【2人目のお姉ちゃんに膝枕されて】

「はは...。」

「春くん凄い!」

「え。」

「直立からの伸身バク宙って、また器用な事をするな君は。」


え、バク宙?

俺回ってた...?


「まあいい、身体の使い方から覚えてもらうか。」


その後も稽古は続き、最後にまたハチャメチャ大乱闘が繰り広げられたが...。


綾ねえの心配とは裏腹に、何ごとも起きず部活は終了した。


「お疲れ様、明日も来いよ?」


綾ねえを見ると、コクリと頷く。


「わかりました。」

「何だよ、許可制なのか?......宇沙ちゃんは勿論だけどみんな歓迎してるんだから、な!」


背中をバチンと叩かれる、反射的にリアクションを取ってしまう。


「はい。」


そしてその直後、後ろから宇沙ちゃんにダイビングバグをお見舞いされた。


「春くーん!」

「ぐはっ!?」

「春くん春くん春くん、この後デートしよ!」

「えっ。」


周りのアクション部の皆様は暖かい目で俺たちを見ながら微笑んでいる。


「ちょっ、宇沙ちゃん...俺汗かいてるし。」

「えへへ春くんの匂いだぁ。」

「いっ!?」


俺は宇沙ちゃんを引き剥がそうとするが、ガッチリとホールドされて動けない。


「ごめんなさい白星さん、今日は予定があるの。」

「えっ。」


綾ねえは無表情のままそう呟く。

多分、内心はめっちゃキレてる。


「予定?」

「ええ、他の監視員と会う事になってるの...ごめんなさいね。」

「...そっかぁ、またねぇ...春くん。」


涙目になりながらこっちを見ている。

もしかして、莉紗ちゃんとか荒川さんと会うのだろうか?


「うん...またね。」


そして俺は綾ねえの横を歩いて体育館を出る、他の監視員と会う...か。


「それで誰と会うの?」

「春くんがよく知ってる人よ。」


莉紗ちゃんか荒川さんか。

そう思っていると、何故か綾ねえは校舎の方へ歩き出す。


「戻るの?」

「いいから着いてきて。」


なんか、素っ気ない...やっぱり怒ってる?


「今日の夜が楽しみね。」

「ひい。」


綾ねえが教室の扉を開けると、中にはクラスメイトの男子に監視員が膝枕をしていた。


「ほら、来たよ。」

「ん...ああ。」


こいつは確か...誰だっけ?


「よっ!」

「あ、ども。」


見た目は少しヤンキーぽい?

少し茶髪っぽい髪の毛でオールバックのような髪型、初めて絡むのにかなりフランクだ。


確か前の方に座ってたな、そういやクラスの男子と話す機会はなかった。


「とりあえず1発殴っていいか?」

「え?」

「ちょっとちょっと、竜くんダメでしょ?」


監視員さんが慌てて止めに入る。


「クラスメイトなんだから、仲良くしなきゃ。」

「別に俺が仲良くしなくても、白星と楽しくやってりゃいいだろ...なんで俺が放課後にわざわざ呼び出されなきゃならねーんだよ。」


何だこいつ。


「だから、彼は私の知り合いなの。」


俺にこんな美人の知り合いがいる訳...。

いや割といるな...。


「金丸君。」

「えっと...。」

「私は、沢田 めぐみ...前の学校であなたのクラスメイトだった沢田の姉です。」

「...ああっ!?」


確かにどことなく雰囲気が似ている気がする、しかしその姿は大人のお姉さんという感じで落ち着いており、短くショートに整った髪と左目の下にある2つの泣きホクロが魅力を更に深めていた。


確かに沢田が言ってたな、この人が姉さん?...こんな美人の姉がいるとは、沢田のやつ...羨ましい。


「藤村さんもお久しぶりです。」

「相変わらずやっかいな仕事を任されてるようね、同情するわ。」


綾ねえが冷ややかな目で彼を見る。


「あ、何だてめぇ喧嘩売ってんのか!?」

「竜くんがこの人に勝てるわけないでしょ!」

「......ち。」


...ほんとこいつ、やばいな。


「てめぇも何見てんだよ。」

「...いや、同じ特能者だからできれば仲良くしたいなと。」

「ああっ?」


いやほんとこいつ何なんだよ。

絡みたくねー...。


「この俺と仲良くしたいだ?」

「まあ...。」

「......。」

「......。」


気まずい気まずい気まずい。

何だこの雰囲気、男ってこんなに絡みにくい生き物だっけ。


しかしクラスメイトとは温厚な関係でいたいし...。


「あのね竜くん...こちらの藤村さんは読心術の使い手なの、だからもうあの事も全部バレちゃってるから大人しくした方がいいかもよ。」

「......。」


その言葉を聞いた瞬間、彼は固まり全てが終わったような顔をして完全に停止した。


うんわかった。


俺の綾ねえは最強なんだね。

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