第25話 重要な装備
革製品と言うのは思っている以上に丈夫なモノだ。
特に何枚も重ねて作られた革の鎧などは比較的安価に買える防具であり、板金鎧よりも軽い。
そして、防御力もそれなりに期待できるため、庶民にとってはありがたい装備品だ。
ただし、セレスティアにとってはそれ以上の価値がある。
「そりゃあ良いが……。その様子だとすぐに騎士団に戻る気はないって感じか?」
「えと……そうですね」
目を逸らし、気まずそうに答えるセレスティアを見て、ミロリーはフォグの背中を叩く。
「なんか事情でもあんだろ。それにここまで来るのも大変だったはずだしね」
「確かにな……。この街はお前さんを知っている奴が多い。っつか、よく無事だったな」
「あ、えっと……」
紹介していいのかと不安になりながらも入り口付近に顔を向ける。
すると、ため息を吐きながらレオナが姿を現した。
「はやくして。あまりじかんもない」
「これまた可愛らしい子が出て来たねぇ」
ミロリーの言葉にフォグも頷いた。
今まで気配すらなかったレオナ。
一昨日までのボロ着から一変。今は胸部と下腹部のみを隠す衣服を着ている状態。
元々、あまり衣服を着る事が好きではないので、露出が多めだが亜人ではよくある格好である。
「もしかして、指名手配されてる亜人ってのはお前さんか?」
レオナはフォグの言葉に静かに頷く。
「セレスティア。よーけんすませたらかえる。あんまりのんびりしてると、またおいかけられる」
「あ、はい!あ、なのでちょっとお急ぎでお願いしたいんですけど」
切羽詰まったようなセレスティアの言葉に二人はニカッと笑った。
「まぁいいさ。ここだけの話。この辺の奴らはみんなお前さんが犯人だなんて思ってもいない。どうせまた厄介ごとに巻き込まれただけだってな」
これもセレスティアの人徳……普段の行いが為せる技だ。
まぁ、こればっかりは他の人族には参考にもならないが……。
「ありがとうございます」
「どうケリをつけるのかは知らねぇが、うまくやれよ」
「……はい」
武器屋の二人がやろうとしている事は犯人の逃亡を促すような行為そのものであり、明確に犯罪行為だ。
それでも彼らはセレスティアのためにと腹を括っていた。
「はやく」
「あ、そうでした。お金は足りると思うんですけど、どのくらいで出来ますか?」
「そうだなぁ……。材料は余ってるが作るのが特注だから最速でも明日になる。できるよな?」
「まぁね。セレナのためなら大急ぎでこさえるよ。あ、サイズは昔のままでいいのかい?」
ミロリーの何気ない言葉にセレスティアは顔を逸らす。
そして、ちょっと恥ずかしそうに告白した。
「ちょっと……大きくなりました」
「あらら、そりゃ大変だ。前のヤツでキツく感じたのかい?」
「はい……ちょっと!ちょっとなんですよ!」
「わぁたって。サイズは測り直さないとダメだねぇ。それじゃあ、奥おいで。さっさと測っちゃおう」
「あ、お願いします!」
セレスティアは小走りで店の奥へと進み、途中で止まってレオナの方へと振り返る。
「もうちょっとだけ待っててください」
そんな彼女を見つつ、レオナはため息を吐くのだった。
なんであんな女のためにこんな事をしているのか……。
その疑問に答えてくれる男は、今はそばに居ない。
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