第52話 聖女を探して
エクリュベージュがゴルディウスと駆け引きを行っている頃、ルークたち(セレスティア除く)は街の倉庫街にいた。
セレスティア捜索のための巡回騎士はほとんど減っており、初期に比べれば動きやすくなっていた。
「んじゃ、各自買い出し頼んだぞ」
「「おー!!」」
レオナとアカネが元気よく手を挙げて、三人はそれぞれ別の方へと歩き出す。
レオナはフォグの店に武器の手入れを依頼しに。
アカネはセレスティアが加工した毛皮や牙の納品。
その後、二人は合流して食材をの調達へと移行する予定だ。
そしてルークはリインフォースの願いで聖女を探すことになっている。
腹に聖剣と魔剣の宝珠をくっつけながら、街中を練り歩いていた。
「んで、聖女ってのはどこにいんだ?」
「んー……まだ教会の方ね。これだけ近くに来れば向こうから来てくれるはずだけど……」
「そもそも聖剣が覚醒した時点で飛んでくるって言ってたのに、ぜんぜん来なかったからな」
「愛想を尽かされたのではないか?」
「あぁん?ンなわけないでしょ」
「どっちでもいいけどどうすんだ?いる場所が分かってても合流すんのは無理だぞ」
「んー……」
リインフォースは唸るだけで良い考えが浮かんでこない。
そのまま街中をあてもなく歩いていると、向こう側が動き始める。
「あ!移動してる!」
「どこへ?」
「こっちに向かってきてるわ」
「目印っぽいのあるか?」
そう言うとルークはお腹にくっつけていた聖剣の宝珠を手に握りしめる。
「めちゃくちゃ美人よ」
「おい」
「大丈夫。それだけで絶対にわかるから」
「んな事あんのかよ……」
ルークは半信半疑だったが、十数分後にリインフォースの言っていた意味を理解した。
町娘のような服装だが何やら光って見える。
周りの人はまったく気にしている様子が無いのが逆にルークには信じられなかった。
「アンタ、どうやってあの子と接触するつもりなの?」
「色々と面倒なのもいるからなぁ」
「見張り……かのぅ」
「護衛の方よ。やっぱり教会はあの子を一人にするなんてバカな真似はしないわよねぇ」
リインフォースが一番危惧していたのはこの護衛。
聖女の護衛は十中八九金剛騎士団が務める。
この金剛騎士団の戦闘力は覚醒を終えたルークでも歯が立たないだろう。
「ま、どうにかなるさ」
「どうにかすんのよ」
「だから、どうにかなるんだって」
「は?」
「主様には考えがあるようじゃのぅ」
「まぁな」
と、ルークは自然に聖女とすれ違う。
この時点では接触せず、なにやらポケットから紙を取り出した。
「っと」
何かに気づいたような声を出し、くるりと反転。
その後は紙をポケットにしまい込んで聖女の後ろを付いて行った。
数分後、聖女が少年とぶつかり軽く声を上げた。
「きゃっ!」
「わりッ!」
その少年が自分のポケットに盗んだものを無造作に突っ込む。
それを見てルークは心の中でニヤリと笑みを浮かべて少年から金袋を盗んだ。
「アンタ……」
「昔っからこういうのは上手いんだよ。後は頼んだぞ。合流場所まで連れてくんのはお前の役目だ」
盗んだ袋の中に入ったリインフォースはルークの言葉に変な頼もしさを感じた。
あまり頼られるのが好きな方ではないリインフォースだが、この時ばかりは胸の底に熱い感情が沸き上がっていた。
「任せなさい」
これは長年争い合ってきたウィーカにとって信じられない言葉だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます