第6話 混乱


「聖剣って……まさかこの剣のことか?」

「ええ、その通りよ。私はその剣に宿った精霊。神によって造られ、人のために働けと命じられた聖剣の導き手」


 近づこうとしたリインフォースに対し、再び金属音と衝撃が走る。

 そして、ルークとリインフォースの間にレオナが立ちはだかった。


「おカシラにちかづくな」

「あっぶな……。心配しなくても別に危害を加えるつもりは無いわよ。マイマスター、そこのチビを抑えなさい。静かに話も出来やしないじゃない」

「レオ、落ち着け。確かに怪しい奴だが、悪い奴じゃなさそうだ」

「で、でも……」

「大丈夫だから」


 聖剣から手を離してレオナを後ろから抱きしめる。

 レオナは全身に感じるルークの温もりに緊張感を解かされ、逆立った毛が徐々に落ち着いていく。

 そんな状況でも聖剣は相変わらずルークの肌に引っ付いているのだが……。


「これでいいか?」

「ええ。怪しいと言われたのは心外だけど、ありがとうと素直に言っておくわ」


 三人はそのままその場に腰を下ろす。


「んで、お前はえっと……聖剣のせいれーで……なんだよせいれーって」

「せ・い・れ・い。精霊っていうのは、この世界に溢れかえる原初の力と繋がるための存在。そうね陸と陸の間に流れる川を繋げる橋みたいなものよ。それか船を操る船頭ね」

「船を漕ぐオッサン……」

「オッサン呼ばわりはやめなさい」

「はい」


 急に視線が鋭くなったので思わず委縮するルーク。

 同時にレオナが再び牙を剥こうとしていたので、ルークがぎゅっと身体を抱きしめて大人しくさせる。


「ん?じゃあ、何のために現れたんだ?」

「マイマスターに聖剣の主であることを自覚させるため。そして、聖剣の扱い方を教えるためよ」

「急に出てきたのは?」

「聖剣がマイマスターを認証したから。私は聖剣が主を見つけた時にのみ顕現するの」

「聖剣って確か選ばれた奴にしか抜けないって言われてんだけど……。んで、オレ抜いてないんだけど」

「その認識は間違いよ。選ばれた者にしか聖剣としての役目を果たせないだけ。貴方でなければ剣としての役割は果たせない。他の人間だと良くてただの軽い棒きれよ」


 リインフォースの言葉に嘘は無いように思える。

 しかし、ルークは未だに目の前で起こっている事実を飲み込めなかった。


「まさか……こんな事になっているとは」


 突如、聞こえてきた声に三人が反応し、事態はさらなる混乱へと突入する。

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