第5話 リインフォース
突然聞こえてきた声。
それと同時に焚き火の前に銀髪の少女が現れた。
いつの間にか……音もなく現れた少女は涼し気な色合いの神官服に身を包み、高貴さ漂う佇まいでルークを見上げている。
身長や面立ちから推察するにレオナとあまり変わらない年頃。
しかし、その蒼く鋭い目つきと感情の読めない表情にはどこか老獪さが感じられた。
「……誰だ?」
息を呑んで問うたルークに対し、銀髪の少女は口元を神官服の袖で隠しつつゆっくりと口角を上げる。
「誰だとは随分なご挨拶ね」
妖艶さを孕むその笑みは一瞬でルークの警戒心に火を点けた。
そして、同時にレオナが動いた。
「レオ!やめろ!!!」
咄嗟にルークが声を出すが、間に合わずにレオナの握りしめたダガーが銀髪の少女の首の後ろに突き立てられる。
血飛沫さえ舞ったように思えたその一撃は“ガキィィィイン”という金属同士の衝突音にて阻まれた。
「「ッ!?」」
ルークとレオナは同時に銀髪の少女から距離を取る。
「あらあら、いきなり攻撃を仕掛けておいて一方的に警戒されるなんて。そもそもアナタ、後ろの獣にどういう教育を施してるの?」
「レオナは獣じゃねぇ」
「初対面の相手に突然牙を振り下ろすだなんて獣と同じでしょう。あぁ、そういえば人間も獣の一つだったわね。下手に分けるような事をしてゴメンなさい」
銀髪の少女はうやうやしく頭を下げる。
ルークはその行動にさえ、警戒心を解けない。
「質問に答えろ。お前はナニモンだ」
一貫して正体を問うルークの態度に銀髪の少女は溜息を吐く。
「本当にわかっていないの?未だに私をその両手で強く握りしめておいて……酷い話ね」
銀髪の少女の言葉と指さす先にある物を見てルークは戸惑う。
指の先にあるのはルークが握りしめている剣。
そして同時に、彼女の見た目がこの装飾剣に似ていると気づかされる。
「あら?ようやく気付いた?」
そう言って嬉しそうに笑む姿はレオナとほとんど変わらない。
銀髪の少女はそのままスカートの端をつまみ、優雅に頭を下げる。
「改めてご挨拶を“マイマスター”」
スッと上げた顔にはどこか寂しさが滲んでいる。
まるで出会った頃のレオナような表情だ。
無理をして微笑んでいるような……そうでもしないと受け入れてもらえないと分かっているような表情。
「私の名前は【リインフォース】。巷では、聖剣・リインフォースと呼ばれているわ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます