第2章〜全面戦争〜忍と里

【潜入のプロと夜這いのプロ】

ここは冥麟山、翡翠の滝......。

滝の前に立つ1人の少女、彼女は学生服を着ていて口元はマスクで隠されており、暫くの間じっと滝を眺めていた。


そして彼女は右手をあげ、滝に対して手刀を繰り出す、その直後...大滝は縦に2つに割れ後ろの岩が顔を出した。


「相変わらず人間離れしてるねー。」

「忍とは...人だったのですか?」

「はは、確かに。」


崖上から座って見下ろす女もまた、学生服を着ていた。


「私には人の感情がわかりません。」

「だろうね、あんたが色恋してる姿なんか想像できないよ。」


すると彼女はまた手刀を滝へ叩きつける。

さっきより明らかに強い威力で、何度も何度も...。


「おや、もしかして怒った?」

「私にも好きな人くらいいます。」

「ええーっ、嘘!?」


彼女は無表情でそう呟いて、滝の上に飛び乗る。

座っている女は彼女の顔を覗くと、口を手で抑えながら呟く。


「てことは、姫も感情...持ってるじゃん。」

「五月蝿いですね、斬りますよ?」

「はいはい、それで目標の動きは?」

「流石は監視員の本部そうくつとでも言った所でしょうか、彼は白川大附属に転校しました。」

「ぎゃー、やられたねー。」


女はわざとらしく驚いた後に、クスクスと笑う。

それを見た彼女は口をムッとした後、その女に向かって手刀を繰り出す。


女はすぐさま後ろに飛び退き回避する。


「ひゃっ、怒らないでってば。」

「五月蝿い...大体、稟が余計な事しなきゃ上手くいってた。」

「それはどうかなー?」

「......。」


女はゆっくりと歩きながら、彼女の元へ近寄る。


「藤村相手は姫でも厳しいんじゃない?」

「......なんでBランクにあんな化物がついてるのでしょうか。」

「現に私達みたいに彼を狙う奴らがいる、それが答えじゃん...それより稟が藤村に捕まったって方が問題じゃないかな。」


彼女はその言葉を聞いて、意味を理解したのか...その場に座り込む。


「私の顔を稟は知らない...里の中では常にマスク姿だから。」

「私なんか稟と一緒に水浴びしたりしてたから、完全にバレちゃってるよ。」

「貴女は忍の基本からやり直した方がいいでしょうね...まずはその残念な顔を隠すのが良いかと。」

「残念だとー?...これでも任務先で可愛い可愛いって騒がれてるんだからな?」


彼女達はその後、大滝の奥へと姿を消す。

学生服の肩には南城、白川大の文字が刻まれていた。


そして......2人の様子を。

荒川 結衣、彼女はしっかりと見ていた。


七色薔薇セブンローズ

彼女はその能力を活用し、森林の草に同化していたのだ。


「私の方がよっぽど忍者ね。」


同化を解いた彼女は、山道を降りながら報告する。

スマホの画面には莉紗ちゃんが写っていた。


(こちら羽田村。)

「莉紗ちゃん、3日間の張り込みで計17名の出入りを確認したよ...うち2人は南城高校の南茂 空、白川大附属の赤坂 萌花...で間違いないわ。」

(どちらも金丸が通っている高校、なぜ綾音は2人に気付けなかったのだ?)


荒川は崖道を白薔薇で滑るように降りながら、ぴょんとジャンプし空を闊歩する。


「2人の能力が関係してるのかな?...もしかしたら藤村さんの情報が漏れてたのかも。」

(ふむ...とりあえず今日も金丸が寝たタイミングで集合なのだ。)

「はーい。」


......。

一方その頃。


家に帰った後、綾ねえの調教により体力を使い果たした春也は夜10時にはぐっすり眠っていたらしい。


その周りを囲むように3人は会話を始める、その会話は常人には聞こえない程小さな声で行われていた。


そしてまた朝はやってくる。

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