第66話・イベント進行:ボスキャラ登場

 それは数分前に遡る。


「ぷはっ、ギルマス。なんかあったぞ!」


「ついにやりました!レア情報ですぞ皆さん!」


 彼ら最前線は歓喜しながら、湖の水を大量に抜き、お湯に変えて町に流して、湖の中を調べていた。


 初めは中に飛び込んでも、飛び込んだ勢いではい出てきた。だが水の量が減ると共に水の中に入れて、ついになにかあったのだ。


「大発見、大発見ですぞ!」


「やったぜ!」


「ざまあみろ!俺らのことバカにして、これで俺らが一位だ」


 数名のプレイヤーは戸惑う中で、喜び合う彼らに対して聞いてみる。


「そ、それじゃあとはどうするんですか?」


「そんなの決まっているじゃないですかキミィ。それがなんなのか調べるんですよ」


 そうメガネを直して、すぐに指示を出す。そしてそれが、箱のようなものに刺さった剣であることを知り、メガネは静かに………


「分かりました。このイベントは最終的に湖の水を取っ払い、水底にある剣を回収するイベントです。先駆けです、一番乗りです! すぐに剣を引き抜きましょう」


「いいんですか?そのよく調べもせずに」


「なに言っているんですか?これ以上の名推理は無いのですよ」


 分かっていませんねと残念な物を見る目で語り、彼らは剣を、抜いた。


 ◇◆◇◆◇


 その瞬間、神々が真剣な顔になり、同時に苦虫を噛み潰したように顔を歪めた。


「そういうことか、ここにあるのは」


「えっ、いったいなにが」


「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ―――ッ!?」


 悲鳴が響き渡る。空から黒い塊が落ちてきて、それがモンスターになり、襲い掛かってくる。


「ギルマス、町中にモンスターが現れた!」


「なんだって!?」


「湖に急ぐぞ、あ奴が完全に蘇る前に!」


 神々が急いで城から出ていく中、プレイヤーは何人かモンスターの対処に回り、神と共に行動することにした。


「俺もいていいのかな?」


「神様の好感度高いからいて欲しいよアッシュ」


「モンスター戦ならオレらに任せろ!」


「大丈夫、今現在ここにいるのはトッププレイヤー達です。問題なく対処できます」


 こうしてモンスターが道を阻んでも神が薙ぎ払い進み、その後を追うプレイヤーの前に現れても、天秤、討伐隊、ワルキューレなどの面々が阻む。


 こうして湖がある場所へ来ると、水が無くなり、水底の地面が見えていた。


 白い煙がもくもくと上り、地の底にいるのは、黒いヘドロのような塊と、最前線のプレイヤーだ。


 悲鳴を上げて一人死に戻り、食われながら消えるプレイヤー。


「プレイヤーを食ってやがる!」


「突撃ですぞ皆の衆!」


 突撃することしかできないのか、まっすぐに進んでいくが、ヘドロの塊を見て、トッププレイヤー達はバカ、やめろ、よく見ろ!と叫んだ。


 ブレスのような吐息が放たれ、一網打尽になるプレイヤー達。そのポリゴンが吸い込まれ、よく姿が見えてきた。


「ドラゴン系に似ている。翼と爪のような腕、尻尾がそれだけど、中心が人型だ」


「っていうか、あれ春の女神に似てない?」


「春の女神に似てるって、それって」


「なにをしているんですか!? 戦神ッ!?」


 春の女神が叫び声をあげて、それが口を大きく広げて笑う。


【野菜狂いのバカ女か!何億年ぶりだ、俺がやっと外に出られたのは!何億年死んでいた!】


「なにをしているのか聞いてるんです! 封印が解かれたから暴れ出して、いますぐその力を抑えなさい! ここにいるのはあの時の戦とは無縁の者達しかいません!」


【ふざけるな!まだ戦は終わってねえ!】


 ヘドロからドラゴンの人型のような骨が現れ、黒いヘドロが固まり、武器や鎧に変わる。


【どいつもこいつもバカばかり!神に逆らう愚か者どもめが!創造神はその違いが分からない大バカ者なんだよ! 俺様が世界樹を手に入れて、世界をよくしようとして邪魔しやがって】


「ハッ、笑う。お前、ただ戦したいだけ。世界樹に不死の力があるって嘘ついた。嘘つき神、まだ懲りてない」


【テメエのしゃべり方は癇に障るぞクソ魔神ッ! 魔神の癖に魔物どもが暴れないようにしやがって、魔物ってのはなあ、人を殺して、人に殺されるために生まれてるって何度言えばわかる!?】


「………お前、その侮辱を辞めろと何度言えば理解できる?」


 魔神はそう言って剣を抜く。禍々しい剣であり、鎧を着込む。


「待つんだ魔神!神が本気でぶつかればこの島は吹っ飛ぶぞ」


「ッ!?」


【ハッ?またそうやって手を抜くのか!?弱虫め、俺が復活するのを黙ってみてろ。おいそこの創造神の人間、こっち来い!】


「はっ?」


 魔神が顔を歪める中、プレイヤーに話しかける戦神。翼を広げ、飛び上がりながら口を開き、ヘドロがドロドロと流れ出ている。


【お前達を食えばいくらかマシだ。俺の贄になる権利をやる、さっきの奴らのように俺に食われろ】


「ふざけるな!」


 ジークが剣を抜き、軍勢を率いる戦神に立ち向かう。


【ッ!?その剣、武器も防具もオリハルコンだと!? 誰だ、誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ!? 神しか持つことを許されないオリハルコンを世に出したのは!?不敬不敬不敬不敬不敬ィィィィ!ただの人間の分際で、不敬にもほどがある!】


「勝手に言ってろ」


「トッププレイヤーがしんがりだ。俺達で戦神を相手にする」


「なら取り巻きは任せろ」


「皆さん、神同士なら問題でも、人が神に挑むなら問題ありません。全力でサポートするのです!」


 春の女神の言葉に、神々が応ッ!!と応える。


 こうして戦いの火ぶたを落とす。

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