【綾ねえのキスは魔法の味】

あれ......。

俺は綾ねえと一緒に帰ってたはず。


いや...これはきっと夢の中だ。

でなければ俺の目の前に風香がいるはずがない。


母は風香が生まれてすぐに死んだ......。

俺と妹の歳が5つも離れているのは、俺が特能者という不安定な子だったからだ。


俺は母の愛を感じながら成長し、そして4歳になった頃...海外から父が久しぶりに帰ってきた。


父の顔を知らない俺はどう接していいのか、わからなかったが父は俺にこう言った。


「お前は特別な子だ...。」


と......。

そして父が海外に帰った1年後、風香が生まれた。

その瞬間...風香の周りを禍々しい闇が包みこむ。


そして空は夜より深い絶望に埋め尽くされ、紅い雷が鳴り響いた。


すぐに駆けつけた監視員達によって事なきを得たが、検査機関に回された後......風香がSランク能力者である事が母に告げられた。


その数日後に母は自ら命を絶った。

らしい......。


これは後に所長から聞いた話だ。

そして父は母が亡くなった後、俺の前に現れる事は1度もなかった......。


両親のいない俺を、監視員の柳瀬さんは1人で育ててくれた。


中学校を卒業すると同時に監視員が綾ねえに切り替わる...どうやら柳瀬さんは仕事で海外に行くらしい。


そしてすぐに綾ねえとの生活が始まったのだ...。


......。


ゆっくりと目を開けると、そこは見慣れない天井だった...いやこれから毎日この天井を見る事になるだろう。


「春くん大丈夫ー?」

「はぁ...。」


そう思うなら次からは手加減して欲しいなぁ...。


「春くんが浮気しなかったらね。」

「浮気じゃないでしょ...。」


嫌な夢を見た。

思い出したくもない......。


「春くん...ちゅう。」

「んっ!?」

「っ...ちぅ。」


綾ねえの舌が...絡み合って......。

脳までとろけるような、濃厚な時間が続いた。


「ぎゅー。」

「いきなり...。」

「うるさい...ちぅ。」


あぁ...もうどうでも良くなってきた。

綾ねえとキスしてたら、他の事なんて...。


「んっ...っ。」


ああ...綾ねえ......。

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