第43話 セレスティアから見たもの
ここ三日間、セレスティアは三人への基本的な近接戦闘指導を一手に担っていた。
戦闘のプロでもある彼女の目から見ると、今の仲間である三人はわかりやすくタイプが異なる。
アカネは典型的な術師タイプ。
運動音痴気味だが、長旅のおかげか基礎体力はある。
【鉄扇術】という魔族特有の戦闘方法を取るため具体的な指示は出来ないが、身を護る術の向上のため、実戦訓練を主として鍛えている。
レオナは速度重視の近接戦闘タイプ。
亜人特有の高い身体能力を有するものの、まだ9歳(正確な年齢は不明)ということもあり基礎体力強化を優先している。
後はナイフ術の基本的な動きの反復練習だ。
というのも、レオナは速度を生かした“特攻体当たり刺突”というかなりリスキーな技しかまともに使えなかったので打ち込みなどの実戦訓練よりも静止状態でのナイフの扱い方を教えた方が良いという考え。
最後にルーク。
剣の扱いは盗賊たちとの戦闘で見ていた通りにシロウト。
ナイフでの戦い方も対人戦と言うよりは暗殺に近い扱い方を覚えていた。
そして、一番信じられないのは……。
「ガぁぁぁ!できねぇ!」
未だに一個目のキューブに苦戦しているルーク。彼が“法術を扱えない”という事実だ。
最初に町を逃げ回っていた時も、自分を抱えて街門を抜けた時も“法術を使わず”に逃げきったのだ。
確かに法力を纏うだけでも《身体強化(パワード)》に近い効力は発揮できる。
でも、その強化率は当然雲泥の差があり、法力だけで人を一人抱えて逃げる事ができるほど身体能力を強化することは無いという認識がある。
それと同時に……。
「セレスティア!剣、剣の訓練しよう!体動かしてすっきりしたい」
「あ、はい」
昨日から始めた剣の実戦訓練。
剣術の“け”の字も知らなかったはずのルークはたった一日でセレスティアの動きについて来ていた。
剣を腕で振るうようなシロウト臭さは既に影を潜め、全身を使って剣を振り抜き、その初動を限りなく消そうと努力している。
正直言って、この上達速度は異常だった。
それなのにも関わらず……。
「アンタね……一個目のキューブに一体何日かけるつもりよ」
剣の訓練後、バテバテになって地面に倒れ込んだルークをリインフォースが見下す。
そんなリインフォースに対してルークは顔を逸らし、口を尖らせた。
「全然わからん。ムズイ。ヒントよこせ」
「ヒントをあげるレベルじゃないのよ!」
言い合う二人を横目に見ながら、セレスティアは首を傾げる。
リインフォースの口ぶりから察するに一個目のキューブはそれほど難しくないはず。
そんな簡単そうに見えるものを彼ができないのは何故なんだろう……と。
法術が使えない事と何か関係があるのか?
それとも別の要因があるのか……。
なんにせよ彼が今のままでゾディアル盗賊団を率いていたとはどうしても信じられなかった。
ルークの持つちぐはぐな強さ。
それにいち早く気づいたセレスティアだったが、この場でその事実を口に出すことは無かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます