【焦らして焦らしていっちゃった】

午後の授業が始まると、岸本さんはずっとうつ伏せのままだった。

そして南茂さんはいつも通り授業を受ける...。


俺は放課後まで2人と目を合わせる事はなかった......。

帰り道...俺は一言も発する事なく下を向いて歩く。


色々ありすぎて疲れた...まだ4日も学校に通わないといけないのか...。


そう考えていた直後、綾ねえが急に俺を蹴り飛ばす。


「へっ!?」


俺は2メートルくらいふき飛んだ。

幸い障害物がない為怪我はしなかった...。


「何すんの!?」

「狙撃されたの、春くんが!」


狙撃!?


「銃じゃなくて毒針だけど...ヤドクガエルの毒が塗ってあるから受けたら即死。」

「は!?」


なになに、え?

俺殺し屋にでも狙われてんの!?


「またヤバイのが来たかも...私の動きを見て数秒で30通りもの暗殺手段を考えてる。」


マジでヤバイやつじゃんか!?

綾ねえ...大丈夫だよな?


「安全確保応援要請戦闘準備増援確認危険予知地形把握戦闘開始!」


綾ねえが一直線に民家の屋根へ飛び乗る。

......えっと、ジャンプで乗ったよね今?


本当に同じ人間なのだろうか...。


「随分と私の事も調べたようね、宝月ほうづき稟花りんかちゃん。」

「邪魔。」


綾ねえが屋根の上で回避行動を取る。

その動きが早すぎて遠目に見ると残像のように見える。


「1ヶ月も頑張ってストーカーしたのにバレちゃってたねぇ...可哀想に。」

「うるさい。」


綾ねえが屋根の向こうにいる誰かと会話をする。

ここからじゃ良く聞こえない......。


「上手くやらないとお父様に怒られちゃうねー、可哀想にねー!」

「ムカつくムカつくムカつく!」


綾ねえは相手を煽りながら攻撃を避け続ける。


「たかがBランクに...何で私みたいなエリートが監視員に付いてると思う?」

「......。」

「貴女のお父様が金丸春也を狙ってるのくらい、本部はお見通しよ...風香ちゃんは無理だからねー。」


会話をしつつも姿は見せない相手に対し綾ねえは攻めようとはしない...攻撃を避けながらただ会話を続けている。


「あら、逃げようなんて臆病ね。」

「ほんとムカつく!」


更に攻撃は激しさを増す、しかしいきなりパタリと攻撃が終わり綾ねえが首を傾げる。


「あらー?もう終わり?...もしかして弾切れかなあ?」

「わかってる事をわざわざ言うな!」


何か叫んでるな...。

というか女の子の声?


「もしかして逃げるのー?隠れて逃げてばっかり...弱虫さんね。」

「ちっ......。」


綾ねえが突然屋根から飛び降りる。


「室内を選んだのは失敗ね、貴女が部屋を出るより私が逃げ道を塞ぐ方が早いよ...逃げられないねー。」

「......殺す。」


バリンという音と共に2人が走って行くのが見える...。

あれ......俺今無防備じゃ?


「やっほー。」

「うわっ!?」


いきなり目の前に女性が現れる。

思わず変な声を出してしまった......。


「あは、私は味方だよー...応援要請で来たの。」

「てことはあなたも?」

「はーい...三特所属の荒川あらかわ結衣ゆいでーす。」


思ったんだけど、監視員ってスペック高いんだな。

この人もうただのモデルじゃん...。

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