永久の別れ編

第30話・新しい世界で

 アップデートが終わり、第二陣が入る日。俺はログインして畑の世話などをしてから様子を見に行く。


 人は多く居て、要塞都市の門の前に、転移門らしい建物ができている。詳しい説明を聞き、行き先が『要塞都市』と『薔薇姫の白亜城』と『ノドカ村』と『水妖精の隠れ里』を確認しておく。


「薔薇姫さんの城が春の聖域、いや、関係があるだけか。もしかしたらあの人の事だから、城自体が妖精の隠れ里なのかもしれないな」


 そう考えると、ショップが無いのはノドカ村が担当しているのかな? そう思いながら転移門を後にする。


 NPCの店を改めて見ると小麦が売られている。早速買って品種改良に。


 ホームオブジェクトにミニ転移門がある。ホームとホームを繋げるらしい。あれ?これがあればシープちゃん楽じゃねえ? ジークフリード達に相談だ。


 早速行動したり、見て回る人がいる中で、ギルド勧誘などが行われている。俺は『シープちゃんを匿うため』にギルドを作ったので、しなくてもいい。


 商人ギルドの方に行き、妖精や露店について詳しく聞くことにした。


 ………

 ……

 …


 従魔を連れて居るから、人から見られる見られる。水晶スライムのタロウ、狐の妖怪シンク、天使の輝夜、精霊樹のヒカリ、影の騎士ナイト。よく考えれば目立つな。


 人が多くいたが、商人ギルドに二つの話を聞いた。妖精は妖精の里から仕事をしに降りて来た人を雇えるらしい。雇うには妖精の部屋が必要だが、俺は五つも作ったから問題ない。


 雇うには直接会って交渉してくださいとのこと。これは薔薇姫のところとかに行けばいいのか?


 次に露店は雇った人や妖精を使って品物を好きに売れるらしい。少しお高く設定したり、安く設定して売買できる。ギルド名か個人名が出て、交流目的っぽいな。個人名かどうか確かめて、個人で売り買いできるよう設定する準備しよう。


 確認作業が終わり、ジークフリード達に連絡した。


『その話はもうこっちも仕入れてるよ。いま二つ分、ミニ転移門を買える資金を集めてるんだ。悪いけどもらってくれないかな?』


 早速二つ買える資金を集めているらしい。お金出してくれるようだ。


「いいのかな? まあシープちゃんのことを心配してるってことだろう」


 いま手持ちが少ないからありがたい。準備が終わる前に町を見て回ることにした。


 ◇◆◇◆◇


「ここは相変わらずだな」


 要塞都市の図書室、一般人も使用可能であり、情報源の一つである。なんでもおバカなプレイヤーが本を持って行こうとして牢屋に入れられたとか。丁度俺がここで情報を手に入れたと話して、サイトに載った時くらい。


「ちちうえ、絵本呼んでいいかー?」


「いいよ。みんな静かにお行儀よくするんだよー」


 従魔達が好きに動き、絵本など読み始める。俺は大人しく受付に挨拶して中に入り本を探す。なんかないかな?


 レシピ本はだいたい見たし、歴史書とかかな? そう思いのんびり見て居ると………


「!」


「あっ、タロウ」


 その時、タロウは日向にいる老婆のもとに。眠っていたのか、起こされたおばあさんはおやおやと言って、タロウを撫で始めた。


「こらタロウ、すいません」


「いえいえ。あなた従魔使い? お若いわねえ」


 タロウを微笑みながら撫でて、俺は頭を下げる。


「俺はアッシュ。農業をしているテイマーです。ウチの子が申し訳ありません」


「いえいえ良いのよ、この子のお名前は?」


「タロウです」


「可愛いわねえ。近所の小さな狼ちゃんを思い出すわ。見た目似てないのに、変な話ねえ」


「♪」


「狼ですか?」


 苦笑するおばあさんは、昔を悲しむように語り出す。イベントかなにかかな?


「ええ。ただ昔は従魔のことを快く思われ無かったから、無理矢理どこかに捨てられちゃって。暴力を振るう人からご主人を守ったんだけど、それが切っ掛けで。それはもう悲しんだわ」


 まだ小さいのにあの子が死んでしまう。あの子は私を守ろうとしただけなのに。


 私の所為で辛い思いをさせてと主は泣き続けたそうだ。設定だろうが悲しい話だ。


「母狼はいなかったから、あの人がお母さんみたいだったわ。あの人にも子供がいて、末っ子のようにみんなに愛されていたのよ」


 当時を思い出し、ふうとため息をつく。


「結局、何度も周りに止められながら、家族全員で探しに出向いたのよ。それの所為か、早くに亡くなったの。お孫さんやお子さんが従魔使いについて運動してたのに」


「運動?」


「従魔は家族だって、周りの説得よ。私も撫でさせてもらったから、一緒に行動したんだからね」


「そうですか……」


「もしよかったら、この子達を連れて、会いに行ってあげて欲しいの。教会の裏手の墓地で眠っているわ。きっと子供狼を思って、いまも泣いてると思うのよ」


「分かりました。今度行ってみます」


「♪」


「ありがとうねえ」


 震えるタロウに優しく微笑む。


 こんなことがあり、今度教会に行くかと決めて時間を過ごす。

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