第30話 二振りの心配


 固有領域に飛び込んだ三人はモフッとした柔らかい物に衝突して止まった。


「と、とと止まっ……た?」

「ハハハッ!結構面白かったな!」

「うんうん!もういっかい!」

「あの~……一歩間違うと大惨事になるのであまりしないでください」


 テンションを上げる二人に水を差すように注意するアカネ。

 出入口を開けっぱなしにし、その先に衝撃緩和用の防御魔術を展開。

 三人が飛び込んできた時は、こうなるとわかっていたにもかかわらず驚いた。

 それに三人の身体が防御魔術の外に放り出されそうになったのをなんとか防ぐことができたのも、アカネが術コントロールに長けていたおかげだ。

 加えて、本人も二度目に同じことが出来るとは思っていない。


 防御魔術に絡め捕られた三人は団子状態になりながら、ワイワイとしている。

 そんな姿を見てアカネがため息を吐くと、リインフォースとウィーカが現れた。


「アンタ!ギリッギリだったじゃない!」

「そう怒るな。無事であったのだから良いだろうに」

「だぁかぁら!そうじゃないでしょ!?逃げきれなかったら殺されてるのよ!?それにこのやり方も危なっかしいし!もうちょっと安全性を考えなさい!」


 いきなりうるさくなった事にルークはちょっと顔をしかめつつ立ち上がる。


「悪い悪い」

「ちょっとは悪ぶれなさい」

「うまくいったんだから良いじゃねぇか」

「うまくいかなかったら死んでんのよ。そんな一か八かの賭けに出てんじゃないわよ。街中でのアンタらも能天気だったし!」


 リインフォースは聖剣の宝珠に隠れている間、ずっとヒヤヒヤ・ハラハラしていた。

 というのも街の中を顔も隠さずに歩き回り、道行く人から財布を掏るルーク。

 自分の見た目と喋り方がちょっと周りと違う事に気づいていないアカネ。

 どちらも紙一重で見つからなかっただけにしか思えない。


「相変わらず口やかましく、過保護なことだ」


 そう言うウィーカも少しは心配していた。

 街中を普通に歩き、手に入れたお金を使って平然と食材を買うルーク。

 見覚えのない果物などに対して、店主に質問を投げかけるアカネ。

 どちらも追われている身とは思えない胆力だ。


「だがまぁ、貴様の言うことにも一理ある。主様、そして巫女よ。街中での行動はもう少し慎重に行って欲しい。主様は特に我だけでなく、レオナも悲しむぞ」

「ん」


 レオナの名前が出され、ルークは少しだけ目を伏せる。

 二人の言い分もわかるし、レオナに悲しい想いはさせたくない。

 だからこそルークはゆっくりと頭を下げた。


「悪かった。次からは気を付ける」


 そんなルークの姿にリインフォースとウィーカは顔を綻ばせる。

 しかし、同時にお互いの表情の意味に気づき、ムキになって怒ったような表情に戻したのだった。

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