第48話・復興の様子

 ヒビキと共に世界樹に関する記述に思うところがある中、シープが三大鉱石について調べ終えた。


 残りの鉱石、ヒヒイロカネとアロンダイトはドワーフの国にあるダンジョンから僅かに取れること。それかいまだ発見されていないダンジョンから発掘するしかないと書かれている。


 どうもドワーフの国は火山地より先にあること、エルフの国は迷いの森の奥と分かり、方向を決めて先に進むことにした。


 ◇◆◇◆◇


「それでどうなったんですか?」


 一度ホームに戻り、アイテム整理などしている。クリアちゃん達の様子も聞かないとね。大好き丸さんは食材をドロップしに出向いたり、俺から受け取って料理を売り出してるし。


「トップ勢は迷いの森と火山地の探索、他は四季ダンジョン攻略だって」


 一枚岩では無いからね。俺はこの後、世界樹について春の女神様か薔薇姫さんに話を聞くくらい。


 アイテム整理をして、品物の確認をしていると、スキルチケットがあった。秋の時のだろう。色々あって忘れてた。使うと『宝石研磨』と言う、宝石の品質を上げるスキルが手に入った。これは助かる。


 火山地でレベリングしたとき、宝石はいくつか手に入っているため、全部の宝石を研磨してレベル上げしたあと、薔薇姫のもとに出向いてみた。


 ………

 ……

 …


 時間を掛けて移動すると、薔薇姫はいま秋の聖域で復興を手伝っていた。といっても、薔薇姫はダンジョンの扉が直るまで門番の代わりらしい。扉の復興はミスリルがいるらしい。


「アッシュか、久しいな。お主は物を流したり、金を流したりする程度のようじゃな」


 どうやら復興に貢献しているプレイヤーなど目に掛けているらしい。内容も多岐にわたって知っているようだ。


 俺は基本、アイテムを売りに来たり、買ったりする程度だからな。ミスリルは買ってはいくつか扉に使用している。


 薔薇姫に世界樹について調べていることを伝え、王都で手に入れた情報を尋ねた。うむと頷き、細かいことを教えてくれた。


「世界樹はとある人が偶然にも作ることができたものでな。春の女神から聞いたら自分の加護を持った人間らしい。エルフの国の者は自分らの物と言っているが、そんなことは考えず、みんなのものとして育てられたものじゃ」


 だがバカな人間などが世界樹を独り占めしようとして戦争を起こして、魔族が動いた。他の者もこれを機に動いたため、大きな戦争になった。


「とはいえ、人間の王は始め、ほとんどが世界樹を魔族のために守っていると抜かしていたが、戦神から道具を受け取り、自分の物として切り落とした。そして見合った力が無いと知ると、全ての原因を神に擦り付けて、それを封印しようとした。春の女神は短気じゃが邪悪ではないし、瘴気は世界樹が浄化していたのだから、切り落とせば世界に瘴気が生まれるのは当たり前じゃ」


「碌な事してないな」


「ちゃんとした人間はその辺分かっておった。だから歴史書にも人間が世界樹を切り落としたとされている。その国は春の女神、正確には邪悪な神の姿をした戦神を封印して英雄のように振る舞ったが、世界樹を切った責任を取らされて滅んだ」


「世界樹はもう戻らないのですか?」


「いいや、加護を持ち、世界樹の実を育てている者がおる。もしかしたらなと思っている」


「世界樹の実はいったい?」


 それを聞くとにっこりと微笑む薔薇姫。まるでもう人の手で育てられているよと言わんばかりの笑顔だ。もしかして俺はもう世界樹の実を育ててる?


 一番に整えられた屋敷から出て行き、しばらくは上位農業のスキル上げした方が良いかもしれない。


 そう思い、俺は続報が出るまではいまのままでいいかと思い、ゲームを過ごすのであった。


 ◇◆◇◆◇


「アッシュのあの様子なら察したか。ヒントくらいになっていればいいのだが」


 そう思い、薔薇姫は町に出て復興作業の様子を見る。


「すまない、門の修復はどれくらい進んでいる?」


「あっ、薔薇姫さん。はい、プレイヤーいや旅人達は品質の高いのは自分達の物に使ってるようですけど、何人かは手に入れた物はなるべく回しているので八割ですね」


「うむ、ミスリルは三大鉱石故に仕方ない。他のところはどうだ?」


「お米はいっぱい育ててる~♪」


「高炉も売れるくらいいっぱいあるよ~♪」


 妖精達は嬉しそうに言い、薔薇姫も微笑む。だが元気の無い妖精はやはりいる。


「女神様はどうしているか心配です~」


「女神様はどこにいるんだろう?」


「うむ、すまないな。我が眷属を使ってはいるが、やはり場所が分からないことには難しい」


 ここ以外の秋の聖域を知らない薔薇姫は、ともかく聖域とされる場所を探すしかない。だが夜の眷属である自分達がいち早く見つけられそうな場所は、魔神の聖域くらいしか分からない。


「冬の女神とか連絡が取れたが、基本自分の聖域しか分からないから、冬も知らない。春はいま自分の力を取り戻し始め、仕事に忙しい中で調べている我と同じくらい。夏は鍛冶神に聖域を預けて遊びに出かけている」


 夏の神だけは後で締めると決めて、魔神、海神、獣神などにも連絡を入れておくかとため息をつく。


「他の神様ってどんな状態ですか?」


「ん? ああ、鍛冶神は最近、旅人に目のある者を見つけては【種族転生】を解禁してもいいと言っていたよ。ドワーフになりたいものは、精進するように」


「おおっ、他の神様もどうなんでしょう」


「ん? うーんそれはなあ」


 賢神の方は難しい。あれはいまだに自分の種族第一主義。世界樹はエルフの物と思いこんでいる。


 技術神は鍛冶神と連絡し合っているらしいから、近々旅人の前に出て来る可能性はあると伝え、残りの神は聖域で仕事していると教えて上げた。


「情報ありがとうございます!」


「うむうむ、礼を言えてえらいのう」


 そう微笑み、ここで活動するプレイヤーはしっかりしていた。


 していたが、彼らだけではいけなかった。


「んッ?!」


 突然世界を夜に変え、爆撃を防ぐ薔薇姫。


「しまった!?」


 何人かと建物が爆撃で吹き飛び、妖精達が大慌てた。


「なんだ!?門からまたモンスターか!?」


「妖精さん大丈夫?!」


「庇われたの~」


「旅人さんが吹き飛んだ~」


「そして死に戻りました旅人です。大丈夫か!?」


「大丈夫で~す~!」


 妖精達はプレイヤーが庇ったからけが人がいないことに胸を下ろして、すぐに睨みつける。


「これはどういう了見だ。賢神!?」


「うるさい!俺のエルフ達になにか恨みがあるのか!旅人が聖域にいるだけで虫唾が走る!」


 そう言って賢神と薔薇姫がその場で争いを始めた。

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