【妹とアイドルはトイレに行かない】

そして風香に画面が見えるように巨大なモニターを目の前に設置する、そして俺はメールを送る。


モニターのメール欄には

お兄ちゃんだよ!

と表示されている。


「つまり、離れた場所にいてもこれを使えばお話しできるって事。」

「ほえー...てことはお兄ちゃんと毎日お話できるの!」

「そういう事、文字だけどな。」


風香はモニターをじーっと見つめる、大好きなアニメもサービスに登録したから好きなだけ見れるだろう。


「えへへ、ありがとうお兄ちゃん...毎日送るね!」

「おう!でも学校とかいる時はすぐに返せないからな。」

「うん!...夜に送る!」


後は......。

そろそろ風香も11歳になる、流石に裸を見られ続けるのは良くない。


しかしあの液体...特殊な培養液で全身から栄養を取り込んでいるらしい、食事も必要ないらしく不思議な物だ。


食事をしない身体、トイレも必要ない。


それが人間か?

いつ見ても嫌気が差す...仕方ないとはいえ他にやり方があるんじゃないか、そう思ってしまう。


「春くん、ちょっといいかな?」

「ん?」

「ふーちゃん、私のアドレスも登録しとくね。」


綾ねえは風香のメールに自分のアドレスを登録する。


「春くんに言えない事は私に連絡ちょーだいね。」

「わぁ! 綾ねえとも話せるの!」

「うん、私はいつでもいいからね。」

「えへへ、嬉しいなぁ...嬉しいなぁ!」


風香は頭をフリフリ動かしながら、笑顔を見せる。

もし一緒に暮らしてたらもっと可愛いんだろうなあ。


「お兄ちゃんも、綾ねえも...大好き!」


そして半日の間、俺達は家族の時間を過ごした。

別れの時...それは決まって風香がワンワンと泣き喚く時間だ、本当に寂しいのだろう。


「またね!...お兄ちゃん、綾ねえ!」

「あれ...いつもなら泣き喚くのに。」

「メールがあるから寂しくない!」

「そっか、良かった。」

「えへへ...もう泣かないよ!」


元気になってくれて良かった。

俺の今月のお小遣い...あと2000円だけど......。


こうして俺達は地上へと向かう、するとさっそくメールが一件俺のスマホに送られてきた。


(やっぱりさみしい。)


すぐに俺は返事を返した。


(また来週会いに行くから。)


そんなやり取りは家に着くまで続いた、そしていつもの...。

お風呂タイムがやってきた。


しかし綾ねえはどこか上の空だった。


「綾ねえ?」

「家族って...何だろうね。」


シャワーにうたれながら呟く綾ねえ。

その姿はとても辛そうで...でも綺麗で...。


そういえば綾ねえにも家族がいるんだよな。

監視員ってずっと付きっきりだから会いたくても会えないのかな...考えた事もなかった。


「大丈夫、私の家族は春くんだけだから。」

「あ、うん。」


あまり仲が良くないのか、それとも......。

いや...綾ねえごめん、変な事考えちゃってる...。


俺も親の件があってから家族と呼べるのは風香だけだし、誰にでも知られたくない過去の一つや二つくらいあるよな。


「そう、私の匂いが好きな春くんみたいにね。」

「あーあーあー聞こえない。」


こうしてまた1日が終わる。

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