第36話・秘術継承

 妖気は異常状態に強くなり、神聖は回復量を増やし、悪魔、アンデッド特攻。


 漆黒は魔法攻撃、耐性強化 凍結は水、氷攻撃、魔法攻撃力強化。


 竜火は竜属性モンスターへの攻撃力強化、火攻撃、火耐性、水と氷耐性が付く。


 雷鳴は素早さと攻撃力強化、耐久値強化。現在分かる、シリーズスキルはこれだけある。


 インゴットの品質は★7や★8まで用意できて、★6などで二つの金属を合わせて試し作りをするが、うまくいかない。


 二つのインゴットを使う装備品作り。出来上がるのは品質★2、これでは単体の方が良い。


 なんとか苦戦するが、歌いながらがキツイな。難航していた。


 だからだろう。火山地の探索が攻略班などに勘付かれ始めていたので、港町に範囲を広げる。話で聞いた通り、旅人はNPCに避けられていて、畑を買えたが居心地が悪い。


 塩とマッシュマックが組み合わさり、ソルトマッシュができた。


 色々難航し出したら、ブレッドのクロワッサンを食べる。うん、俺よりうまいじゃないか。


「ありがとうございます」


 最近は水晶スライムを連れて、品質の低い奴を使い、パンの研究をしているブレッド。クロワッサンのサンドイッチや、品質の高いクロワッサンを作ろうと歌いながら作る。歌唱魔法を覚えたらしいから、料理も歌を謳った方が良いな。


 シープちゃんも裁縫を謳いながらしてたら覚えたとのこと。畑も少し借りて働き、稼働をしている。


「こういうときは初心に帰るのがいい」


「初心?」


「初心」


 シープちゃんにそう言われて、失敗作とパンやミルクを持って、ドワーフ先生の元に出向くことにした。


 ◇◆◇◆◇


 ドワーフの先生はしっかりと話を聞いて、できた物を見て考え込む。


「お前さんがここまでやれるとは、まさかこんな日が来るなんて」


「?」


「俺は昔は鍛冶師として鍜治場を仕切る頭だった。だけど弟子入りを終えた奴が俺の名前を使って、品質の低い物を売っていて、俺は鍛冶をするのをやめたんだ」


「そんなことが」


「もう二度と弟子は取らねえと思っていたが、お前さんは彼奴のようなバカ野郎じゃねえ。本当の鍛冶師だ。だからこそ、お前に秘匿されている技術を教えよう」


「本当ですか!?」


「ただテイムモンスターに持たせることはできない。それでもいいなら教えよう」


 その技術の名前は【魔力刻印】。特殊なインゴット五つ消費することで、そのインゴットが持つ力を別のインゴットに刻むことができる能力。


 つまりシリーズ武器の条件だけクリアさせることができるわけか。性能的に弱い妖気を【魔力刻印】して竜火などで作れる。


「ただし【魔力刻印】したアイテムは全体で装備できて二つしか装備できない」


「なるほど」


「そしてもう一つ、教えるのは【魔力刻印】したインゴットだけじゃなく、特殊インゴット同士で作る【魔器作成】だ。基本となる性能のインゴット、この場合、性能の良い金属を選ぶ。これは特殊金属で無くても良い、特殊金属だけが全てじゃないからな。それをまず選ぶ」


 性能が良い、いまは鉄鉱石、または鉄鉱石から発生する特殊インゴットが強いが、それ以上の性能の鉱石があるようだな。そう言った性能が良い鉱石をベースに、二つの金属を合わせる技術。それが【魔器作成】らしい。


「さすがに【魔器作成】した金属をさらに【魔器作成】はできない。これも一つしか装備することができないが、非常に強力だ。特殊金属だけで作れば三つの力を一つで賄えるからな」


「なるほど」


 これは凄い情報だ。そんなことを語るドワーフの先生は、すぐに暗い顔をする。


「この技術をバカ弟子だった男に教えかけて、危なく戦争が起こるところだった。この技術は人を守る為にある。戦争に使うのは仕方ないが、これで起こしちゃいけない技術だ。できればお前以外に教えたくない」


「分かりました。他の人には教えないことにします」


「いや、職人が客に何も説明しないのはいけないことだ。だから俺は今日この日の為に、特殊スキル、ユニークスキルとしてこの技術をお前に伝える」


「ユニークスキル?」


「俺が認めた者で無い限り、この二つのスキルを使うことができないようにしているんだ」


 つ、つまり普通のスキルを覚えて居るだけじゃ手に入らないスキルってことか。ランダムスキルでも覚えられなそうな内容だ。


「お前さんは農家として成功している。だが鍛冶師としてやっていく覚悟はあるか?」


 そう言われた。ここは正直に言おう。


「いまの俺は農家でも鍛冶師でも無い。従魔使いとして、とあるフィールドの奥にいるユニークモンスターに、昔の家族の品物を届けるために強くなりたいです」


「それは、まさか白銀狼か?」


「知っているんですか?」


「………まさかここまでできているなんて、創造神の加護は伊達じゃないってことか。その狼と主人が別れる切っ掛けを作ったのが、俺の弟子だった男だ。武器を考え無しに売った挙句、戦争を引き起こそうとして、さらに自分に靡かなかったと暴力を振るい、従魔の絆を引き裂いた。すでに処刑されているが、こいつが全ての元凶よ」


 なんて話を聞いてしまった。俺は絶句していると、ドワーフ先生は静かに言う。


「どうやらお前にはどう足掻いても、このユニークスキルを最初に継承する必要があるようだ」


「はい」


「ならば教えよう、我が技術の粋を集めたユニークスキル。【魔力刻印】と【魔器作成】を授ける」


 光りが辺りに集まり、俺の中に吸いこまれる。


 こうして俺は二つのユニークスキルを習得して、ドワーフ先生は静かに頷く。


「後は頼んだぞ旅人よ。我が無念と従魔の絆、取り戻すんだ」


「はい!」


 忙しくなるぞ。


 こうして俺は鍜治場に戻り、製作を始めるのだった。

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