第56話・騒動の後

 緊急メンテが入り、メッセージでのやり取りで友達とギルメンと会話する。


 ヒビキは完全に激怒していている。今度こそ根こそぎやらないといけないと言って、ジーク達から止められてる。少し落ち着こう。


ヒビキ『アッシュは落ち着きすぎじゃないかッ!?畑の物を吹き飛ばされたり、世界樹切ろうとしたのにッ!?』


 運営にコールしたし、ちゃんとしてくれるだろうと告げると、そんなわけないだろうとすぐに返ってきた。


ヒビキ『運営が彼奴ら、特にメガネに関して甘い処置すぎるんだよ!害悪プレイヤーを追い出さないと、ゲームが楽しくない!』


ジークフリード『言いたいことは分かるけど、メガネはたぶん垢バンされない』


クリア『なんで!?』


ジークフリード『彼奴が指示している証拠が無いし、現場に居なかったから、たぶんなにもお咎め無し』


 ヒビキがかなり苛立っている。掲示板のコメントもかなり荒れている。しかしそれは確かに不愉快だ。


 指示したのは確かだろうし、責任は取って欲しい。なんで無罪なのだろうか?


 ともかくヒビキがPKに走りそうなくらい、目の敵にしている。レッドネームで無いプレイヤーを攻撃できない。とりあえず落ち着かせないといけないな。


 ◇◆◇◆◇


 ログインできるようになって、俺達は激昂する春の女神達を落ち着かせていた。


「また樹を切ろうとする不届き者がいるッ!」


「もちつけ春の。我も手貸す」


「お主ら、とりあえずアッシュ達に言うのはやめよ」


「ココアください」


 冬の女神がそう言ってココアを渡して、みんな落ち着く。薔薇姫様を始め、技術神と言う小人のような人が説明してくれた。


 ともかく、神からしても彼ら迷惑を振りまく者達は目に余るとのこと。だが自分達は他の無害なプレイヤーと違いが分からず、現場で裁くか牢屋にいる者を見て覚えるしかできない。


「我も激おこぷんぷん、我が国の住人に神聖なる魔法使い、攻撃する」


 魔神様はそう言いながら甘味を食べて落ち着き、俺にこれ上げると、首飾りを大量に渡す。


 精神魔法の代わりになるアイテム。魔国に入るための装備だった。


「回収したもん、我いらんねん。安心できるもんに渡すしかなか」


「はあ」


「大昔に人を招く際、大量生産したの悔やむ」


 マッシュマックを食べ続ける春の女神。これでも冬の女神が落ち着かせているが、秋がいないから手を抜くしかないらしい。秋がいない状態で眠らせると調整が効かず、長い時間眠らせてしまうとのこと。


「ふむ、私達のところでも秋の女神を探しているが、この国にはいないな」


「そうですか」


「とりあえずしばらくはここに滞在します!また世界樹が切られることは無いようにしなければ。次切られればもう再生はできません」


「えっ、そうなんですか?」


「はい。創造神によりいまここにある世界樹は世界唯一の木です。それが切られれば消滅してしまいます」


 他の木もどうようですよと言われ、戦慄する。


 この情報をどうするか。掲示板で言えば下手をすれば最前線にも知られるし。知ればだからどうなるとか言って来るだろう。


 フレンドの廃人プレイヤー達に連絡して、そこからプレイヤーに広めよう。


「それじゃ、しばらく春、冬、技術の神様が滞在するんですね」


「うむ。他は秋の聖域の守護や、魔国の守護があるからな。魔神の方には顔を出して、甘いものを食べさせてくれ」


 そう言われて、しばらくは聖域とホームと魔国を行き来するかと考える。技術の神様はしばらく滞在することで、関係者、神様のクエストをしているプレイヤーがおどおどしながら訪ねてくるようになる。いちいち睨まないでください春の女神。


「大変だなそっちも」


「ロックオンさんとこもですね」


 ソロ鍛冶師であるロックオンさんはユニークスキルを習得したプレイヤーで、弟弟子くらいの立場だ。


「本家のこと考えれば俺が二番目だからな」


 それでも俺よりスキルレベルは高く、オリハルコンも品質の良いのが作れる。


 いま、オリハルコンを作れる環境は俺が、質などはロックオンさんが上であり、協力してオリハルコンを作ることにしていた。


「俺は確実に称号やスキルが手に入るから良いけど、君にメリットはあるのかい?」


「いまはともかく、早い段階で装備を整えてあげたいんです。なにがあってもいいように」


 それに納得してもらい、協力してオリハルコンを作る二人のトップ鍛冶師。


 こうして日々を過ごす中、神様へのクエストをするプレイヤーはそれなりにいる。


 滞在中、生産職である生産地は、黄金の指などスキルを覚えるクエストを受けられた。黄金の指は生産系の成功率が上がる、技術神のクエストだ。長く滞在する人用に、生産室を開ける話をするがジークフリードが止めた。


「最前線の中に絶対に表に出ていないプレイヤーがいる。そんなのがいる中、ホームの設定をいじって、誰でも入れるようにするのはまずい」


「そうか」


「悪いけど、他のプレイヤーは町と行き来してクエストしてもらおう。その辺の説明はこちらでしておくから、気にしないでくれ」


 プレイヤーの人達は元々そうするつもりらしく気にしないが、見知らぬプレイヤーに対してもギスギスし出してきた。


 そんな日々の中でついに、イベントが始まろうとしている。


 どうなるか、少し心配だな………

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