【九条さんのテクニックで抜いてもらう】
授業は終わり、宇沙ちゃんがこちらへ歩いてきて目の前で止まり俺の手を掴む。
「いこっ!」
「うん。」
俺は宇沙ちゃんに手を引かれながら体育館へ向かう、そこには以前と変わらないメンバー達が各々柔軟をしていた。
「お、よく来たな!」
部長が柔軟の体制から逆立ちをする。
そして両手でぴょんと跳ねると半回転して着地した。
どんな筋力してるんだ...。
「金丸くん、君にはアクションの才能がある...見学と言わず入部も検討してほしい。」
「そんな...俺に才能なんてないですよ。」
すると部長は俺に向かって回し蹴りを繰り出す、俺は咄嗟に身体を逸らしてその攻撃を避ける。
「うわっ!?」
「ほらな...今の君の動きはボクシングのスウェーに近い。」
「スウェー?」
反射的に身体が動いただけなんだけど...。
「普通なら直撃だな。」
「九条さんが手加減してくれたからですよ。」
特能クラスの3年なんて身体能力おばけしかいないはずだし...。
「九条さんて...元々空手の全国1位なんですよね、本気なら避けれるわけないでしょう。」
「あのさ金丸くん...さっきの蹴りも一般人はまず避けられない速度だよ。」
え?
いや、明らかにゆっくり蹴ったように見えたけど。
「経験者でもなければ対応できなかったはずだ......ただ君の動きは速度だけで無駄が多い。」
「何もやってないですし...。」
「褒めているのだ!」
九条さんがいきなり俺の肩を掴み、熱い眼差しで見つめてくる。
少し恥ずかしい...。
「無駄な動き、結構!...アクションとは派手な動きでカッコ良く見せるものだ!」
「は、はあ。」
「ただの蹴りも、飛び上がって蹴れば強そうに見えるだろう!...普通のパンチも大袈裟なリアクションで数倍の破壊力に見える!」
九条さんは、俺の肩を掴みガシガシと揺らす。
そして熱い抱擁を...。
「君は才能の塊だ...私が保証する。」
「ええっ...あ、ありがとうございます...。」
九条さんの柔らかい胸が、思いっきり当たってる...やっぱりこの人ノーブラだ!?
「よし、まずは柔軟からだ。」
「え、あ。」
「ほら...いいからこい。」
俺は九条さんに抱きつかれたまま地面に倒れ込む、そして前回と同様にしっかりねっとりと柔軟体操が行われ身体が柔らかくなるのがわかる。
1箇所だけ"硬くなっていた部分"があったが、九条さんが"凄いテクニック"で上手く力を"抜いてくれた"おかげでしっかりと柔らかくなった。
そんな中、綾ねえはいつもと変わらず俺を腐った魚でも見るような目で見ている。
気になる人がいるって言ってたけど...。
誰なんだ...九条さんは違うし、宇沙ちゃんも違うなら。
千賀さん、もしくは赤坂姉妹...。
気がかりな事って言ってだけど、まさかこの前の件に関係してるとか。
「気持ちいいだろう。」
「はい。」
柔軟というよりマッサージに近い...。
それに脇腹や太腿付近を刺激されて、ちょっとくすぐったい。
「ちょ...九条さんそこは大丈夫です。」
「何を言っている、綺麗な足技を出すにはここの柔軟性が大切なんだ......それと、股関節もな。」
「っ!?」
九条さんが指を太腿内側に添わせ刺激しながら、耳元で囁く。
そしてジワリジワリとその手を上へ動かす。
やばい...。
今触られたら!?
「部長遅い!!!」
どうやら俺たち以外は既に柔軟を終えていたらしい。
「新人だからな、しっかりたっぷりねっとりとしてやらないといけないだろ?」
「ねっとり!?...何してたの!?」
宇沙ちゃんが俺の身体に触れようとすると、九条さんがその手を持ち後方へ投げ飛ばす。
宇沙ちゃんはそのまま物凄い回転をしながら、体育館を転がっていった。
「えっ、えっ!?」
「よしみんな、稽古始めるぞー!」
「いやあの宇沙ちゃんは?」
「無傷に決まってるだろ、ほら。」
宇沙ちゃんは倒れた状態からぴょんと立ち上がり、こちらにぴょんぴょん走ってくる。
「いきなり投げるなー!」
「あはは、向かってきたからつい。」
その後、俺は基本的なパンチやキックなどを教えて貰いながら見よう見真似で再現する。
「おー...。」
俺の動きを見て、アクション部員達は手を止める。
「えっと...。」
「はいあと10本!」
「え、あはい。」
俺はパンチ、キックのコンビネーションを10回繰り返す。
九条さんの真似をして、パンチやキックの後に一瞬身体を止めるようにしてみる。
確か手はこう......。
「ほらな。」
「はえー、春くん凄いね。」
「彼は知らないだろうけど、蹴りはゆっくり出す方が難しいんだよね。」
蹴った後に...止める!
「それを素人が平然とやってる...どう思う。」
「やっぱり私の春くんは凄い!」
「お前に聞いたのが馬鹿だったよ。」
10セット終わると、その後も稽古は続き徐々に激しい技へとステップアップしていく。
「はい、じゃあ次はバク転。」
「...いや無理ですよ。」
「ほら背中支えてやるから、やってみな。」
ちょっと怖いけど支えてくれてるなら。
俺は地面を蹴り上げ宙へ舞う。
「!?」
手がつかない!?
てか支えてくれてない!?
落ちる!!!
しかし、地面に着いたのは足である。
はは...。
死ぬかと思った...。
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