第30話 エルフ化

ダンジョンを攻略して翌日のことだ。

ふとステータスを覗いてみたら、明らかに見慣れないものが増えていた。


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アキラ・イソガイ

<スキル>

転移LV35

即時転移 new!

入れ替え

強制召喚 new!


<転移先>

1_地球

2_惑星クラセリア(スキル獲得)

3_惑星エムベス(ダンジョン)


<固有能力>

ルーム作製【30】

設定追加枠【3】

長寿 new!

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あっれー?

転移の足枷であるクールタイムが消えてるぞ?

それと色々スキルが増えてる。

強制召喚に長寿?


全くもって身に覚えしかないけど、もしかしなくても千年樹の実を食ったのがマズかったのか?

でもみんなで分けたし、ちょっとしか口に入れてないんだが?


そしてなんか耳のあたりに違和感があった。

こう……横に長い様な。気のせいだよなと思いつつ、朝食を食いにキッチンに行くとかーちゃんから「あら、イメチェン? 今時はつけ耳なんてものがあるのねー」なんて言われた。


俺は居ても立っても居られず、洗面所へ。そして、


「なんっっじゃこりゃああああ!!!」


耳が、俺の人間を象徴する丸い耳がなんか長くなってるー!?

これじゃあエルフか何かだ。

ベジタリアンになった覚えはないぞ?

その上少し肌艶も良くなり、髪もサラサラになった気がする。

誰だこれ? 間違いなく俺の顔ではない。

だがかーちゃんは俺だと認識している。


「おう、章。今時の高校生はヘアカラーしても大丈夫になったのか? そんなに脱色して。一瞬誰かと思ったぞ?」


とーちゃんまでもが俺を俺と認識しつつも、異変を知覚している。

もしかしてこれ、俺以外のみんなもか?


俺はさっそく朝食を平げ、教室まで転移!

すると笹島さんが泣きついてきたではないか!


「どうしよう、磯っち〜〜」


あらかわいい。

俺と違って顔面偏差値の高い笹島さんはなんともまあ美少女に生まれ変わっていた。俺もその特徴的な口調でなければ認識できないほどの変貌ぶり。


城島さんもクール度がマシマシで、姫路さんは壁の花になりきれずに本のページに顔を埋めている。

唯一普段と変わらないのが吉田さん。男子からの視線には慣れっこと言いたげだ。

岡戸、伊藤、田所、麻生に至ってはイケメン度が増していた。

こいつらは初めからモテてたからこれ以上進化しなくていいのにさ。


その中で俺だけが微妙に浮いているのだ。

いや、浮いているのは厳密にはもう一人いる。


「よーし、お前ら席に着けー。ホームルーム始めんぞー」


担任の桂木先生がエルフにしてはらしくない胡散臭さを醸し出す。

当然、クラス一のパパラッチ木村が何事だと食ってかかった。


「先生! それに他の奴らもまとめてイメチェンですかー?」

「ダンジョンをクリアするとな、寿命が伸びるらしいんだ。それによって俺たちはこんな形になったんだ。質問は以上か? では出欠をとるぞー」


既に説明理由は考えてきてあった様だ。

木村に対して憮然な態度を取る先生。

金髪碧眼になったからか若干男前に見える。

俺もそうなのだが、周囲からは一際浮いている。


似合うか似合わないかで言えば似合わないのだ。

くそ、生まれ持った顔面の出来はどうにもならないのかよ!


ホームルームが終わり、授業が始まる前。

それとなく集まって見た目以上にスキルに変化があったかの報告をしあう。


やはり俺以外にも変化があった様だ。


「磯貝は即時転移か。無茶振りが増えるんじゃないか?」

「クールタイムがないからそこはどうとでもなるよ。それより岡戸のスキル威力上昇、上位属性獲得もやばそうじゃん?」


俺の心配をする前に、六属性が十二属性に増えた岡戸の心配をする。

ただでさえ細かく、扱いきれてない属性魔法が増えたのだ。


「俺は逆にスキル発動前の硬直がなくなってようやく使いやすくなったな」とは伊藤の言。今ん所盾役としか活躍してないので面目躍如と言ったところか。


「俺は使役出来るのがドラゴン以外も選べるようになった」

「田所……お前、竜騎士辞めるのか?」

「バディの他に使役できるようになったんだよ。半分テイマーみたいな感じだな」


田所も満更でもなさそうだ。

現状ただの槍使いが、テイマーもどきになったのだ。

それでいいのか、お前?

竜騎士としてのプライドはねーのかよ。


麻生はジョブそのものが変わってプラントナイトに。

今まで扱えていた炎のエンチャントが植物系に置き換わっただけだ。

代わりに森やダンジョン内での戦闘に貢献しやすくなったと喜んでる。生やした植物で縛りつけたりするそうだ。

すっごい地味!


問題は姫路さんか?

新しく増えた『解析』は熟練度が上がるたびに解析度が跳ね上がり『分解』は内部をバラす事で理解度を上昇させるそうだ。

そして大問題なのが複製のパーセンテージが100%→150%まで上昇した件だ。

そして素材を有しての複製が一度解析したものならば即座に複製できる様になってしまった。


つまりこの事実が桂木先生にバレたら飼い殺しにされる未来が待っているのだ。

わりかし損益を出してるからなぁ、姫路さん。

きっと元をとっても解放してもらえないぜ。


で、城島さんは鑑定の他に『ステータス看破』『弱点付与』が増えたそうだ。

というか弱点を付与できるって意味が分からん。

これで戦闘に貢献できると嬉しがってる様だが、これからの戦闘がよりあっさり終わるという事だ。


「それであたしはー、充填範囲が単体から範囲に変わった感じ」

「だから俺のスマホがフルになってんのか」


最近バッテリーの持ちが悪くなって充電しても80%くらいがデフォだったのに。すげーな、充填って。


「しかもこれ、ON/OFFが可能なの」

「へー、今までの通り単品には?」

「多分できるけど、破裂するかも?」


こわっ。


「なんでまたそんな事に?」

「多分肉体に変化が起こってからだと思うんだけど、身体中からすっごい何か湧き上がるものがあるんだよね。OFFにしてるとムズムズするっていうの? だからあたしのためにも受け入れて欲しいなーって」

「あー、笹島さんの肉体では受け止めきれないから垂れ流しと?」

「そんな感じだけど、その言い方は傷つく」

「おっとごめん」


そして麗しの吉田さんは、笹島さんと同じように『単体解呪』から『複数解呪』に変わっていた。


うんその見た目たるやエルフならぬエロフである。

浮き立つ美貌に男子からの熱視線も集中している。

そして木村がしつこい。

後で教えてやるから席に着け。

授業始まるぞー。



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近況ノートにて、主人公、笹島さんの見た目の変化をイラストで投稿してますので良かったらご閲覧くださいませ。

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