第8話 エレイナ聖堂


「ようこそ。ここがエレイナ聖堂だ」


 セレスティアに案内され、三人は裏口からエレイナ聖堂に足を踏み入れた。

 夕刻の日の光が聖堂内に降り注ぎ、厳かな雰囲気を和らげている。


「はぁ~、随分とデカイ所なんだな」

「最大1,000人が同時に礼拝を行える場だからな」

「マジかぁ」


 ルークが感心していると、リインフォースが袖を引く。


「どうした?」

「随分と素直について来たけど、あの子大丈夫なの?」

「あん?」

「もう少し疑うって事を知らないと苦労しそうだって言いたいんだけど」

「あ?あぁ……大丈夫だよ。少なくともこの場で襲われるなんてことはねぇ」


 ルークがセレスティアの申し出を二つ返事で受けたのにも理由はある。

 一つは殺すのが目的ならあの場でやればいい話だった事。

 わざわざこんな綺麗な所、しかもそれなりに部外者のいる所に連れてきたのであれば、その線はだいぶ薄れる。


「確かにね。殺すのであれば下水道でやってしまった方が後片付けも楽になる。今の私にルークたちを殺すつもりは無いよ」


 二つ目の理由はルークの声を聞いて同意してきたセレスティア本人だ。

 なんというか、彼女は騙すよりも騙される側にしか見えなかった。

 三つ目を加えるなら仮に騙されたんだとしても、レオナ共々逃げ切れる自信があるから。

 盗賊団から逃げ延びた二人の逃走スキルはかなり高い。


「んで、こんなところで何するつもりだ?変な事すりゃ逃げるぞ」


 ルークの言葉にセレスティアは苦笑する。


「待ってくれ。枢機卿(カーディナル)か、できれば大司教(アーチビショップ)にも挨拶をして欲しいんだ」

「堅苦しいのは無理だぞ」

「偉そうな法衣を着ている人間が現れたら、膝をついて頭を下げるだけだ。簡単だろ?」


 教会に属する人間がその物言いでいいのか?と疑問を持ったが、ルークは軽く笑うだけに留めた。


「確かに簡単だな」

「少し待っててくれ。探してくる」

「おう。適当にブラブラしてるよ」


 セレスティアが奥へと走っていき、三人が取り残される。

 ルークの背中にはセレスティアの持っていた布で覆い隠された聖剣がくっついている。

 そして、ルークの左側の手にしがみついているのはフードで頭を隠したレオナ。

 逆の手にしがみついているのはリインフォース。

 二人の少女のおかげでボロ切れを身に付けたルークも少しだけ不審者感が減っていた。


「つっても、何を見ようかね」


 ふと、視線を動かした先には話題の中心たる聖剣があった。

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