第52話・ワールドワン

 その日、それは唐突だった。


「えっ?」


 ジークフリードはログインしたあと、フレンドメールがないか確認したら一件来ていた。だがそれが賢神からの物で無ければ驚きはしなかった。


『エルフの姫と共に旅人アッシュの畑に集まりなさい』


 そう書かれているため、お姫様も連れて彼の畑へ向かうことに。


 転移門を使わないから、集まるのに時間が掛かった。ヒビキにも念のために連絡して、ワルキューレは同じようにメールが来ていた。


「あれ、どうしたのジーク達?」


 アッシュ達はどうしたのと言う顔でいて、お姫様と挨拶を交わす。


「初めまして、エルフの国の第一王女『クリス』です」


「初めまして」


 挨拶を交わす中、アッシュも知らないプレイヤーも来たらしい。


「えっと、春の女神からメールで来るように言われて」


「俺は鍛冶神様です」


「自分は薔薇姫様です」


「冬の女神です」


 上位存在からのメールで首を傾げる。そうしていると神々が降臨し出す。


「えーなんかお客さんが来たー」


「そういう問題じゃ無い気がするよ」


 ジークフリードはそう言って、アッシュは飲み物の準備をしなきゃとかテーブルを出す。


 もこもこした厚手の服装の少女が冬の女神であり、コウモリの羽根、大きな角と悪魔っぽいのは魔神とのこと。


「アッシュ、落ち着くのです。今日は貴方をねぎらいに来たのですよ」


「俺を?」


「私の願いを叶えてくれて、ありがとうございます」


「えっ?」


 そうしていると、日の日差しが少しずつ畑に集まり出して、真っ白い空間を作り出した。


「あそこって、マッシュマックの種を植えた」


「さあ芽吹きなさい、新たな我が子、世界樹よっ!」


 そう言った途端、突然光が消え、畑に芽ができたと思ったら、凄い勢いで大樹へと成長した。


『『『ええーーーッ!?』』』


 新鮮な風が吹き出す。綺麗な空気が空間を包み込み、野菜の品質が目に見えて上がっている。


 樹の下から覗くと、日差しが星空のように見え、優しい雰囲気に包まれる。立派な樹が生まれ、色とりどりな花と共に果実も実り、綺麗な樹が芽吹いた。


「一日で実ったー」


 アッシュは驚いて空いた口が塞がらない中、春の女神は涙を流し、一本の枝が折れて彼女の元に降りて来た。


「ああありがとう、またこの子と出会えた事を嬉しく思います」


 赤ん坊のような少女が腕の中にいて、綺麗な薄緑の髪をした子。生まれたばかりの樹の精霊にして、世界を包み込む樹の精霊。


【ワールドアナウンス!ワールドアナウンス!】


【世界にワールドワンテイムモンスター!世界樹の精霊が誕生しました!】


【世界にワールドワンレジェンドウェポン!世界樹の枝が誕生しました!】


【アッシュには称号『世界樹の親』とSP5が渡されます!】


【アッシュには称号『世界に一つの創造者』とSP10が渡されます!】


『『『ワールドワンッ?!』』』


 プレイヤー達が驚く中、それに薔薇姫は優しく泣く春の女神に説明せよと伝え、微笑みながらはいと答える。


「ワールドワンとは、創造神様が世界にたった一つだけの物としてお認めになった品物のことです。なにがあっても失われず、同じ物は二つと無いものですね」


「それが二つ、いま誕生したと?」


「はい」


 五歳くらいの少女になった世界樹の精霊はとてとてと歩き、アッシュの足にしがみ付き、それに従魔達がわーいと喜ぶ。


 妖精達も喜ぶ中、これが一番ですねと告げて、枝を渡す。


 それは『世界樹の枝』と言われる短杖であり、品質:★レジェンドと言うもの。さまざまな破格のステータスを持つ武器が手に入り、うおぉぉぉとプレイヤーが騒ぐ。


「いまこの場にて我々神々は、世界樹復活を宣言する。それを成した者の名は『妖精の生産地』の『アッシュ』であると宣言する」


 賢神は仕方ないかと呟き、冬の女神らしいシープに似て物静かな少女は頷き、空から光が注ぐ。


 それから春の女神は宴会しますかと微笑み、とりあえず品物でしてやりますとアッシュは言う。


 集まった物で軽いお祝い会を初め、ジークフリードは良いなと思った。


「すいません神々の皆さま」


「はい、なんですか?」


「自分は物を作ることはできませんが、討伐などでワールドワンの物はありますか」


「くふふ、あるぞ。しっかりとな」


 それを知ったジークフリードは悔しがる一方で歓喜に震えた。この情報を知ったプレイヤー達もまた同じ気持ちだ。


 最初のワールドワンは逃してしまったが、次は自分がと思う者がいる。彼らは討伐にもワールドワンがいる事を知り、心に決めた。


「なら討伐のワールドワンは絶対にもらう」


 そうジークフリードは告げて、神々は微笑んだ。


 アッシュは凄い事をしたと自覚して、少し微笑む。


 次は世界樹の枝をどうしようかと話し合いになり、シープちゃんが使うかクリアちゃんが使うかと言う話をしながら二人に断られ、制限が入るがテイムモンスターのスキルで魔法を使うかと言う話に収まった。


 この情報が彼らプレイヤーに震撼して、すぐに大騒ぎになる。


「最大値5レベだから、威力が低いんだけど魔法」


「正直に言えば欲しい」


「魔法職に持たせたい。ヒーラーならなおさら欲しい能力だよな」


「輝夜ちゃん持てないの?」


「輝夜、装備できる?」


「できるー」


「正直プレイヤーが使いたい」


 そんな話をしながら、世界樹の精霊『ユグドラシル』はすやすやアッシュの膝の上で眠る。少しずつ成長するだろう。


「アッシュ、そして鍛冶師『ロックオン』よ」


「はい?」


「は、はいっ」


「お主ら二人なら、我ら神々や上位存在足る薔薇姫。それらを傷つけるほどの強力な武器、ワールドワンの元である貴金属を生み出せるだろう。努力を忘れるな」


 鍛冶神様が告げる。お主達ならワールドワンの元になり、神すら傷つける武器を作ることは可能だろうと。


 おおっと驚く中、こうして祭りは終わり、様々な場所で噂になる中、今日は幕を閉じるのであった。

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