第22話 じぶんの
レオナの朝は早い。
誰よりも早く寝ているという事を差し置いても、盗賊団にいる時から目覚めは早かった。
意識が覚醒するといつものように大きく息を吸い込む。
胸いっぱいにホッとする薫りを溜め込み、息を吐きだすと言葉には表せない幸福感に包まれる。
目の前にある身体に自分の身をギュッと寄せると、肌と肌が触れた部分がむず痒くなり徐々に熱を持つ。
心も身体もポカポカとしてくると、目を開いて彼の寝顔を見つめる。
それがレオナの朝のルーティン。
ずっとずっと変わらなかったレオナの至福の時である。
「ッ!!!???」
しかし、この日は状況が少し違った。
鼻が、耳が、肌が感じる見知らぬ者達の存在。
直感的にそれらを敵と断定し、レオナの意識は急速に覚醒する。
レオナは勢いよく体を起こすと、眼前で自分たちを見つめる八つの目に驚いた。
「ふにゃっ!?」
「「「「かわいい~(のぅ)」」」」
そんな声にルークも目を覚ます。
「んあ……。ふぁ~~…。ん~、レオどうした?」
「おカシラ、これ、だれ?」
「んー?」
目をこすりながらルークは体を起こす。
そして、暗闇の中に光る八つの目に気づいた。
「あぁ、暗くて見づらいだろうけど一番左がリインフォース。次がセレスティア。その隣は昨日助けてくれたアカネで、一番右が魔剣の精霊ウィーカだ」
一息で説明を終えるとルークは大きなあくびをかく。
「どこ?ここ?」
レオナはそこでようやく自分のいる場所が光の無い暗い空間だと気づいたらしい。
不安そうにルークにしがみつき、体を震わせる。
そんな彼女の不安を拭い去ろうと、アカネが声を出す。
「ここは拙の固有領域です」
「それのおかげもあって昨日は逃げきれたんだ。今は聖都の外に出て2~3時間くらい歩いたところだな」
二人の説明は絶望的に足りていない。
ルークは昨晩の移動中に聞いたいろいろをレオナは知らないのだ。
「おカシラはわたさない!」
敵か味方か……、いや一方的に目の前の四人を敵と認識してレオナは全身で威嚇を始める。
そんな行動さえ四人からすると微笑ましくて可愛らしいモノなのだが……。
さらに言うと、ルークもレオナの行動を勘違いして彼女の身体を優しく抱き寄せた。
「大丈夫だぞ~、悪い奴らじゃないからな~」
急に嬉しい事をされて戸惑うレオナ。
だが、目の前でニマニマと笑みを浮かべる四人に見られているのは顔から火が出そうになるほど恥ずかしかった。
「ニャァァァ!!!フシャァァァ!!!」
結局、混乱がピークに達したレオナはルークの膝の上を飛びおりて威嚇をし続けるのだった。
ずっと自分だけのおカシラだったのに……。
そんな風に呟いた自分の心の根底にあるものを、レオナ自身まだ自覚していない。
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