第60話・浜辺の騒動

 翌日、このイベントの終了期間は大体一週間である。後五日ほどイベント満載だろうが、俺達生産地は武器製造に力を入れた。


 トッププレイヤーから三大鉱石を買い取り、廃人勢に売るための性能を作り出さなければいけない。


 廃人勢もその辺りで、身内捜査をお互いにするらしい。この辺りは仕方ないと割り切っている。


 こうして一日武具作りに精を出して、その翌日で自由に行動するようになった。


「こんにちは」


「いらっしゃい」


 従魔達だが全員いる。戦闘ができるフィールドに行かなければ全員連れて歩けるらしい。プレイヤーの中にはレイド戦が街中に起きる可能性があると読む者もいて、全員を連れて歩ける理由が攻略スレで盛り上がっていた。


 アキさんは子供と従魔達の様子をスケッチしながら、俺は家の手伝いをする。


「そういえば、アッシュさんは楽器を知っていますか?」


「はい、生産職なので、作り方も知ってますよ」


 神父様はそれにえっと驚き、しばらく考えてから真剣な顔で聞いてくる。


「それは音楽を奏でる道具で良いでしょうか?」


「はい、どうしましたか?」


 神よ巡り合わせに感謝を、と祈りの言葉を捧げてから、時間ができた時にこの店に行って、楽器を売ってくれないかと言う話をする。


「この国は昔、音楽の国と呼ばれていた時期がありました。ですが大きな戦争、世界樹戦争の際、金属は武器に、木材は壁などの資材に使われ、技術は途絶えてしまいました」


 悲しそうに話す神父様。それでも歌は残るもの。老人など口伝でそれなりに分かってはいるが、楽譜など知っているだけで、音、音楽を知らない者がほとんどで、完全に途絶えそうになっている。


「なんとかそれを維持してましたが、夏の神が来てからそれを放置する話にもなっていまして。楽器があれば昔からの、昔の人が残そうとしたものを残せられるかもしれません」


「分かりました。楽器を持っていけば良いんですね」


「はい、できれば使い方も教えていただければ」


 そんな会話をした後、楽器作りのために素材集めに向かう。


 ウチにはヒカリがいるから、太鼓、バイオリンなど、フルートも作れる。ヒカリが張り切っていて、素材集めを急いだ後、海の方を見てみる。


 ◇◆◇◆◇


 海の方に来ると、シープ達と合流するアッシュ。生産地のメンバーで海を遊ぼうとことになり、水着に重ね着できる機能があるので、水着を着込む。


 そして不思議な団体と出会った。


「おおっ、アッシュ達か」


「こんにちは」


「こんにちは薔薇姫さん、皆さんも海ですか?」


「シープ、こんにちは」


「冬の女神様こんにちは」


 薔薇姫は綺麗な大人の水着を着込み、メイド達も似合う水着を着込み待機している。


 春の女神は満喫していて、冬の女神は可愛らしいワンピースにフードのようなものを付けている。


 ソウルだけスクール水着でそうると書かれたものを着込み、カニを捕まえていた。


(冬の女神以外大きいな)


 その瞬間、ハイライトが消えた冬の女神が近づいてきて穴が開くほど見てくる。そっと目をそらしているとシープが回収して遊ぶ。


 シンク達も各々が似合う水着を女性陣が選んでくれた。大好き丸さんの熊達も海パンを着込み、クマクマ言って遊んだり、バーベキュー作り出したりしている。


「アッシュ、サンオイルを塗ってくれ、肌が少し灰になってしまう」


「灰になるのは問題ではないですか? その程度で大丈夫なんですか!?」


 吸血鬼が灰になるのは大問題では? だがそんなことは気にせず、のんきに微笑む薔薇姫。


「うむ、大丈夫じゃ」


「シープあの人鼻の下伸ばしてる」


「冬の、男はそういうものだからのう」


「鍛冶神セクハラ?」


「ソウル、どこで覚えたその言葉」


 なんか混沌とし出したな。そう思って過ごしていると、向こうの波辺も凄いことになっている。


 神様系が揃っているため、この団体はかなり目立っている。プレイヤーは遠巻きに見ていたが、関わる人はいなかった。


 向こうもそうであり、そっちはこちらに気づいて挨拶する。


「やあアッシュ。そっちも大変だな………」


「お前もかジーク」


「ジークも男だからな」


 ヒビキがそうイタズラっぽく笑い、ジークの腕を組むエルフの姫君は満面の笑みでこんにちはと挨拶する。


 ルーンだけが苦笑して距離を取り、ヒビキともども関わらないようにしていた。


 賢神様も苦笑していて、神々同士で夏の神がいたか話し合っていた。どうやら見つかっていないらしいが、時間の問題らしい。


 魔神が甘い物食べたいとアッシュに抱き着き、アッシュははいはいと用意する。子供達もアッシュに水着姿でわちゃわちゃし出して、シープは一言。


「アッシュがロリコンさんみたいに見える」


「ぐっ」


「? パパどうしたの?」


「おとーさま?」


「ちちうえどうしたの?」


「いや、なんでもないよ。覚えてろよ運営………」


 可愛らしい女の子モンスターに父親扱いされていることが、ダメなことな気がしてきたが、いまさら変えられない。


 そう思いながら過ごしていると、大波と共にそれは現れた。


「ビックウェーブいやっふーーーーー」


 そう言って現れた瞬間、武器や魔法を構えだす神々。夏の神はもう逃げられない。

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