第20話 アカネの目的
「次はアカネだ」
「はい?」
「お前、魔族なんだろ?そもそもなにしにここまで来たんだ?」
今更ではあるが、彼女がなぜ人族領の中でも最も危険な場所に潜伏していたのかわかっていない。
そしてその事に気づいたのは街を守っていたセレスティアよりもルークの方が早かった。
表面には辛うじて出さなかったが、セレスティアはちょっと自己嫌悪に陥った。
「拙は魔剣の精霊の声を伝える巫女ですので」
「いや、それは聞いた」
「ですので、ウィーカ様のお導きでここまで来たのです」
「そのお導きってのはなんなんだ?」
「魔剣の主を探す事ですな」
そう……アカネの旅の目的は魔剣の主を探す事。
魔剣に誘われるがままに旅をし、いつの間にか人族領へと入り込んでいたのだ。
「じゃあ、オレが見つかった後はどうすんだ?そのまま人族のトコにいるわけじゃないだろ?」
ルークはアカネにこそ一縷の希望を託していた。
どうせこのまま逃げ続けるのであれば、“魔族領に移動した方が安全”と考える思考は正しい。
しかし、その希望はアカネの言葉によって無残に打ち砕かれる。
「いやぁ、魔族領に戻るつもりだったのですがやめました」
「「え?」」
ルークとセレスティアは同時に声を上げる。
「なんでやめたんだ?」
「何でと言われましても……。ルークさんがただの魔剣の主であれば問題ありませんでしたが」
「でも、ルークは魔剣の主ですよ?」
「はいです。そして、聖剣の主でもあります」
アカネの言わんとすることが分からない二人は同時に首を傾げる。
なので、アカネが説明責任を果たすべく口を開いた。
「普通にルーク殿が魔剣の主であればなんの問題もありませんでした。ですが、今から魔族領に戻った場合、ルーク殿は聖剣も持っていく事になります。どんなに隠して生活しても、いずれは聖剣の存在に気づかれるでしょう」
そこでセレスティアがハッとする。
未だルークは首を傾げているが……。
「歴史的に見て、聖剣の主および魔剣の主が生まれた時代には必ず人族と魔族の間で大きな戦が行われていました。そして、今回は聖剣を携えた魔剣の主が生まれている」
「つまり戦は起きないって事か」
「はいです。その魔剣の主を殺してしまえば戦は起きません」
「ん?なんでオレが殺されるんだ?」
「ルーク殿は魔族と敵対関係にある人族ですからな。魔族側に引き込むよりも今回の魔剣の主を殺してしまい、一緒に持ってきてくれた聖剣を壊すか厳重に封印した方が旨みがあります」
ルークには理解が出来ていないが、セレスティアはきちんと理解できたようで顔を青くしていた。
同時に聖剣の主を始末する事で大戦は起きず、次回の魔剣の主が生まれた際には魔族側が一方的に優位に立てるのだ。
「ですので、拙は魔族領に戻る予定はございません」
「「ん?」」
そんなアカネの言葉に二人は再度首を傾げた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます