【冷徹な眼で見てくるドSさん】

0人って...誰も殺してないって事?

綾ねえも特に反応ないし、本当なんだ。


「宝月一族の隠れ里、その場所は?」

冥麟山めいりんざん翡翠ひすいの滝の奥...。」

「人数は」

「全部で228人」


228人...多いな。

それだけの人数が現代の暗殺者として生活しているのか。


冥麟山...翡翠の滝......。

確かあそこは有名な心霊スポットだとか誰かが言ってたな。


誰だっけ......?

まあいいか。


「綾音、ここから先は時間がかかるのだ。」

「なら春くんと私は一旦席を外すから、2人ともよろしくね。」

「はーい。」


時間がかかるって...これからどれだけの尋問があるのだろうか、あの子大丈夫かな......。


「私達は所長に会いに行くよ。」

「所長に?」

「そう、呼び出されてるの。」


所長か...何度か話した事はあるけど。

あの冷徹な瞳は何考えてるかわからない人だったな。

それに綾ねえは言ってた、あの人は...。


【半年前】


「さっきの人が、日本で3番目に強い人よ。」

「え?」

「私達のトップは総監である徳川とくがわ 恵璃朱えりす...そして次が所長。」


徳川 恵璃朱...。

監視員として圧倒的な実績を持つ彼女は、28歳にして特進を繰り返し日本の最高権力者の1人となった。


彼女が動けば全て解決すると言われ、一般人からも高い支持を得ており、今では監視員の顔となる存在だ。


「総監の事は勿論知ってます、けど所長がそんなに凄い人なんて...知らなかった。」

「所長は昔、流星の姫なんて呼ばれてたからねぇ。」

「流星の姫?」


随分と可愛らしいフレーズだな...。

あの人が姫ねえ......。


「あー失礼な事考えてる...。」

「いやー...信じられなくて。」

「まあ確かに信じられないかもね...所長が直径50メートルを越える隕石を素手で破壊したなんて。」


......はい?

漫画の主人公か何かですか?


......。

始めは冗談かと思っていた、けれど監視員の並外れた身体能力を見た後は不思議でもない。


綾ねえが話してくれた事は事実だろう。

半年経った今はそう思う。


そして綾ねえと2人で所長室の前まで来る。

部屋をノックし中に入ると、銀色の髪を揺らしながら1人の女性がこちらへ向かってくる。


間違いない...所長だ......。

白星しらほし 真帆まほ、通称...流星の姫。


真っ白な肌と銀の長髪が特徴的で、特にその瞳は瞳孔が常に開いており漆黒に染まっている。


「お疲れ様です。」


言うなれば死んだ魚のような目をしている。

所長が俺達の前まで来ると、ソファに誘導し。


「どうぞ。」


とただ一言呟いた。

俺達がソファに座るのを確認し元の席に座ると、2人の顔を交互に見た後に目を閉じる。


「災難だったな。」


所長は帽子を取り机に置く、そしてお菓子の袋を開け口へと運んだ後にこちらにも袋を投げてきた。


俺と綾音さんはそれを取る。

袋には白うさドーナツと書かれていた。


......。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る