第61話・夏の神

 大波に乗って現れた金髪の褐色肌をした男性であり、サングラスを光らせ筋肉ムキムキであった。


 すぐに冬の女神が大波ごと凍らせた。


「えっ!?」


 波が凍り付いて凍った海に落ちる。あうちっ!と悲鳴を上げたところ、スクール水着の魔神がその剣で海を割る。


「あんぎゃーっ!」


 悲鳴を上げて粉々になった氷の雨に打たれながら波辺に来ると、春の女神が植物を生やして確保する。


「なになにホワイ?なにがどうなってるんっすか?」


「とりあえずなにしてる貴様」


 羽織る物を着込み、薔薇姫が優雅に現れてうっひょいと喜ぶ夏の神。


「薔薇姫さんじゃないっすか?!その水着セクシーですねえ!いやぴったり! そのお胸もまた綺麗ですぜ!」


「姫様、目玉を取り出してもよろしいでしょうか?」


「あとでなメイ。すぐに取り出すと最後の光景が残るらしいからのう」


 ひいぃぃと悲鳴を上げるが視線が胸元に向けられている。


 春の女神は相変わらずバカですねえと呆れて、鍛冶伸や技術神、賢神は何も言わず黙り込む。


「おバカ、いままでなにしてたの? この忙しいときに」


「冬の………相変わらず絶壁だな。悲しくてぐすん」


 顔以外氷漬けにされてすいませんと呟く夏の神。


「次不愉快なこと言えば魔神に叩き斬ってもらう」


「おk」


 素振りする魔神に対して、揺れていると呟き、氷の棒がサングラスを片眼破壊して貫いた。


「あ、あの、そのままじゃ殺すんじゃないですか?」


「モーマンタイ。神族死なない、死ぬくらい痛いだけやでアッシュ」


 魔神はそう言って甘い物欲しいと言うので、菓子パンを与えておこう。


「バカなこと次行ったら、旅人達に神族は死なないというの見せますから、大人しく言う事を聞きなさい」


「怖いって!魔神だとマジで心臓取るやん!分かったよ!」


 ちなみにその頃になるとこの国の司祭、一番偉い人が大慌てでやってきたが、対応している人が神だから、どうしたらいいかオロオロしている。


「この国に来たのはいつくらいですか?」


「いつだっけ?500年くらい前くらい?」


「鍛冶伸」


「お前が本格的に夏の聖域からいなくなったのは100年前だが?」


「ちょくちょく遊びに来てたんだよねえ」


 それを鍛冶神が司祭達に尋ねたら、はいと頷いた。500年前からちょくちょく来て祭事に口を出してきた。


 最初は気にもされていなかったが、神としての証拠を出され、なるべく聞くようになったとのこと。


「集ってる場合ですかあなた。夏の聖域ならいざ知らず、こういう場所はその土地に住む人の物ですよ?」


「いいじゃん俺ん所だし」


「良くない、少ない場所で経営する神をバカにするな」


「我んとこも最近人着てハッピースマイル。お菓子いっぱいうれちい」


 にこにこしながら菓子パン片手にアッシュの手を握ってぶんぶん振る魔神。夏の神は不思議そうに見ていた。


「なんか人と仲良いけど、なんかあったの?」


「お前、世界樹復活や最近現れた旅人や聖域に住まう魔物の活性化を知らないと言うのか?」


「はい!!」


 少々お待ちください。


 ◇◆◇◆◇


「ずびばぜん、じゅるじでじゅざざい」


 死なないことの実践させられた夏の神はそう言って涙と鼻水を流し、女神達はどうするか悩むが男神がそれくらいにしてやれと止めた。


 最近の神事情の説明を聞き、旅人クソだねと言った後、世界樹を復活させたのは旅人と知り旅人サイコーと言ったり、コロコロ意見を変える。


「前に言いましたねアッシュ、こいつはバカだと」


「はあ」


「とりあえずいまみんなして余裕ができて、俺ん所の聖域に遊びに来たOK?」


「海神も仕事が終わり次第くるらしいが、少し遅いのう」


「爺さんのことだからその辺で迷子なんじゃねーのん?基本海しか行き来してねえじゃん」


「まあな」


 とりあえず報告は済ませたので釈放される夏の神。魔神によって凍り付く地面から切り取られ、冷凍室などに閉じ込めておくように言われた。


「ねえ待って!ここは氷から解放されるところでしょ!移動できるようになったけど俺まだ氷の中なんだけども!」


「お前は仕事しろ」


「えーーーー」


 国の人に氷漬けのまま運ばれていく。やっと一息つけるという顔で海に出かける上位存在。


 アッシュは少し疲れたため、従魔達と共に先に移動するらしい。とはいえ浜辺近くだけ。


 食べ物を欲しそうに魔神が抱き着いてきたので、頬を赤らめてデザートを渡しておくことにした。こうしてアッシュは海岸近くの移動を始めた。


 ◇◆◇◆◇


 成長していても中身幼稚園児みたいだな魔神。少し距離がバグっている魔神に対してため息をつき、海岸近くを遊び歩く。


 マフィンが空を飛び、辺りを見渡す。タロウも最近飛べるというより、浮遊できるため、手伝いながら移動すると………


「あれ、モードレッド様」


「おおっ、アッシュか? なんだ? 俺の水着でも見に来たか?」


 そう言ってかなりお美しい水着姿で、アッシュが作った剣を腰に下げたモードレッドと共に、ガレスともう一人少年がいる。


「ガヘリス、王族の中で一番若く、いまは王族席ではなく、騎士席で働いている」


「どうもです」


「どうも」


「ウチは実力主義だからな。王族として男子が名乗るには、一定期間騎士団で働かないといけないんだ。ガレスも王族というより、いまは女性騎士として働いている。最終的将来は俺ん所に流れるか進路は考え中だ」


「そうですか。皆様はどうしてここに?」


「騎士としてこの辺りの調査など、聖国の皆さんとしていたところ、この辺りに海竜の巣がある可能性があり、速めに討伐願いが出ていまして」


「いま騎士団を一部借りて討伐中だ」


 その時、ウインドウが出てきて『海竜の討伐隊』と言うクエストが出てきた。イベントだろう。YESを選ぶと、協力する話になり、メンバー選択される。


 浮遊や空を飛べるマフィン、タロウ、輝夜、マシロを入れておくと次はナイト辺りいればいいか。五名のモンスターを連れて行くことにした。


 残りは立ち去ると思ったが、ガレスの周りにいる。二つのパーティを組む形で、モードレッドとガへリスのパーティと組み、二パーティで一つのパーティを組んで進むことになった。


 ガレスはどうやら預かり所のような扱いらしい。こうしてクエストを進めることにする。

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