第24話 武器屋へ


 ルークとアカネが食材の調達をしている頃、セレスティアとレオナはお手手を繋いで街中を歩いていた。

 その姿はさながら親子のようでもあり、トコトコと急ぎ足で先導しているレオナがとても愛らしい。


「かわっ……」


 にやけ顔を手で隠しているセレスティア。

 本来なら先導すべきなのは自分なのだが、今目の前に広がる光景を少しでも目に焼き付けようと少しばかり歩く速度を落としていた。


「ねぇ。もくてきち、どこ?」

「あ、このまま真っすぐで左手に青い盾と剣の看板があるお店です」

「ん」

「あ、ここです」


 急に手を引かれ、後ろに倒れそうになるレオナ。

 しかし、セレスティアのお腹に後頭部が当たり、倒れることは無かった。


「はぁ~……癒し」

「む……はやくようじすませて」

「あ、そうですね。レオナちゃん疲れますもんね」

「つかれないもん!」


 可愛らしい少女の意地っ張りな叫びに癒されつつ、セレスティアは馴染みの店の扉を開けた。


「いらっしゃ……ん?」


 カウンターのところにいた屈強な体格の主人は入り口付近を見て眉をひそめる。

 目を凝らしても閉まるドアの近くに人の影が見えない。

 誰かの悪戯かと思いカウンターから出ようと歩き出す。


「あ、お久しぶりです。フォグさん」

「え?あ、は!?」


 急に目の前に現れたセレスティアにフォグは目を丸くする。

 そして、店の奥の方に顔を向けると、小さな声で叫んだ。


「おぉーい。セレナが来たぞー」

「はぁ!?」


 奥からやってきたのはエプロン姿の恰幅の良い女性。

 セレスティアを見てホッとしたような表情になり、カウンターの奥からセレスティア目がけて駆けだす。そして、ギュゥッとセレスティアを抱きしめた。


「無事だったんだね」

「あ、あのあのあのミロリーさん!?はさみ!はさみ危ないですって!一旦置きましょう!?」

「ん?ああ。作業中だったからね」


 ミロリーははさみをカウンターへと置き、先ほどと同様にセレスティアに抱き着いた。


「ホント無事でよかったよ」

「ご心配をおかけしました」

「なぁセレナ。一体、なにがどうなってんだ?一昨日くらいに騎士団の奴らが来てお前を探してたし、次の日には街中にお前の似顔絵が貼り出されるしで」

「アハハ……実はですね」


 セレスティアはお世話になっていた武器屋の夫婦に事情を話す。

 すると、二人は不思議そうに互いの顔をみやった。


「一昨日の騎士団の奴らは聖剣の主が抜いた剣をお前とその仲間が奪って逃げたって言ってたぞ?」

「えぇ!?」

「それに聖剣の主は別で探している最中だって言ってたしねぇ」

「んんん?え?どういうことなんでしょう?」

「いや、俺らが知るかよ」


 事情をよく知らない者同士が首を傾げ合う。

 しかし、フォグはニカッと笑みを浮かべてセレスティアの肩を叩いた。


「まぁでも、誤解ってんならよかったよ。お前さんが盗みを働くなんて想像もつかなかったしな」

「確かにねぇ……。ま、清廉潔白と言うよりは小心者ってイメージだけど」

「「アハハハハ!!」」

「あはははは……」


 二人の笑い声に同調するだけのセレスティア。

 まさかこの三日間で衣類から食材まで様々なものを盗む手伝いをしたとは口が裂けても言えなかった。


「で、そんな逃亡犯がなんの用で来たんだ?」


 フォグの笑顔にちょっと心を痛めつつ、セレスティアは持っていた分のお金を全てカウンターの上に置いて頭を下げた。


「革の胸当てを作ってください」

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