第12話・農家マールの出会い
マールと言う人は村の奥、大きな畑を所持していて、この村の冒険者ギルドに所属する受付さんからは、村の食料を賄っているらしい。
「王国から来た冒険者か」
大柄の男で気難しそうな老人が現れた。クワを担ぎ、一生懸命に畑を耕していた後のようだ。
「畑に植えるのは一つだけだ。そうじゃないと、食い物に困るからな」
「そうなんですか?」
「まあいまはお前達がいるから、イノシシを狩りに出向いたりできるが、野菜はここでしか採れん。野草はできる限り森の動物の物にした方が良いからな」
「なるほど」
「なにより牛や豚、山羊の食い物は全てこいつで賄っている。文句を言わないのなら手伝ってもらう」
「はあ」
ハクマイさんが困惑する中、畑の様子を見る。畑一面に広がるのは、
「なんでしたっけ?」
「初期野菜」
「ああ」
「マッシュマック育ててるのか」
畑一面にマッシュマックらしい野菜が広がるが、なんか全体的に緑色だ。
「こいつはマッシュマン。昔はおいしいと言われてたんだが、苦みが強く、あまり人気が無い」
「マッシュマックの品種改良ですか?」
「ああ。お前はマッシュマックは好きなのか?」
「いま★9以上目指して作ってます。品種改良したものも★7になって、あと少しですね」
それにマールさんはほうと頷き、三人は?マークが浮かぶ。まあマッシュマックは全て売り払って、別の野菜を育てろと攻略サイトじゃ言われてるからな。
「なら称号をマッシュマック農家にして、大地の賛歌を使うか」
「なに!?お、お前さん、大地の賛歌を知っているのか!?」
「えっ?」
全員が首を傾げるが、畑持ちの彼らに聞くと、誰も大地の賛歌どころか春の歌も知らないらしい。緑の手も聞くがそれも知られていない。確か一種類特化すればもう条件は満たしてそうだが………
「自分、米を作りたくて、米になりそうなものを研究してて。難しいですがお金になるイチゴなどをまんべんなく育ててます」
「自分はジャガイモとか、新しい物をすぐに仕入れるので」
「………主にお金稼ぎが楽なジャガイモとかにしてる」
つまりギリギリ緑の手獲得条件を満たしていないのか。
「じゃ、俺達は大地の賛歌歌いながら育てるから、みんなは普通に」
頷き合うプレイヤーに、俺はいつものように歌いながら畑を耕す。
マールさんはその様子を時々見ながら物思いにふける。
◇◆◇◆◇
マッシュマンの世話が終わったら、次は果物の樹を世話する。俺の他に従魔のみんなと鈴谷さんとシープが世話できた。
「せっかくだ、村の宿じゃ人が溢れるだろうから、お前らはウチに泊まると良い」
「良いんですか?」
「爺一人にしては広すぎる家だ。問題ない」
こうして家に案内されて、今後どうするか話し合う。
「近くのフィールドで戦えるか確認かな」
「私もそうですね。シープちゃん組みますか?」
「なら自分が前衛しましょうか?」
「(コクコク)」
「こっちは好きにやるよ」
そんな話をしながら料理の時間。輝夜とヒカリが手伝ってくれる中、コーン粉を使いパンを作り、キュアシュガーとナッツオイルを使う。
「すいません、その砂糖と油ですが………」
「マッシュマックの品種改良でできた物の加工品だよ。品質の高い物を用意できるから助かってるんだ」
「はあ……」
少し驚きながらこの三人にはバレたっぽい。マールさんはマッシュマンにはこんなにも種類があるのかと驚いていた。
「とりあえず飯を食いましょう。話はそれから」
油で兎肉のソテーを作り、砂糖を使い卵焼きを作るなどして料理を作る。
部屋割りを決めて、静かに過ごす中、あれと気づく。
「もう収穫できるけど、良いのかな?」
収穫時間がばらけるだろうからいいかと思い、眠りにつく。それが思わぬ発見をする。起きる時間を設定して時間まで加速する。次の瞬間、指定した時間になった。
◇◆◇◆◇
翌日になると一面緑の畑と一面赤い果実が実る畑が出来上がった。
「これは、マッシュマンパプリカ? どういうことじゃ?」
「全部アッシュさんが植えた場所ですけど」
「………あれか?収穫時間を伸ばすと変化するって」
「いままで変化した野菜などは未発見ですが」
「マッシュマンは実る前だったのか………」
マールさんは涙を流して、パプリカを手に取り齧る。
「うん、うまい。昔、両親に食べさせられていた味だ………」
それからマールさんの話では、自分は歌が嫌いな農家の子供だった。バカみたいに歌いながら耕す両親をしり目に、嫌々畑仕事をしていた。
両親が死ぬとき、大地の賛歌を教えなければいけないと言ったが、結局覚える気は無いと反発してしまい、大地の賛歌は途絶え、畑を存続する。
両親の頃はおいしい野菜が実っていたが、自分の代になると苦い野菜しか実らず、どうすればいいか悩んでいたが………
「称号であるマッシュマック農家で収穫時間が短縮されて、一定の時間が過ぎるとパプリカになったようですね」
それだけではないのだろう。大地の賛歌で品質が上がり、緑の手で強化されている。かなり美味しい物ができあがっている。
「そうか、収穫するのが早かったのか」
マールさんはその後、大地の賛歌を教えて欲しいと良い、まずは春の歌を覚えるところから始める。
農家である鈴谷さんはすぐに歌唱を取り、春の歌を覚える準備をする。ハクマイさんとシープもそうして、農家組は春の歌を教えてもらい、歌いながら畑を耕す。効果は無いが習得する前に慣れるだろう。
マッシュマンの作り方を聞くと、雑草との品種改良でできるとのこと。驚きながら、このことを話していいか鈴谷は聞き、農業組は順調に進めて行った。
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