第15話 ウィーカ
「魔剣って……グリップも刀身もなんもないけど?」
「今は休眠中ですので、そのような形になっております。しかし、然るべき者の手に渡れば、真実の姿に戻ると伝えられております」
「へぇ」
ルークはアカネの言葉を適当に聞き流しながら、宝石をマジマジと観察する。
魔族特有の装飾模様なのかこの辺ではお目に掛かれない唐草模様に目を惹かれ、心の中で値段を付けていた。
すると、横で静かにしていたリインフォースがルークの腰に抱き着く。
「そんな汚らわしいモノは捨てましょうマイマスター。マイマスターには私がいるでしょう?正直、他の女に浮気するのはやめてもらいたいのだけれど」
「いや、どっちかって言うとお前もどうにかして捨てたいんだけど」
「酷い!?あんなに強く握りしめてくれたのに……。あの時の強い抱擁は遊びだったって言うの!?」
「まぁ、遊びだったことは否定しない」
「酷い!?」
そんなコントをやっていると、どこからともなく別の声が聞こえてきた。
「相変わらず五月蠅いのぅ」
「あぁん?」
その声にいち早く反応したのはリインフォース。
そして次にアカネがルークへと頭を下げる。
一番近くでその声を聞いていたはずのルークは声がどこから聞こえているのか分かっていないようにキョロキョロと顔を動かしていた。
「此度の主様は不思議じゃのぅ。まさか五月蠅いじゃじゃ馬にまで好かれているとは」
声が止むと同時に、宝石から黒い光が溢れ出す。
黒い光は徐々に形を成し、その姿を禍々しい雰囲気漂う刀へと変わっていく。
黒い光が徐々に収まると、ルークの左手に一振りの刀が握られていた。
その刀は刀身が全て黒く、柄は赤黒い蛇柄。鍔のすぐ上、刀身の中には先ほどまでルークが握っていた黒紫色の宝石が埋まっている。
そして、ルークの目の前には黒髪の姫君が立っていた。
豪華絢爛な十二単を身に纏い、髪は綺麗に結われ、簪でピシッと留められている。
面立ちはこの中で最も凛々しいが、その瞳は優しき母のように穏やかだった。
「お初にお目にかかる当代魔剣の主様。我が名は魔剣ウィーカ。そこの自己中心的ななまくらとは違い、主を導く良妻よ」
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