【全身を痛めつけられる少女】

そんな綾ねえを見てに荒川さんが声をかける。


「大丈夫よ、大好きな春くんを取ったりしないから。」

「絶対ダメだからね!」


痛い...。

背骨が折れる...。


「まったく...綾音にここまで言わせるとは罪な男なのだ。」


莉紗ちゃんは何やらスマホを弄りながら会話を始めた。


「こちら六防所属の羽田村はたむらなのだ、本日朝7:30より予定通り現地入りするのだ...以上、よろしくなのだ。」


すると綾ねえがやっと離れてくれた。

若干身体の骨がきしむような気がしたが、折れてはいないようだ......。


というか、莉紗ちゃんの苗字って羽田村だったんだ。

珍しい苗字だな...。


「7時半かあ、ならこんな事してる場合じゃないね。」

「そうよ...ここから白川刑務所まで1時間はかかるし。」

「ほら春くん、早く準備しないと。」

「したくても出来なかったでしょ!」


こうして支度を済ませた俺達は、白川刑務所へ向かう。

まさか風香に会う以外で足を運ぶ事になるとは...。


つまり、昨日の暗殺者がそこにいるって事か。

姿を見てないから実感ないけど、殺されかけた事実は変わらないからな...。


でも、宝月稟花って女性だよな......。


しかし...現地に着いていざ対面してみると......。


両手両足に手錠をはめられ、傷だらけで下着姿にされた彼女の姿がそこにあった。

身体中の至る所に切傷やすり傷、火傷の痕やミミズ腫れなど数えきれない程の怪我をしていてまるで拷問を受けた後のようだった。


少女の痛々しい姿を見た俺は、思わず目を逸らす。


ここまでしなくても...。

怒りが引いていくのがわかった。


「稟花ちゃんおはよう、昨日はどうも。」

「ひっ...。」


綾ねえを見た瞬間、身体をガタガタと震わせる。

手錠に繋がれた鎖がカチャカチャと音を立てる。


「昨日言ったよね、どんな理由でも絶対許さないって。」


綾ねえがゆっくり歩いて近寄り首を掴むと、至近距離でにっこりと微笑む。


「ぁ...あ......!」


歯がカチカチと当たる音が静かな空間に響き渡る。

綾ねえ...昨日何したんだ.......。


「ちゃんと自分の口から説明した?...そうしてないの。」

「ぃ...あ。」

「ならお仕置きが必要ね...。」

「いやあああ、もう許して!!」


綾ねえが彼女の腹部にパンチを入れる。

こんな綾ねえ...見た事ない。


「かはっ...うっ、げほげほっ。」


わかった...彼女が傷だらけの理由...。

綾ねえだ...間違いなく。


うん...綾ねえを怒らせるのはもうやめよう。


「結衣。」

「はいはい、これでいいかしら?」


そう言うと荒川さんは右手から荊棘のムチを作り出し綾ねえに渡す。


「えいっ。」

「痛っ!?...んっ!!」


綾ねえは容赦なく彼女にムチを打つ、彼女の身体にはいくつもの痣ができていた。


「さて...ちゃんと自分の口で話しなさい。」

「うっ......。」

「わかった?」

「ひぃ!?」


とても話せるようには見えないけど。

ていうか誰も止めないん...だ。

俺は荒川さんの方を見る...すると荒川さんが目線をこちらへ送って話しかけてくる。


「非情に見える?」

「ちょっとやりすぎでは...。」

「昨日はもっと凄かったみたいよ。」

「えぇ......。」


綾ねえ...何したんだよ......。


「あら...ねえ稟花ちゃん、春くんがー昨日した事見てみたいってさ。」

「嫌あああ!!!...何でも話すからっ!?アレは嫌ああああああ!!!!」


えぇ...ほんと何したんだよ。

こんな感情剥き出しにして拒否するとか、尋常じゃない。


「綾ねえ...一旦話を聞こう。」

「じゃあ代わりに春くんが受ける?」

「いや遠慮しときます。」

「あら残念......まあいっか、ほら...素直に答える...わかった?」


稟花は全力で首を縦に振る。

そしてその後は莉紗ちゃんが質問をしていく。


「名前」

「宝月稟花」

「年齢」

「11歳」


なんだよ、風香と同い年じゃないか。

それなのに暗殺者って...。

というかそんな少女に容赦なく拷問する綾ねえ...。


「能力」

「隠密」

「詳しく」

「自分の半径1メートル程度の音を消せる。」

「今までの暗殺人数。」

「...0人。」


え?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る