【魅惑の薔薇には媚薬の香り】
月光が荒川さんを照らす。
とても綺麗で、この世全ての男性が魅了されるような姿だった...。
こんな綺麗な人...今まで見た事がない......。
いや、この雰囲気がそうさせてるのだろうか。
彼女を表現するとしたら...。
まるで...魅惑の薔薇。
そう、彼女の能力と同じく...。
......あれ...俺...。
荒川さんが足を組み替える...そんな動作一つに釘付けになり、思わず唾液を飲み込んだ。
彼女が前屈みになりこちらを覗き込む、胸の谷間が見え呼吸が一瞬止まる...そして。
胸の鼓動が早くなるのを感じたその瞬間。
「ねぇ...金丸くん。」
「ぇ...は、はい!」
急に声をかけられ、身体が硬直する。
「紅茶飲む?」
「あ、はい!」
そう言うと俺の前に温かい紅茶が置かれる。
その紅茶からはとても甘い香りがしていた...一口飲むと今までに味わった事のない味で、身体中の隅々まで澄み渡るような感覚だった。
「不思議な味...ですね、初めて飲みました。」
「まあ、私の味だからね。」
「んぐっ...へ!?」
荒川さん...味......。
「私の薔薇で作ったローズティーよ...美味しいでしょ。」
「そういう事ですか......。」
紅茶独特の渋さなどはなく、まるで真水のような舌触り...しかしその香りは嗅覚だけでなく心まで鷲掴みにされるような強烈な物だった。
気が付けば全て飲み干していて、空のティーカップがそこに置かれていた。
すると荒川さんは何も言わず、再び紅茶を注ぐ。
俺は取り憑かれたように紅茶を口へ運んだ。
彼女の薔薇...その香りに魅了され、気が付けば俺は彼女の胸に抱かれていた。
綾ねえとは違う...ただ美しい。
俺の背中をゆっくりとさすりながら、荒川さんはまるでイバラが絡みつくように足を絡めている。
なぜ......。
その言葉が頭に浮かぶたび、甘い香りに脳を支配される。
その状態で荒川さんは問いかけてくる。
「ねぇ...金丸くん。」
耳元でそう囁かれ、俺はふと彼女を見上げた。
上から覗き込むようにして彼女の指先が頬に触れた。
「もう寝る時間だよ...ほら、おやすみなさいは?」
「おやすみ...なさい......。」
目を閉じると、俺は深い眠りについた。
先程まで寝付けなかったのが嘘のように、意識が飛んだ。
......。
そして翌朝......。
俺はいつもの感触で目を覚ました。
しかし、綾ねえは俺が目を覚ました後も必死に抱きしめてきた。
少し苦しい...。
「春くんは私のなんだから!」
えっと...はい?
「結衣にも莉紗ちゃんにも絶対渡さないから!」
な...いきなり何言ってんの綾ねえ!?
嬉しい...けど違うくて。
「綾ねえ...苦しいよ。」
「だめ!とにかくだめだから!」
俺、幸せなまま死んじゃうよ。
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