第11話 スキルの可能性は人それぞれ
吉田さんの解呪魔法で強制的に泥酔を解除させられた桂木先生は、この一週間で商人として様々な経験、そしてレグゼル王国の黒い噂を聞いて国外逃亡を図った様だった。
取り敢えずみっともないと言うことでジャージを貸し出してもらった桂木先生が、王国に属したクラスメイト達の心配をしていたとかなんとか。
ちなみに無理矢理強制転移した場合も、向こう側の転移情報が獲得出来たりする様だ。
桂木先生がいた場所はバロウ王国のガッシュと呼ばれる街で、俺の転移先にもしっかり残されている。
「先生、帰れるならまたあの場所に戻りたいです?」
「そりゃそうさ。大手の取引をしていたところだ。でもさ、こっちと連絡なんてとれっこないだろ? 今回みたいに急に引っ張られても困るんだよ」
「それだったら、スマホを転移させてそれでやりとりしたらどうかしら?」
城島さんが意味のわからない提案をした。
彼女の鑑定はクラスメイト全員の能力が一堂に揃ってる状態だ。
「つまり?」
「姫島さんの『複製』スキルと木村君の『放送局』、笹島さんの『充電』、あとは磯貝君の『転移』これを下野君の『合成』で混ぜて更に姫島さんの複製で全員に配る。これで転移にも対応したスマホが出来上がると踏んでるんだけど?」
「取り敢えず城島さん、勝手に人のスキル暴くのはやめようか?」
「そうだよ! っていうか僕の合成ってそんなことできるの!?」
「美玲ちゃん、充電ってマジ? 神スキルじゃん」
「こっちで使う分にはねー。でも向こうで使うには微妙じゃん?」
「それ言ったら俺の放送局とかどうなのよ?」
「Wi-Fi機能とかそれこそ神じゃない? あたしそっちの方が嬉しかったなー」
「それ以前にまだ私の複製はそっくりそのものを作り出せる熟練度に至ってないわよ?」
提示された情報は、スキルを暴かれただけではなく。
熟練度不足も露わになる。
「それを言ったら俺の転移も設定した人物を特定の場所に引っ張ってくることは可能だけど、移動してる人物に直接送ることはできないんだ」
「こればかりは見えててもままならない物ね」
「だなぁ。でも協力技っていうのも面白そうだ」
沸き立つクラスメイト達。その全員が異世界で生き残るのを早々に諦めてるのだ。
ちなみに今挙げられたスキル群で現地に残ったのは木村ぐらいである。残ったというより置いていったという方が正しいが。
で、向こうで活躍(?)してたらしいスキル持ちも、現状を打破すべく色々提案を出し合った。
その頃には岡戸も復活していて、なんだか随分と長い夢を見ていたと言っていた。
どうもナターシャという人物そのものが岡戸を陥れるために遣わされた刺客の可能性もあった様だ。
一足早く大人の階段を登った岡戸は、その直後に手渡された腕輪を嵌めた意向の記憶がない様だ。
城島さんは俺たちをその腕輪で縛り付けておもちゃにするのが目的らしいことを述べる。
それぞれが異世界に夢を抱いていたことを強く痛感し、そしてこの能力をそう生かしていくかを考えた。
強すぎるスキルは身を滅ぼし得る。
あと魔法が一切使えないこの地球では、岡戸の様なMPに依存する魔法使いは無能のレッテルを貼られた。
いや、今まで通りでいいじゃん。
でもこっちでも使えるスキルを持ち越せた者はやっぱり目立ってくるんだよね。転移使いの俺とか、回線強者の木村とかは。充電強者の笹島さんとかはみんなに重宝されてるよ。
向こうへ行けば活躍の機会は幾らでもあるが、また利用されるかもしれないと思うとまた行こうとは思えなくなったらしい。
ま、いいんじゃないのそれはそれで?
俺は新たに獲得した転移先を眺めながら今後どうやって異世界を楽しむかを考えていた。
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アキラ・イソガイ
スキル:転移LV12
<転移先>
再使用、回復時間【72:00:00】
教室【2/10】
自宅前【3/10】
学校跡地【1/1】
市民プール【10/10】
映画館【3/3】
デパート【2/2】
コンビニ【3/10】
レグゼル王宮【1/3】
レグゼル城:城下町【1/1】
レグゼル王国:エルヴィアの街【1/1】
レグゼル王国:酒場【1/1】
バロウ王国ガッシュ:酒場【1/1】
<同時展開ルーム数:10個>
<同時展開設定数:2種>
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※繰り返し転移することで熟練度が加算され、試行回数の分母が増える仕組み。
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