【綾ねえと同じ学校に通う...】

白うさドーナツ...。

これ...美味しいんだよなあ。


「ありがとうございます」

「うむ...藤村が着いているから心配はしていないが。」


所長は新しい袋を開け口へ運んだ。

そして肘をついて俺を見る。


「少年......いや、もう少年ではないか。」


所長の視線が俺に突き刺さる。

思わず目を逸らすと、所長は机の上の書類に目を向ける。


「君が特能者とはいえ、私がここまで関わりを持つとは珍しい...妹の件もそうだ。」

「そうなんですか?」

「うむ、藤村もそうだが部下達は思いの他優秀でな...所長案件になるものはそう多くない。」


確かに今回の事件も3人は的確に対応していた。

所長案件...もしかしたらまた風香が関係しているのだろうか?


「違うよ春くん、最初はふーちゃんを狙っていると思ってたけど...どうやら春くん自身が狙いみたい。」

「どういう事?」


所長が軽い溜息をつくと、パソコンを開く。

そして俺達に画面を見せながら話をする。


「金丸春也...

身長165cm

体重56kg

健康状態:良好※1

勤務先・学校:県立南城高等学校

能力ランク:Bランク※2

能力名:魔眼※3

能力説明:本人の視界に入った女性に催淫効果

家族構成:父※4 母※5 妹※6

担当監視員:柳瀬やなせ しおり※7→藤村 綾音

......はぁ。

君のプロフィールを見ていると、特記事項だらけだ...今回の件でまた追加される。」


うわぁ...個人情報ダダ漏れじゃん......。

今に始まった事じゃないけど。


「藤村、追記はないか?」

「そうですねぇ...卒業したら家族構成に私の名前が入るくらいかなあ...妻として。」

「へ!?」


いきなり何を言ってるの!?

しかも所長の前で。


「うむ...確かに、ならば妻※...特記...予定と。」

「はい。」

「いやあの、え?」


慌てふためく俺を見て、2人はクスっと笑う。


「まんざらでもないか...上手くやってるようだな藤村。」

「はい、春くんは私の事大好きですから...ね?」

「いやちが...違わなくはないけど、ってちがあの!?」


所長が俺を見てやれやれと片手を上げる仕草を見せ席に戻る。


「...結論から言おう、本日より君の監視レベルを1段階引き上げる事とする。」

「え...。」

「安心しろ、牢に入れという話ではない。」


監視レベルが上がる...。

今よりもっと生活が窮屈になるのだろうか。


「しかし住居は移動してもらう、学校もな。」

「転校ですか、そんな急に...。」

「君の転校先は白川学園大学付属国立高等学校しらかわがくえんだいがくふぞくこくりつこうとうがっこう...藤村の母校でもある。」

「え?」


綾ねえの母校?

俺が綾ねえと同じ学校に...。

でも白川大付属って言えば、県内トップクラスの進学校じゃん......。


「その方が藤村の負担も減るだろう。」

「確かにあそこなら私の負担は減ります...本人さえ良ければですが。」


そうか...綾ねえはその方が楽なのか。

転校したら......沢田の奴ともう絡めなくなるのか。

まあ......問題ないな。


「それに白川大はこの刑務所から車で15分、妹の事も考えれば悪くない話だろう。」

「確かに...わかりました、俺はそれで大丈夫です。」


綾ねえにはお世話になってるし、少しでも楽をさせてあげられるなら...。


「うむ......藤村、その辺の手配はこちらで回そう...宝月の件についてはお前に一任して良いか?」

「はい。」

「それと...羽田村と荒川の2人もそちらへ回そう、彼女達の仕事は他の者を回す。」

「ありがとうございます。」


あれ...今までのイメージと違うな。

所長って意外と良い人なのかもしれない。

でもこの人、隕石素手で破壊するんだよなぁ......。

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