第42話・神に愛された男

 新しくゲームからお知らせが来た。王都で大きなオークションが開催されるらしい。次のアップデートらしく、色々書かれている。


 レッドネーム、悪さをしたプレイヤーは参加できませんと大きく書かれているし、お金が無いと利用できないとされている。


 聖域の事もあり、冬は俺よりも詳しそうなシープちゃんに頼んでみてもらい、俺は夏の聖域に顔を出す。


 ふむ、別段変わりないし、問題らしいこともない。


 そう思っていると、一人のドワーフっぽい人が話しかけて来た。


「すまない、君はアッシュ君だね?」


「はい、あなたは」


「儂は鍛冶神『ヘファイストス』。いま夏の聖域を任されている神じゃ」


 それにおおっと驚く。夏の聖域は鍛冶の聖域でもあり、ダンジョンの奥では特殊な貴金属が手に入るとのこと。


「だからしばらくは良いかと、夏の神に変わって面倒を見て居るが、春の女神から秋の女神がいないって話が広まってのう。夏の神が遊びに出ていることを春の女神に伝えてくれないか?」


「遊びにですか?」


「100年ぐらいか? 人からすれば長い年月出て行ったままじゃ。彼奴なにしてるんだ?」


 首を傾げながら、春の女神の祭壇をもらっているのなら、そこから語り掛ければいいだろうと言われ、後でそうすることにする。


「お主は儂も目を掛けておる。君の師匠が信者でね、自分の技術をユニークスキルに昇華した手助けをしたんだ。君も習得してるから、何か技術を教えて上げよう」


「本当ですか?」


「と言っても、まずは【上級鍛冶】のスキルを手に入れてからだのう。それにミスリル、魔銀石も必要じゃ」


 この世界にはミスリルとして魔銀石と、アロンダイトと言う鋼鉱石。緋石と呼ばれるヒヒイロカネがあるらしい。


「ミスリルは魔力が通りやすく、三大鉱石の中では人の手に渡りやすい鉱石だな。アロンダイトは聖剣、魔剣と呼ばれる元として有名だ。こいつを鍛えられるのは伝説の鍛冶師と言われても良いだろう。ヒヒイロカネは緋色の鉱石で、名刀、妖刀の元だな。こいつも伝説の鍛冶師の手に渡り、伝説を作っている」


「なるほど」


「儂が教えるのは加工方法とミスリルに魔力を付けて【魔法武器作成】と言うスキルじゃ。魔剣、聖剣とは違うが業物は歴史に名を刻む。お主なら教えても良いだろう」


「やった。なら頑張ってまずは上級鍛冶を手に入れます」


「うむ。それまではしばしの別れ、スキルを習得した時、出向いてやろう」


 そう話を付けて、別れることになった。


 ◇◆◇◆◇


「すいません、買い物しに来ました」


「ああ、ありがとうございます」


 秋の里は復興中。なんとか目玉になる米と疾風の高炉と薪が売りに出されていて、少し値段が高いがいまの俺には問題なく出せる。


 薪についてだが、灰が利用されたり、魚を妖木で焼いたのが妖怪を呼ぶアイテムになったりすると話になる。疾風関係の薪も欲しいと言われている。


 風の実と言う木の実も売られていて、マッシュマックと組み合わせてマッシュゲイルが生まれた。


「結構出してますが、大丈夫ですか?」


「小麦と塩の買い手が俺のを買っているので、実はだいぶあるんですよ」


「なるほど」


「他に俺ができることありますか?」


「あー正直に言えば、ユニークスキルの武器が欲しいですね。攻略が進めば復興も楽なので」


 無理ですよねと言っているが、少し考える。


「廃人連合でここの活動をしているリーダーさんは何人います?」


「えっ!?えっと、配信者さんが二人、ゲーマーが三人ですね。その中でギルドマスターは二人です」


「ああ、廃人連合さんはギルドやソロの集まりでしたっけ」


「ですね。ログイン時間ギリギリのプレイヤーの集まりですね」


「それじゃ、五名で良いでしょうか?」


「本当にいいんですか!?言ってみるもんだな、メンバーいま呼んできます」


 ◇◆◇◆◇


 配信者は二人、生配信は無く、編集している人が一人、この人はVチューバーだ。もう一人は企業の人で、詳しい話をしてから作るのだが、その際も動画配信させてほしいと両名から言われ、許可してあげた。


「それじゃ、まずは俺フィシャーマン。釣り人関係のプレイヤーで、多くの時間釣りに時間割いてる奴です。一応復興リーダーしてます」


「タンク職、ギルド『船団』ギルドマスター『センチョ』です」


「自分はソロプレイヤー纏めているだけの廃人連合です。押し付けられたようなもんですが、ユニークくれるってマジですか?」


「ええ、ここの攻略後も他の所で使っても構いません。ただ自分は未熟ですので、シリーズ装備を整えてシリーズスキルを利用するだけですね」


「それでも助かりますよ。あっ、自分動画配信『おはぎの非日常』の『おはぎ』ですっ」


「自分はあ、レインボーカンパ、ニッ♪ のVチューバー『神山紅葉』です♪ 配信許可ありがとうございます♪」


 アイドル風に動画意識して挨拶する女性プレイヤー。おはぎさんは普通の男性プレイヤーぽいが、攻略では有名プレイヤーだな。白兎さんのページとかで話を聞く。


「神山は魔法剣士なので、鎧か片手剣が欲しいですね」


「自分は軽装か短剣ですね。ソロ活動で、異常状態にするのが得意なんですよ」


「俺はタンクだからな。大盾か全身鎧が良いな。まずは能力とか教えてくれないか」


「良いですよ。だけどこれだけは約束してください」


 まず売買、トレードの不許可。能力は現在進行形で成長しているので性能はトップクラスでは無い。


 悪行、カルマ値が上がる事はしないと言う約束に全員が喜んで約束してくれた。口約束だが、やらないよりましだ。


 軽装など、金属と革素材を利用するタイプもあり、革素材を出してくれれば使用する話をしておく。


「インゴットの品質はトップ勢と変わらないな」


「革素材はさすがに中堅ですね。武器はいまの使いたいですし、革素材出しますね」


「お値段はどうします」


「お値段はインゴット代に+50万だけですね」


「安すぎません?」


「性能は中堅クラスですからね」


「それでも破格だな」


 それから組み合わせだ。【魔力刻印】で3つのシリーズスキルの条件を満たし、【魔器作成】で3つのインゴットを一つにする。


「【魔器作成】と【魔力刻印】は同じじゃないですか?」


「【魔器作成】は本体と成る鉱石は、特殊インゴットじゃなくてもいいんだ。性能の良い金属に特殊インゴットのスキルを混ぜたりするスキル。いまのところそれ以外に使用方法は無いな」


「おっ、実はこれ、ダンジョンの奥で手に入れたんだ。【魔銀石ミスリル】です」


 センチョが出した鉱石はまさしくミスリルであり、それなら上級鍛冶スキルを手に入れれば、さらに強い装備が作れる事を伝えた。彼はならとっておきますと言って、いま手に入れるのはやめておく。


 こうしてトップ勢にも流れ出す装備。センチョも後々の楽しみができて、より良いミスリルを手に入れようと、ダンジョンの奥探索に乗る気になったのだった。

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