第92話 同窓会

 取り敢えず、本人たちの予定もあるからと二週間の期間を設けて同窓会と相なった。

 場所は高校跡地。


 新しく建てたのはエルフ高校。

 60歳から入学可能で、エルフ化する前までは定年退職する人達が第二の人生を始める御歳。それが学ランを来てワイワイしてる姿というのはなかなかにクるものがあった。


 なんだったら俺たちの同級生は小学生だしな。

 エルフってつくづく頭おかしいわって今更ながらに思う。

 なんもかんも見た目が若返ったのがいけない。


 高校のグラウンドは、悉く魔法用のデコイが置かれ、ご年配(60代)がゲートボール感覚で魔法を操って爆発四散させる姿が見える。


 10代のシーカー達は、それを見て元気だなって微笑ましい笑みを送っていた。

 俺たちのクラスメイトにもシーカーをやってる奴もいるが、まあまあ変人が多い。


 そう言えば木村のお兄さんも現役シーカーだそうだ。

 並行地球と違ってダンジョンマスターには選別されないが、クラセリアの雇われ傭兵として名前が売れているそうだ。


「磯貝、主催者のお前が何端っこでエール満喫してるんだ。こっち来てなんか喋れ」


 下野のエールに舌鼓を打っていたら、未だに冒険者をやってる伊藤達に引っ張り上げられて同窓会を開くきっかけを語ることになった。


 並行地球での噂は木村の配信で割とクラセリア中に知れ渡っている。しかし、この殺伐とした環境に慣れ親しんだクラセリア人から見たらまだまだぬるい環境であることは確か。


 俺は思い出を語りながらダンジョン経営の合間に新婚旅行をした事を宣言。いっそこのまま修学旅行にでもいくかとダンジョン巡りをする事にした。


 伊藤はアトランザで冒険者をした後、ジャキンガルでお嫁さんを確保。後、ヴィオスを獣人に変更して家族で暮らしてるらしい。

 ちなみにエルフはスーパーで売ってる一個150円の千年樹の実でいつでもなれるので、ヴィオスでの暮らしは苦でもないのだとか。


 ヴィオスってどんなところ? そう聞くと、だいたいが野蛮人の巣窟と言われるのだが、伊藤は肌にあってたらしい。

 根っからの野蛮人はさすが違うなと思った。


 槍使い(竜騎士)の田所は赤城さんファンクラブと一緒にアトランザでアイドル活動をしてるらしい。日々ファンから袋叩きに遭っているらしいが、高い耐久力で無傷。赤城さんからは頼りにされてるようだ。ちなみにお付き合いしてるらしいが、結婚はしてないらしい。

 婚姻届を役所に出しても、なぜか受理されずに却下されるんだそうだ。役所にまでファンの回し者が? と田所は悩んでいるそうだぞ。


 火炎騎士の麻生は、炎帝と呼ばれる赤龍(のじゃロリ)を捕まえて無事ゴールイン。

 ペド野郎だの女子からは酷い言われようだが、夫婦仲はいいらしく、第一子がそろそろ誕生するようだ。

 炎帝さんは齢1500歳だそうで、人間換算で25歳とお姉さん。

 なんでロリなのかと言えば、エルフよりも長生きだからだそうだ。

 俺たちが実は小学校に通う年齢だと話を振ったら、ちょうどいい年齢じゃんね、と言われてたよ。


 岡戸も新しい恋を始めたらしい。

 アトランザで見つけたエルフの少女で、岡戸に負けないくらいの魔法の才能の持ち主。

 子作りはそこまで興味はなく、今は腕を競い合うのが楽しいようだ。結婚はまだするつもりはないとのこと。

 まぁ、エルフの20代ってまだ子供だもんな。


 下野夫婦は相変わらずだ。

 アトランザで錬金術の店をしながら、俺から提供した素材でマッドな開発に日々余念がない。

 並行地球で販売してる武器は下野が開発したものが多く、中には時代を無視したレーザーガンなどが混ざってる。

 ファンタジー世界にそんなの持ってくるなよと言ったら鼻で笑われたのを覚えている。

 

 桂木先生は、桂木先生だった。

 拠点をエスペルエムに変え、より商売で大儲けしてるらしい。

 アイテムバッグ神拳とか言う謎の流派の師範代も兼任しており、ポーターの立場改善に尽力してるそうだ。

 ちなみにまだ学校の先生も兼任してるらしく、週末の異世界が心の拠り所なんだって。

 異世界に嫁が多くいるが、認知してないクズとのもっぱらの噂。

 クラスの女子から嫌われていた。


 吉田さんは相変わらずポヤポヤしており、それでも恋人を見つけてもうアタック中だって。

 ん、前後の文脈繋がってなくね?

 単純に片想い中との事。

 ただ相手が種族の垣根があってなかなかプロポーズに答えてくれない気難しいタイプなようだ。


 どんな種族なのかと聞いたら「キマイラ」と返ってきた。

 俺はそっと話を打ち切った。


「磯貝〜、お前ばっかり地球旅行できて羨ましいぞ〜。俺たちも連れてけ」


 とは桂木先生の談。

 二次会は並行地球とあいなった。


「こっちの地球は俺たちの知ってる地球と何が違うんだ?」

「ゴリゴリ君のスルメ味があったな」

「開発者の頭大丈夫か?」

「それ、コンポタ味があるって言った時同じような事一緒のクラスになったやつに言われましたよ?」

「あー、こっちにはあの味がないのか」

「微妙に違うっぽいです」

「磯貝、お金貸して! 買い食いしたい!」


 昔を懐かしんで伊藤がそんなことを言ってきた。

 頭の上から犬の耳を生やした男がだ。

 今は人間の耳をつけていて見えないようになってるが、変装中の俺たちには元の姿が見えている。


 お前、その格好で行くのか? と二度見したのはお約束。

 なお、耳は隠せても尻尾は隠せないのでぶんぶん横に触れる尻尾についてはそう言う道具だと説明して切り抜けたらしい。


 買い食いしたいのはアイス。

 かじってちゅうちゅう吸うやつだ。

 犬歯で人間だった時と同じように噛んだら、気管に詰まって盛大にむせていた。あと、種族変更で味覚に変化があったらしく、あまり美味しくないとの事。

 残すんなら金返せと言いたい。

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