第4話 転移の可能性
家の前の問題を片付けたのはいいが、一つ問題が起こった。
俺は教室にたどり着くなり、室内にぎっしり詰め込まれたマスコミ達を見て大きなため息をついた。
これはあれこれ聞かれそうだと思いつつもスルーして自分の席につく。もう授業が始まる時間だ。子供達に勉強をしろとうるさい大人達が割って入ってくることはない。そう思っていた。
のだが……マスコミ達は止まらなかった。
とっくに正気を失ってるのだ。そうじゃなきゃこの仕事はできない。
名は体を表す。それはマスコミがマスゴミと言われてる所以である。
他人の迷惑で飯を食う連中は面構えからして違う。
桂木先生が出るとこに出てもいいですよと凄んでも止まらないのだ。
そこで一人だけ毛色の違う王女様やその騎士達に突撃インタビューする猛者まで現れる。すごい度胸だ。これから授業に入る雰囲気を完全にぶち壊してあれこれ聞き出そうとしている。
もはや授業どころではない。
これまた口が軽く、SNSへの拡散が早い影響力のあるクラスメイトがそんな様子をビデオで撮影して早速ネットに投稿していた。
こいつが俺の住所を晒しあげたやつだな? マスコミの卵め!
あとで覚えてろよ、木村ぁ!
嫌がる王女様を守る様に前に出る騎士達。
あーもう無茶苦茶だよ。それもこれも俺の招いた結果というのがまた最悪だった。
なので俺は転移の魔法を使い、学校ごと異世界へと転移した。
学校にはお城がくっついてる形であり、代わりに【学校の跡地】が加わり、俺たちは歓喜に震える王城連中や王女様、騎士達とは裏腹に、突然異世界に連れて来られた目の色を変えるクラスメイト達を見てため息をつく。
「岡戸君、嬉しそうだね?」
「そりゃそうさ。魔法って一度使ってみたかったんだよね!」
手のひらから炎や氷を出すクラスメイト達。
うん、楽しめてるんならいいんじゃない?
その後のことまで考えてるなら尚いいね。
「磯貝、またお前か!」
担任の桂木先生が俺をどやしつける。
学校中がパニックなのだ。その責任は取れるのかとその目がいっている。
「先生、俺よりも授業の邪魔をするこの人たちをなんとかしてくださいよ」
「よく決意してくれましたアキラ様!」
「お前はやるやつだと思っていたぞ、アキラ!」
と、マスコミに文句を言おうと立ち上がった俺に縋り付いてきたのは新規参入したクラスメイトである異世界メンバーだった。
王女のエミリーに騎士のマクベス、従者のロイドだったか?
整った顔立ちの三人が故郷に帰って来れたことに感涙し、魔法さえ戻ってくればこちらのものと言わんばかりにマスコミを蹴散らしている。
やはり魔法を使うやつは野蛮でいけないね。
窮屈な生活を敷いていたのは本当だけど、騎士の一部が「ここは天国か?」と日本を満喫していたのはクラスメイトのマスゴミこと木村のリークで日本中に知れ渡っている。
それだけこっちでは辛い訓練ばかりだったのだろう。
一部はこちらに永住するんだと我儘を言い始める連中まで増え始めていた。
騎士団の内部崩壊だ。
よもや王への絶対の忠誠心がジャンクフードや栄養ドリンクによって瓦解するとは夢にも思わなかった様で、嘆かわしい問題と大臣の太ったおじさんがハンバーガー片手に憂いていたっけ。
もうこの国終わってたわ。
国の重鎮がこぞって日本料理やジャンクフードにハマってる時点でね。
やっと帰ってきた故郷だというのに「余計なことをしてくれたな」と言わんばかりの視線が刺さる。
それが日本に残りたがってた一部の騎士や、無理矢理連れて来られた生徒達。
そして俺の頭に再びインターホンが鳴らされた。
ピンポーン
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❗️ <転移LVが2に上昇しました>
選択肢を重複して選ぶ事ができます。
─────────────────────
❗️ <ルームの異能を獲得しました>
選択範囲をルームに紐付けします。
以降、ルームに設定した人種、範囲を転移対象とします。
─────────────────────
アキラ・イソガイ
スキル:転移LV2
<転移先>
教室【166:39:27】
レグゼル王宮【167:20:18】
自宅前【即時可能】
学校跡地【即時可能】
<ルーム設定1>
選択1:未設定
選択2:未設定
──────────────────────
あ、なんか増えた。
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