第49話・新しい場所の開拓
混乱が収まったところで俺は転移門を通る、高炉はボロボロの高炉になり、使用不可になったがまあしょうがないよな。
他の所もボロボロだがプレイヤー以外、被害は無いらしい。
「それで影魔法で抑えられているメイさんはなに?」
「ふへえええ、薔薇姫様を傷つけたことでまだキレてて、しばらく放置らしいです」
吸血鬼のメイドさんがそう言って、薔薇姫さんはドレスを変えて、話し合いが終わりやれやれと首を振る。
「薔薇姫さん」
「おお、アッシュか。ふう、すまないな。八割直っていたのが三割吹き飛んだ。個人資産の物も含まれているから、賠償金が凄まじいな」
「俺の方は畑の物と高炉だけですから、買い直したりすれば問題ないです」
「うむ。本来ならそう言われても支払うものだが、正直厳しい。高炉も値段が少し上がっているが買い直してもらえるか?」
「はい。それより賢神様は?」
「怒りで我を失っていたが、二度にわたる旅人の攻撃を受けて、我に返った。元々冷静な奴だからな。いまその者に王国を助けて欲しいと頼んでいるところ」
「そうですか」
その後にジークフリードに出会うと、賢神直々に旅人の暴挙を止めて欲しいと頼まれて、このままエルフの国に出向くつもりらしい。迷いの森で川があるエリアから、川を下れば行けるとのこと。
「天秤の剣を初め、他のギルド全兵力を持って出向いて、最前線を抑え込むつもりだよ。彼らお姫様の能力知りたさに攻撃しようとしたり、攫おうとしたらしい」
「なにしてるんだよ」
「ああ、GМコール対象では無いけど、マナー以前の問題だ」
こうしてジークフリード達はすぐに迷いの森の集まるそうだ。俺は台無しになった畑や高炉を片付けて、大金を持って買い物をする。
「良いんですの?いま物が少なくてお値段上がってるの」
「いいよ、これで早く復興したり、美味しいご飯食べてね」
妖精達にそう言って喜ばれ、ご飯もたくさん卸してあげた。
「助かりますアッシュさん。初期の頃に戻ったように、食事や物が足りなくて」
「いいよ、いまの俺はこれしかできないから。センチョさんは活躍してたね」
「いやー貴重アイテム使用してやっとだよ。しかも余波、メイン攻撃後に発生するダメージって基本少ないのに」
そんな会話をしながら、すぐにホームを整え、他に畑を持つプレイヤーの為に種を用意したりする。
それくらいしかできず、俺はホームの畑に戻った。
◇◆◇◆◇
ヒビキはカンカンに怒っていた。これは必ず面倒なことになるからと、協力するギルドに組み込まれ無かった。
「まあオレんとこ中学生とか多いから、下手すると小学生もいるし、プレイヤーと敵対は手出されないうちはしないほうがいいのは分かるんだけど」
「納得できないもんね」
「だよな」
シープが話を聞く中、中学生扱いに不満があるらしい。
「このゲームはプレイヤーの潰し合いは無しだよ」
「そうなるようにしてるのは彼奴らだ」
「それは分かるけど」
サイトの方は確認してないが、コメントが荒れているらしい。今回の件で被害を受けたプレイヤーが最前線のサイトを荒らしているようだ。
とりあえず落ち着かせるため、こちらもこちらで新フィールド探すか話をする。
「いいのか?」
「少し待って、残る子決めないといけないから」
「おう」
ヒカリは硝子細工に忙しく、クロナはお昼寝している。タロウ、シンク、輝夜、ナイト、マシロ、セツナを連れて、火山地探索に出向くのであった。
◇◆◇◆◇
火山地は隅から隅まで探索はされているだろう。俺達は溶岩が渡れないか試して見ることになる。
「頼むぞセツナ」
「わん」
溶岩地帯でセツナの氷魔法など使い、道が開かないか、岩壁など破壊できないか確認しながら進んでいた。
「宝石手に入れやすいな。ルビー手に入った」
「私も」
俺の『宝石発見』のおかげか、鉱石と共に宝石も見つけるため、徒労と言うことにはならないだろう。
そうして探していると、ドワーフの一団が現れた。
「なんだ?」
「すまない、その武器や防具は誰が作った」
「えっ?」
それはヒビキの武器や俺の武器のことを言っている。未熟だから恥ずかしいな。
「俺です。まだ未熟ですからまだまだですが」
「なんと、お前さんがアッシュか」
ひそひそと話し合いが行われ、まあいいだろうと告げて彼らの中で一番強そうな装備をしているドワーフが前に出る。
「吾輩の名前は『ドンホーテ』、若き鍛冶師よ。そなたは鍛冶を究める気はあるか?」
「それは、難しいですね」
自分は他にも従魔使い、農家と言う側面や、それらを売る商人と言う立場がある。武器はなるべく売らず、身内などで済ませている。
「それはなぜだ?」
「自分は鍛冶の腕はまだまだです。特別な技術を教えていただいたが、本来なら俺よりも腕のある者はたくさんいます。なにより、この技術をあまり無差別に売らないで欲しいと言われています。鉄を打つのに制限を付けて居る以上、究めると言うのはいささか言えません」
うむと髭を撫でて、少し考え込む。
「いやはや、金に目がくらみ、未熟な腕で武器をばらまくような輩ならいざ知らず、お主は自分の身の丈を弁えている。旅人は我が物顔で暴れる無法者と聞いていた」
「あ、すいません。それは半分正しいです。そんな人もいます」
「そうか。ならそんな輩では無い者と早い内に友好を交わしておこう。我が国、ドワーフ国『鉱国ガルド』に来る気はあるか?」
「おおっ」
「新しい町っ」
「それはぜひ、この未熟な腕ではやれる仕事をこなさないといけない。仕事場所は多くあればそれにこしたことはない」
「良いだろう。最近貴重な鉱石を手に入れるダンジョンに凶悪なモンスターが住み込み始めた。旅人が役に立つのなら、招いてでも早く鉱石の流通を回復させたいところだからな」
「あなたはいったい」
「吾輩はガルド鉱国国王『ドンホーテ』。それが正式な名前だ」
ガッハハハと笑い、隠された道を開けて案内してくれた。
どうも岩をいつも無理矢理組み立てて、普段は力持ちのドワーフ以外は入れないようにしていたらしい。
新しい場所が開かれ、俺達は豪快に笑うドワーフの王と兵士達に付き従いながら進んでいった。
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