第34話・永久の別れ

 農業として畑の世話をして品物を増やして加工、それを要塞都市で売る作業をする。妖精さんが増えているから、要塞都市以外でも王都で露店が出せる。


 こうして客層を増やしながら作業を繰り返してやっと落ち着いた。王都はジーク達がいるから、最前線の人達も対処できた。


 やっとできた時間、称号を一人多く連れて歩ける軍勢従魔使いにしてタロウ、輝夜、シンク、クロナ、マシロ、ナイトを連れて行く。ヒカリはお留守番で木工で色々している。


 なんかシープと一緒になってテーブルとか椅子を作り、ペイントツールで色をつけたりしている。木の食器も作り、楽しそうだ。今度商品として並べるつもりだ。


 そんなこともあり墓参りへ、お花とお菓子を用意して俺達は教会へと向かうのであった。


 ………

 ……

 …


 天使と言う事で司祭さん達に祈られる輝夜。普段通り、ぼーとしているだけだが凛々しいらしい。


 墓参りなので、奥の墓地に行き、話のお墓を探す。すると凛々しいはこちらだろう。なんかサーコートを着こむ騎士っぽい人が花を持って歩いている。


「おや、こんにちは」


「こんにちは」


 話しかけられたので話をする。なにかフラグを踏んだか?


「従魔使いですか、失礼ですがご用はいったい?」


「知り会いになったおばあさんの友人の墓参りです。なんでも当時の従魔使いで、従魔と別れたらしくて会って欲しいと」


「ああ、なら私の父の母のことですね。ご一緒しても?」


「よろしいんですか?」


「ええ。おばあさまは従魔が好きな方と聞いてますから」


 そう微笑み、ご一緒にお墓参りをする。隅の方で綺麗にされていて、明るいところにあった。クッキーと紅茶を置き、花を置く。


 みんなでキレイキレイするかと話をして、いいんですかと聞かれた。別にいいですよと言って、墓石を綺麗にする。


「ねえねえ」


「どうしたクロナ」


「泣いてるけどいいのパパ?」


 それに真剣な顔をするお孫さん。俺もなんの事だと思ったが、お孫さんが分かったようだ。


「悪魔族と言うことは精神魔法ですか?おばあさまの魂がここにあると?」


「そうなのかクロナ?」


「うん。泣いてる女の人がいるよ」


 それを聞いて俺は少し悩む。お孫さんがぜひ精神魔法を使用して欲しいとのこと。


「もしも心残りがあるのなら供養したいです。話をできるようにしていただきたいのですが」


「頼めるか?」


「分かった」


 精神魔法を使い、一定のフィールドが包まれる。その光の中で一人の女性が泣いていた。


「これは、おばあさま」


『ああ、ああ話ができるのね。よかったわ、ずっとお礼を言いたかったから』


 お孫さんや息子さんで国の為に働き、従魔の安全と絆を証明してくれたお礼を言い、お孫さんはいいえと答える。


「私にとっても従魔は家族です。当然の事をしたまでですよ」


『それともう一つ、あの子の事を探してるのね』


「おばあさまの従魔ですね」


『あの子には恨まれているでしょうね。小さい頃にどこぞの土地に置き去りにされたのだもの。三日月の白い狼、私の大切な家族』


「えっ」


 それに反応する。もしかして白銀狼のことか? それを聞くとどうして分かったの?と首を傾げられ、詳しい話をする。


 水の妖精が住まう隠れ里、そこに隠された場所に白銀の狼がいる。その顔に三日月の傷を持つと。


『ああ、もしかしたらあの子かもしれない。ネームドになるほど人を恨んでいるなんて……』


「それは違うと思います。あれは自分の地に入りこんだものを追い返す。恨みや怒りは感じませんでした」


『そうなの?ああそれなら一目で良いから会いたい。私の未練、私の小さな家族』


「ですがネームドをテイムすることはほぼ不可能と」


「いえ、不可能じゃないです。だよなナイト」


「!」


 現れたナイトにお孫さんは驚く。


「始祖の吸血鬼によって生まれた影の妖精!?ネームドがいるなんて……それをテイムしているとは」


「だから切っ掛けがあればここに連れてこられるはずです」


『ああありがとう。あの子に会えれば永久の悲しみが癒えるかもしれない………』


 これをと小さなボロボロなスカーフを渡された。


『それはあの子に付けさせていたスカーフです。別れて以来、私が肌身離さず持ち歩いたもの。もしかしたらあの子に会えれば』


「分かりました。必ず連れてきます」


「いいのですか?ネームドと化したモンスターは一筋縄にはいかないはずです」


「ですが、家族なんでしょう?家族は会うべきですよ」


 それに話を終えて、クエスト画面が現れる。永久の別れと言うクエストで、もちろん受ける。


 スカーフを手に入れて、俺はするべきことができた。


「レベルを上げてあの土地を歩き回れるようにするぞみんな」


 従魔達がやる気を見せる中、お孫さんとも別れ、俺達はすぐにレベル上げの準備に入った。


 やることは多い、手を抜けないことばかりだが、これはやらなきゃいけないクエストだ。


 やれることはなんでもやろう。ジークフリード達に協力を頼み込み、俺達は行動を開始するのであった。


 待っていろ白銀狼。家族に会わせてやるぜ。

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