【水槽の中に吊るされし全裸な妹】

視界は良好...いつもの景色だ。


「莉紗ちゃん、ありがとう。」

「呼ばれたらくるのだ、それが私の仕事なのだ。」

「ありがとうございます。」


莉紗ちゃんは俺の顔をジロジロ見た後、綾ねえの方を向くとニヤッと笑う。


「そういえば綾音はこいつと結婚するのか?」

「え?」


いきなり何を言い出すんだ...。


「うーん...やっぱりそれが1番よね。」

「...ってええっ!?」


どういう事なの!?


「ん?...何も聞いていないのか?」

「何を?」

「監視員がなぜ異性なのか...その理由を。」


すると綾ねえが慌てて莉紗ちゃんの口を塞いだ。


「んー!?」

「ストップ、春くんには今度ちゃんと話すから。」

「...うぬ、わかったのだ。」

「えいや気になるんだけど。」


すると莉紗ちゃんはさっさと玄関に向かう。


「次の仕事があるから今日はこれで帰るのだ...金丸 春也、またなのだ。」


俺の問いかけに答える事なく、莉紗ちゃんは家を出て行ってしまった......。


「ねえ、さっきの話。」

「春くん...サングラスも治ったし買い物行こっか。」

「え?」

「また今度ちゃんと話すから。」


そのまま俺は綾ねえに引っ張られ外へと連れ出された。

そしていつも通りの日常を過ごした次の日、俺たちは妹がいる山奥の刑務所。


白川刑務所の地下牢獄に足を運んでいた。


そこは大きな塀に囲まれていて、中に入るとサーカスのテントのように空は無数の金網が張られている。


相変わらず酷い場所だ...この中には能力による殺人などで捕まった極悪人が多数いる。


しかし俺たちが向かうのはその中でもトップシークレット、地下10階にある特能者専用の牢獄の更に奥。


そこに風香はいる。

案内人の刑務官は顔馴染みで、妹の監視員の1人だ。


「久しぶり...妹ちゃんが昨日話してたよ、お兄ちゃんに会えるのが楽しみだって。」

「そうですか。」


会えると言っても...ガラス越しだけどな。

俺たちが牢獄に入ると、目の前にはいつもの光景が広がっていた。


様々なコードが繋がれたその水槽、茶色の液体の中で全裸の妹が両手両足を四方から鎖で繋がれている。


口に付けられた呼吸用のマスクから妹の声を聴き取る事ができるため、会話などは問題なくできる。


水槽の中の風香が俺たちに気付いたのか、俺の方に目を向けるとスピーカーから声が聞こえてくる。


「お兄ちゃん...えへへ、お兄ちゃんだあ。」

「風香、ただいま。」

「おかえりぃ...お兄ちゃん。」


風香は生まれた時からずっと、この水槽の中で暮らしている...10年前からずっと...。


「綾ねえも、おかえりぃ。」

「うん、ふーちゃんただいま。」

「えへへ...嬉しいなあ。」


風香が両目を閉じて笑っているのがわかる。

けど俺からしたら...笑えないよ。


「最近は何してるんだ?」

「監視員の人とゲームしたり、アニメ見たり!」

「へえー、ゲームってどんな?」


この状態でどんなゲームをするのだろう?


「うんとね、最近は"銀河マン"とか!」

「銀河マン...また懐かしいゲームだな。」

「ずっと前にお兄ちゃんと一緒にやってたから、たまにやりたくなるの!」


銀河マンは俺が小学校くらいの時に流行ったゲームで、色々な宇宙人を仲間にしながらボスを倒すゲームだ。


「でね!...やっと銀河ポイントが500貯まったの!」

「おっ、なら好きなキャラが買えるじゃん。」

「そうなの!...で、何買えばいいかわからないからお兄ちゃんに聞こうと思って!」


銀河マンには強キャラが存在する。


遠距離攻撃力が高いジェノサイダー

ステータスが高いグリムダイナ

1ターン無敵になれるスタープリンス


以上の3キャラがボス攻略で役立つキャラだ。


「そうだなー、おすすめはやっぱりスタープリンスかな。」

「あ、お兄ちゃんも使ってたやつ!」

「そうそう...ヤバイと思ったらスタープリズムディメンションで攻撃を弾けるし。」


懐かしいな...。

技名がいちいち長くてみんな叫んでたっけ。


「ありがと...スタープリンスにする!」

「あっ...そうだ風香...。」

「なーに?」


俺はカバンからデスクトップPCとルーター、そして100メートルの延長コードを取り出した。


「やっと許可が貰えたんだ...インターネット。」

「インターネット?」

「そう、色々な事を調べたりできるんだ。」

「でも使い方わかんないよ?」


俺は監視員の1人とアイコンタクトをすると、快く頷いてくれる。


「使い方は教えてくれるみたいだから、まずはメールアドレスだけ作っちゃおう。」


そして俺はパソコンのメールを開き、メールアドレスを登録する。


「fu-ka1013@Smail......よし、これでOK。」

「なになに?...何してるの?」


俺はスマホの画面を風香に見せながら説明する。


「いいか、そのパソコンに文字を打って右上の青いボタンを押すと......。」


俺は風香のパソコンから受け取ったメッセージを見せた。

それを見た風香はきょとんとしていた。

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