第12話 闇に誘う手


「クッソ、マジでしつこいなぁ」

「面白いわねぇ今の人族って。なんで聖剣の主を追っかけまわしてるのかしら?今まであれだけおんぶに抱っこで縋ってきてたのに不思議ねぇ。もしかして、私の不興を買っても問題ないと思ってる?それとも魔族はもう攻めてこないとでも思ってるのかしら?煮え湯を飲まされてるのはいつも向こうだったって言うのに、泣きつく相手を怒らせるだなんておかしな話よね?」

「んなこと知るか!っておい!今飛び乗っただろ!?レオの上にさらに乗っかっただろ!?」


 レオナ(+リインフォース)を背負って夜の街中を縦横無尽に走るルーク。

 その横にはまだセレスティアの姿があり、ルークの高低差も含めた移動に付いて来ている。それも鎧を着けたまま。

 結構な体力オバケである。


「これからどうするつもりなんですか?ハァハァ、このまま逃げても街の中だといずれ捕まっちゃいますよ!?」

「どうすっかなぁ……」


 このまま暗闇の中を逃げ続けるのは体力的にもキツイ。

 しかし、徐々に探す人の手が増えているのか、遭遇率も上がっている。

 今まで戦闘に発展していないのは、レオナの頑張りによるところが大きい。


 ルークが少し隠れられるポイントを見つけて入り込むと、セレスティアがそれに続いた。


「ふぅ……セレスティアは体力的にどんなもんだ?」

「これでもけっこう疲れてます。あと2~3時間くらいしか走れません」

「……十分すぎるな」


 本当に体力オバケである。


「ルークさんはどうなんですか?レオナちゃんとリインフォースちゃんを背負ったままで」

「レオは元々心配になるくらい軽いから問題ない。んで、リインフォースは思ってたよりも重くないから楽勝」

「まぁね。これでも羽より軽い女を目指してるの」

「お前、剣のくせに何言ってんだ」


 レオナは兵士や騎士に遭遇するたびに術を使っていた影響で今はお眠タイム。

 一度、眠ってしまうと朝まで起きてこないため、四人は朝まで逃げ続けなければならない。

 ルークは息を整えつつ、どうやって逃げ切るかを考え始める。


「もし」


 急に暗闇の中から人の声がし、ルークとセレスティアは咄嗟に距離を開ける。


「追いかけられているのでしたら、こちらに」


 闇の中の住人は未だにその姿を見せない。


「お前誰だ?なんでオレらを助けようとする?」

「お導きによるモノです。拙はこの身に預けられたモノを守り、未だ見ぬ御方に届ける巫女にございます。拙の言葉を信じて頂けるのならこの暗闇に飛び込んでください」


 ルークとセレスティアはお互いの顔を見やり、どうするか考える。


「なぁんか、気に食わない匂いがするわね。アナタ……もしかして魔族なんじゃないの?」


 リインフォースの言葉にセレスティアの身が強張る。

 聖都の街中に魔族がいるという事実は衝撃的だ。それがこの街を守っていた騎士であるならなおさらの事。


「どう……されますか?」


 暗闇の中の住人はリインフォースの言葉を無視したように再度、問いかける。


「なぁ、魔族だとマズいのか?」

「魔族は人類の敵です」

「と言うよりも、個人的に気に食わないのよね」


 すると、兵士の足音が徐々に近づいてくることに気づいた。

 ルークはそのまま暗闇へと近づく。


「悪いが世話になる。ただ、戦うつもりなら容赦しないぞ」

「ご安心を。拙に戦闘能力はございませんので」


 ルークに続き、リインフォースとセレスティアも暗闇へと足を進める。

 そのまま四人は誘われるままに闇の中へと消えていった。

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