第13話・村を見て回ろう

 村の中でクエストを探す。冒険者ギルドの受付はかなりの列になっている。これでもみんな大人しく並んでいる。


 ギルドの依頼は後回しにして、村の人の依頼を見つけてこなすことにした。


 牛を育てるチーズ職人のレアさんに家畜が喜ぶ餌が欲しいと言われ、マッシュロットで作ったロット飼料を食べさせる。


「おお、みんな喜んでる。ありがとよ。これはお礼だ」


「チーズとミルク!!ありがとうございます」


「なあに、それほどでもないさ。こんな餌を用意できるなら、牛など家畜スキルを取って育てると良い、色々教えて上げるよ」


 そう言われて色々教わりながら、次は荷物持ちなどをする。これはタロウが頑張ってくれた。タロウは以外と力持ちで、荷物を運び終えた。


「ありがとうよ」


「いえいえ」


 次は裁縫をする針子の仕事場でシープと出会い、染め物に良い物を探しているらしい。マッシュキュアと精霊花の染め物を用意して、試してもらった。


「これは良い、マッシュキュアはマールさんに頼めば作ってもらえるかしら? 綺麗な春色ができて満足。こっちの精霊花って言う、綺麗な水色も良いわ~」


 そう言われ、裁縫に付いて色々と聞く事ができた。その時にシープにフレンド登録して欲しいと言われた。


「いいのか?」


「うん」


 こうして初フレンド登録をして、フィールドに出て行く。使うのは弓だ。


 カーストレントの物は使わず、精霊樹の枝で作った品物。かなり品質は良い弓であり、攻撃力もある。


 試しにフィールドに出ると、少し先のモンスターと出会うことになった。


 ◇◆◇◆◇


 アタックボアとディアマーチと言うイノシシと鹿のモンスターから肉を確保しつつ、採取で薬草やキノコを採る。キノコは栽培できないだろうか? 調べないといけない。


「ドクドクダケ、シーダケ、ヒーダケか。ヒーダケは火傷を負う麻痺毒に使えそう」


 他に何かないか調べながら兵士の草原、先くらいのモンスターしか出ないらしい。


 このレベルなら戦える事を確認しつつ、少しずつ辺りを探索すると、タロウが反応する。


「ん、向こうの山。もしかして廃坑山か」


「!」


「そうだな。意外と近いんだな」


 そんな会話をしながら、肉も手に入れたし、一度村に戻ろう。全員で村に戻ることにした。


 ◇◆◇◆◇


「あっ、アッシュさーんー」


 広間に来て、冒険者ギルドを覗こうとすると、鈴谷さんが手を振っている。なにかあるのか近づいて話を聞く。


「すいません、病気を治す薬ってありますか?」


「薬? 誰か病気なんですか?」


「子供の一人が風邪を引いていて、薬が欲しいそうです」


「分かりました。まだ誰にも試していませんが」


 そう言って、病気の子供がいる家に向かう。村の雑貨店の子供らしく、小さな女の子が苦しそうにしていた。


「はい薬です。熱風邪なら、これで問題ないですよ」


「ああ、ありがとうございます」


 癒しの錠剤を使う。ベットから半身起こして、薬をスプーンで飲む少女。


「……にがくない」


「大丈夫かい」


「………少し喉のイガイガ無くなった……少しジュースも飲みたい」


「良いよ」


 薬をしっかり飲み、飲み物にジュースを渡す。すぐにすーすーと眠り始める。


 さすがに調合に苦戦した薬だ。効き目はしっかりしている様子。村の医者もこれなら明日には治るとのこと。


 念のために明日の分も渡しておく。こうしてクエストは終わり、今度は鍜治場で情報を集めようかと言う話をしたが、鈴谷さんがストップを言い渡す。


「あの、アッシュさんって、神聖や妖気のアッシュさんですよね?」


「まあはい、もう隠していても仕方ないので」


「ああやっぱり……鍜治場には近づかない方が良いですよ」


 なんでも攻略サイトなどを経営する考察ギルドや少しソロプレイ、非協力的なプレイヤーがたむろっているらしい。主に鍜治場は人がおらず、好きに使っていいそうで寝泊まりにしているらしい。


「いまのところ問題らしいことは起こしてないから、誰も文句言いません。武器の整備に行っても、ちゃんと用意してます。だけどアッシュさんは問題で」


「ああ。独自の情報とかですか?」


「絶対に聞きだそうとします。正直私達【天秤の剣】も困ってるくらいです」


「……鈴谷さんは【天秤の剣】なんですか?」


「私は農業のトップを目指して活動中ですね。正直、春の歌とか寝耳に水でして、驚いてますよ~」


 ハクマイも協力関係であり、実はシープも人気の裁縫職人らしい。シ-プは見た目のこともあり、美少女プレイヤーとして人気とのこと。


「あの子が自分でフレンド登録をお願いするなんて、少し意外です」


「そうなんですか?」


「すぐにリアルで会おうとする人に引っかかって男性プレイヤーとは話しかけないようにするほどですね。すぐに仲良くなって、自分も染め物の時に使いたかったんでしょうね。できればあの子に流してください。ギルドには入ってませんが、ハクマイさんと同じ協力関係ですので」


「わかりました」


「とりあえず、アッシュさんは耐久値を削らずに戦闘していただきたいですね。向こうもかなり同名プレイヤーにコンタクト取って、ハズレを引いてなりを潜めてますが、探してますから」


「そんなことになってたのか」


「あまり褒められたことじゃありませんね。近づいてくるプレイヤーは少し気を付けてください。私達も本音を言えばフレンドになりたいですが、今回のイベントはやめておきます」


「いいんですか?」


「まずは信頼を勝ち取りたいと、ギルマスの方針ですねえ~」


 こちらとしては顔合わせ程度はした方が良いかもと伝える。ならその場を整えますねと言われ、あとで話し合いに参加する事に。そんな会話をしながら、マールの畑に戻りパプリカを回収。村の人に喜ばれると良いなと思い、また明日に備える。

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