第31話 聖剣の勇者?イントロ編


 ルークたちはアカネの固有領域の中で昼食タイムへと移っていた。

 それぞれが自分の分を食べ終わる頃、ルークがアカネに顔を向ける。


「んで、アカネ」

「はい?」

「街ん中で後回しにしてた“聖剣の勇者”ってのについて聞きたいんだけど」

「あぁ~……」

「え?どういう意味ですか?」


 セレスティアはアカネが聖剣の主として指名手配されている事を知らないので、ルークの質問の意味が分かっていない。


「こいつ、街中の手配書に出ててさ。そこに聖剣の勇者って書かれてたんだよ」

「えぇ!?」


 なんでそんな事になったのか……。

 その理由がアカネの口から説明される。


「拙が故郷を出た理由は話してましたよね?」

「魔剣の主を探しにだろ?」

「はいです。その旅はどんどんと西に進み、ついには聖剣の生まれた国と呼ばれるこのブリテンに辿り着きました」

「道中の国々でよく魔族だってバレませんでしたね……」

「まぁ、そこはこの眼鏡のおかげですな。認識変換の魔術がかかっておりますので、角などの魔族的要素をカットしております」


 当然、見た目だけ変えて人間の国を自由に移動できるはずがない。

 各国の要所には魔術探知の法術がかかっているので、魔術を使っていればすぐに魔族だとバレて捕縛される。

 だが、アカネはそんな事がまるでなかったかのように話を進めた。


「ブリテンまで来てもまだ西へ勧むようお導きがあったので、拙はそこでウィーカ様にお願いを申し出たのです」

「お願い?」

「はいです。一目でいいから本物の聖剣を見てみたいと」


 目を輝かせているアカネにルークとセレスティアはお互いの顔を見る。

 どちらも不思議そうに眉をひそめていた。


「なぁ、セレスティア」

「はい」

「セレスティアも魔剣を一度は見てみたいって思ったことあるのか?」

「ありませんよ……。魔剣と言えば、禍々しく、邪悪で、触れるだけで精神を病むと伝えられているくらいですし」

「斯様に伝わっておるのか……。何とも忌々しいのぅ」

「わわ、私が伝えてたわけじゃないですからね!?」


 急にウィーカの方から黒い気配を感じて、セレスティアは跳び退く。

 それを見て、リインフォースがウィーカを指さした。


「アハハハハ!その通りじゃない!堕落のウィーカ!」

「うるさいぞ!寄生虫!」

「「あぁん!?」」


 そんな二人のいつものやり取りが始まったので、ルークが二人の身体に触れる。

 すると、二人の身体が光と闇の粒子に変わって消えた。


「これでちょっとはマシになるだろ」


 聖剣も魔剣も主従の契りは既に完了している。

 その事をアカネから聞いたおかげで、ルークは聖剣の宝珠化と二人がうるさい時に顕現体をそれぞれの宝珠に強制帰還させることが出来るようになったのだ。

 この時ばかりはリインフォースもウィーカも「余計な事を……」と同じようにアカネを睨みつけていた。


「んじゃ、アカネ。続きよろしく」

「はいです」

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