第35話・火山地

 レベリングは王都に行き、火山地帯で行うことにした。いまトップ勢が探索するフィールドで人が多い。出て来る敵は強く、回復アイテムを用意して出向く。


 白銀狼戦に備えて戦うのはシンク、タロウ、輝夜、ナイト、マシロ、クロナだ。


 ヒカリは畑の世話と木工をしてもらい、俺達は『火山地』を探索。


「きゅうぅぅぅ」


 マシロの雷を混ぜたブレスが放たれ、レベルが低いのにかなりのダメージを出す。雷領域はトラップ式で、近づいたモンスターに雷が落ちるし、仲間の攻撃力を上げたりする。


 クロナの影魔法は影が武器になる。地面から伸びて刃になったり、捕獲したり。薔薇姫の影魔法はこれより早いのだろう。


 火属性のモンスターが多く、発掘で火山石や鉄鉱石、火薬石が発掘される。


 レベル7にはいままでの行動ですぐに上がり、火山地でレベル上げをして8になったよ。


「できれば10欲しい」


 開拓する為に港町に出向いてもいいかもしれない。


 輝夜が見習い天使から進化先二つで進化した。熾天使と守護天使。回復を優先するから守護天使になる。これは助かるな。


 フィールドは広く、発掘の為に『俺達鉱山発掘隊』を謳うが、雰囲気的に『ドワーフ鍛冶師の魂ソング』が合いそう。たまにそちらを謳いながら進む。


 そうしていると、溶岩が多く流れているところでドワーフ鍛冶師の魂ソングを歌っていると、誰かが加わる。


(ん?)


 若い子供の声が混じり、その場に止まる。そうして歌っていると岩が割れて中から赤い髪の少年が出て来る。


「わーつい歌っちゃったよ」


「ドワーフさんのお歌上手だね」


「僕らの里に来る?お歌を歌うドワーフさんがいっぱいだよ」


「今度は魂ソングで反応か」


 そろそろきついし、王都まで戻るのも面倒だ。元々反応が無いか歌っていたし、里で回復しよう。


 夏の聖域、熱聖域と言われる夏の神が収める領土が解放される。


 ◇◆◇◆◇


『解放されたけど、まだ秘匿してて欲しいな。同じことをされてシープちゃんが隠れてるところが発見されると困る』


「了解っと」


 スキルチケットは『宝石発見』と言うスキル。なかなかレアなスキルだ。品質の良い宝石は高値で売買されている。


 火山地からもいくつか発掘されるし、火妖精、サラマンダーの里で畑を納屋付きで買って、ミニ転移門を買っておく。これで移動が楽だ。


「ここだと熱に強いものしか実らないのか」


 周りは温泉が流れ、ドワーフがお酒を飲むか、鍛治をして鉄を鍛えている。


 竜火の高炉が売られている。竜火の高炉、マシロのブレスでどうにかなりそうだな。竜火シリーズは高攻撃力だ。白銀狼戦に備えて作っておいた方が良さそうだ。


 バナナ、パイナップル、コーヒー豆が植えられて、ガラス細工などの工芸品が売られている。マッシュマックは品種改良出来たのは、炎の実と言う赤い実でマッシュフレアが育てられる。


「よし、この里を拠点に、レベリングしよう。里の人との交流もできるし、稼げるだろう」


「分かったのじゃちちうえ」


「シンクは狐火が効きづらいから太刀を基本で頑張ってくれ」


「うむ」


 こうして火山地でのレベリングを初め、9になるまで活動する。宝石なども発掘できて、なかなか進展できているな。


 ◇◆◇◆◇


「さてと、マシロ。ブレスの準備は良いか?」


「きゅ」


 マシロのブレスで高炉が竜火の高炉に変わり、竜火のインゴットができた。


 もう一つ、雷領域を使うと、雷鳴のインゴットを作れる稲妻の高炉になるようだ。重ね掛けはできず、竜火から稲妻になった。


 雷鳴シリーズはスピードとパワーを上げて軽く、耐久値はそこそこ。シリーズで発動するスキルは雷攻撃と攻撃力を上げる。


 竜火は竜属性モンスターへの攻撃力を上げ、火攻撃、火耐性、氷耐性が付く。おそらく強いモンスターに強くなるインゴットだろう。


「一通り作って組み合わせを考えよう。氷結シリーズは高炉を買うか。白銀狼に備えないと」


「ちちうえ、太刀はこの太刀を使いたいのじゃ」


「漆黒シリーズは魔法耐性や魔法攻撃強化が入る。俺は別に構わないが」


「ありがとうちちうえ!」


「よし、早速準備をしようか」


 従魔達がおーと返事をして、鍛治をし出す。色々試して装備を整えよう。


 ◇◆◇◆◇


「うーん、参ったな」


 ジークフリードが腕を組み考えながら呟く。副ギルマスの友人が近づき、どうしたと尋ねた。


「アッシュの動きが変だって、攻略サイトの方でやり取りされてる」


「確か彼は火山地のレベリングをしている、でしたっけ?」


 これを知るのは、各ギルドのギルドマスターと副ギルドマスター、後は少人数のプレイヤーのみ。


 正直、情報の独占は好まれることではない。だが、仕方ないと言える事態に発展している。


「他のギルメンの様子はどうだい?」


「とりあえず港町みたいにならないのなら良いって感じですね」


 実は攻略サイト最前線は、港町で好き勝手に動き過ぎた。NPCは無条件でプレイヤーの好感度が低く、一部を除くと印象が悪い。


 新しい町を見つけてもプレイヤー、旅人の印象を悪くするなと言うのがガチ、トップ勢の思いだ。


 そしてアッシュ経由で里の情報が出ると、彼らはすぐに独占だのクレームを付けるだろう。


「まあアッシュの持つ情報を知りたい人は味方するんだけど、その勢いで台無しにするのが彼らだからな」


「それに鍵となる歌唱魔法は、まだ無いんでしたっけ」


「探せばいるだろうけど、ギルド内にはいないよ。ドワーフ関係だから、もう少ししたらかな?」


 いま所属する鍛冶師はドワーフの武器屋などと交流して、それらしい詩があるのは知っている。


 まずは自分達はそれを教えてもらってからだ。後は秘匿してもらおう。


「とりあえずこの情報は幹部勢だけの情報にしよう。彼には火山地のレベル上げをやめてもらって、港町ルートでも開拓してもらおうかな?」


「その心は?」


「クエストで同行してもらえたりすれば、こちらの装備もグレードを上げられる。少なくてもネームドテイムが終わったら、手に入れたりしたインゴットや、試作品を流すみたいだ」


「なら港町の攻略方法やルートを教えて仲良くなって、個人で売買してもらいたいですね」


「もう話したさ、そしたらインゴット売ったりするし、なにかしらの情報は優先的にくれるとのことさ」


 それは助かると彼は思い、しばらくは待つ事にしよう。


 問題があるとしたらもらい過ぎだろう。本人は使わない槍や斧などの武器を作り渡せるから喜ぶが、それではいけない。


 一応、彼が動けるように彼らを抑え込んだり、自分達に注目させているのだが。


「あと少しでシープちゃんに付きまとう奴も抑えられる。それが終われば雪原フィールド探索はできるだろうな」


「それは楽しみですね」


 ギルドの方針を決めて、アドバイスできるところをしておく。白銀狼のテイムは魅力的だが、今回は譲っても良いだろう。


 そう思いながら迷惑プレイヤーの動向に目を光らせて、援護するのであった。

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