第46話 魔剣の試し


 聖剣の覚醒が成った後、次は魔剣の試しへと移ろうとしていた。


「では、ウィーカ様をお返ししますね」


 ルークはアカネから魔剣の宝珠を受け取り、魔剣の形態へと変化させる。

 しかし……リインフォースは顕現したまま文句を垂れている。


「いや、要らないでしょ。アタシがいるわけだし、コイツは人間だし。魔剣の覚醒だなんてそういうのは寿命を迎える寸前くらいでいいんじゃないかしら?」

「随分と自分に都合の良い事ばかり吠えるのぅ。ははは!我の覚醒が成されれば貴様など用済みになるとわかっておるようじゃな」

「あぁん!?」

「やるかのぅ?」


 そんな二人のやり取りを白い目で見つつ、ルークは聖剣を宝珠形態に変化させてリインフォースを宝珠の中に仕舞い込む。


「ちょっと大人しくしててくれよ」


 ルークの頭の中ではリインフォースが抗議をしている。

 耳からではなく、頭の中が直接五月蠅くなるという感覚にはルークもまだ慣れておらず、文字通りに頭を抱えた。


「大丈夫かの?主様」

「まぁ……。これも慣れるしかないんだろうしな。んで?魔剣の試しってのは何をやるんだ?」


 ルークはそこで一つ気が付く。


「なぁ、ウィーカ」

「なんじゃ?主様よ」

「オレ、魔力って持ってないけどその魔剣の試しってできるのか?」


 聖剣の試しには“法力”が必要だった。

 それを考えると似たような兵器であるウィーカも“魔力”が必要に思える。

 しかし、ウィーカは余裕の笑みを浮かべた。


「よいよい。そもそも我は持ち主の魔力の多寡なんぞ気にするような女ではない」

「タカ?」

「我を扱う時に魔力量が多いか少ないかは関係ないのじゃ」

「なるほど」


 とは言っても、ルークは人族であるがゆえに“魔力0”。

 そんな人族が魔剣を扱えるとは到底思えない。


「さて、では主様よ」

「おう」

「そこに座るのじゃ」

「おう?」


 首を傾げつつも、地面に座り込み膝の上に魔剣を乗せる。


「巫女よ。黒板を」

「はいです。こちらに」


 アカネがウィーカに手渡したのはA3サイズのミニ黒板と白いチョーク。

 魔族の学校でも用いられる筆記用具だ。


「さて、まずは……」


 ウィーカはそのまま黒板にチョークで文字を書き始める。

 その姿を見ながらルークは頭の上で多数の“?”を躍らせていた。

 そして、黒板の中身が文字と絵で埋まった後、ウィーカは黒板を背に隠し、ルークを見下ろした。


「準備は良いかのぅ?主様」

「え?あ、うん?大丈夫」

「ふむ。ゴホン……」


 ウィーカは少し俯いて咳払い。

 すると次の瞬間、満面の笑みを浮かべ、黒板をルークの目の前に突きだす。


「ババーン!魔剣ウィーカの誰でも扱える魔剣講座~」

「わぁ~~!」


 アカネによる合いの手が森の中に空しく消え去る。

 ルークは見たこともない字を見つめ、途方に暮れていた。

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