして、古き盟約について教えてはいただけませんか?」


「? なんじゃ、知らなかったのか。まあ盟約は300年ほど前だからな。知らない者もいるか。知らない事を知らないと言えて偉いのう」


 そう言って頭を撫でる。俺より年下っぽいが、向こうは浮遊したりするので手が届くな。


「古き盟約とは人間の王族と我との間で結んだ約束事だな。不可侵契約とも言う。我がこの城と一定の範囲以外の場所で活動しない代わりに、こちらに手を出さない。新たな種族に成りたい者が居ても止めない代わりに、なにもしないというものだ」


「……吸血鬼に成れるんですか?」


「うむ。仲が良い者や力強い者はOKじゃ。お主は力が無いが、リリィの病気を治してくれたからのう。いつでも歓迎するぞ」


「ありがとうございます」


「とりあえず時間はややずれているがお茶の時間にしよう。頼めるか『メイ』」


「仰せのままに」


 ◇◆◇◆◇


 ベランダから中庭が一望出来て、紅い薔薇園が咲いている。リリィやウチの子の話を楽しそうに聞き、古き盟約に付いて詳しく聞くがやばい。


 吸血鬼の一族、少なくても薔薇姫の眷属などは王国や人間などに害をなさない代わりに、静かに生活させろと言う内容。これって下手をすると新しい敵エネミーが誕生してた?


 要塞都市も、元々は自分を監視する監視場所らしく、喜々として話してくれた。そんなバックストーリーあるのかよッ。


 と言う事は、プレイヤーが何度も薔薇姫にアタック仕掛けてたら吸血鬼一族と戦闘が起きてたかもしれないじゃないかッ。


「うむ、そうじゃな。面倒じゃが潰すしかない」


 危ねえぇぇぇぇぇ。


 俺は近年の人間はこのことを知らない事を伝える。要塞都市はどうしてここが要塞なのか知らず、都市として機能している。


「なんじゃと!?古代の勇者が我と戦って、ついに結んだ盟約を忘れるとは。はーーー時の流れは残酷なものじゃなあ」


「いかがなされますか?」


「今度王都に行って、現王族と会話をしよう。初手戦闘があることを考慮しても、まずは話し合いじゃ。最近冒険者が活発化しているからな。早めに手を打たないと、力の差を理解せぬ者がガンガン来るぞ」


「分かりました。ドレスの準備をします」


「戦闘用にしてくれよ。初手で舐められると人間はバカなことしか考えぬ」


 すいません王都のプレイヤー。俺にはこれが限界です。一応攻撃の意思が無い人は見逃してと伝えましたし、神々の加護が無い人は殺さないと約束させました。


 とりあえず薔薇姫には王都を滅ぼす意思は無いのを確認しました。ふう。


「しかし、こうなると奥に行けないのか」


「ん? ああならお主は許可しよう。敵対する時も遊んでやるし、その気が無いならお茶を一緒に楽しもう。なんせ始祖とはいえ太陽は天敵でな。薔薇園やたまに来る子供しか楽しみが無いんじゃ」


「発掘とか、そういうものを集めるのは良いですか?」


「うむ、廃坑山を我が許す限り好きにすることを約束させよう。元々廃坑になったのも、我が居城の為だからな。まだここは生きているぞ」


「ありがとうございます」


 なら後日で探索していいか聞く。


「後日と言わず、いまでもいいぞ。リリィはメイが送り返そう。ついでに村の族長に話しておかなければいけない。まさか春の女神も忘れて居たら大変だからな」


 ん?不安なワードが出て来たぞ。


 確か立ち入り禁止エリア二つあったけど、念のために聞く。


「………メイよ、もしかしたら」


「はい。お忘れになっていますね」


 長い溜息を吐く薔薇姫。めんどくさいから後にしようとお茶を楽しむ。


 イベントはもう一つのエリアが関係してるっぽいな。少なくても薔薇姫を攻略するとか無理だ。


 俺が鍛えていないのもあるけど、その倍の倍以上ある。ジーク達でも無理だから。


 話をし終え、廃坑山の奥を調べに出向く。


「野生の影などいるからな。我の所為で発生する野生の精霊で、捕まえても良いからのう」


「この子達のことです」


「?」


 鎧を着た小さな兵士達を紹介され、分かりましたと言う。せっかくだからテイムしようか。


 そのまま探索して帰りますと伝え、リリィをお任せする。こうして探索に出向くのであった。


「あっ、ジーク達に詳しくメールするか。でないと訳が分からないか」


 そう決めて、すぐにメールを出すと『助かります』とすぐにきた。向こうは大変なことになってそうだからな。


 あと、薔薇姫や眷属が来るが攻めて来る訳ではないし勝てないからと伝え、俺は廃坑山奥地へと向かう。

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