第62話 自由時間①

時間の経過が変わる世界、か。

俺はこれは検証する必要がありそうだと真剣に考える。

もしかしなくてもこっちなら自由時間が増えるのではないか?


もちろんだからと浮気するつもりはない。

しかし美玲さんは若いうちに子供を作っておくべき。

歳を取ったら色々大変よとかーちゃんから教わってるのでそれはもう俺を誘った。

最初こそは気分も良かったが、それが何日も続くとなると地獄だった。


不思議とその時はやる気に満ちているのだが、終わった後のげっそり具合は日に日に激しくなっていった。

これは多分寿命か何かが消耗しているのではないか?

そんな予感が拭えない。


そもそも長寿になったのだから急ぐ必要もないのだが、彼女は俺が浮気するんじゃないかと疑心暗鬼に陥ってるのだ。

子供を作ることでようやくその不安が消え去る。かーちゃんにそう言われてその気になっているのだ。


「美玲さん」

「なぁに、あっくん?」

「俺、この世界でやることができたんだ」

「あたしも付き合うよ!」


俺は首を横に振る。


「危険な仕事なんだ。美玲さんを巻き込む訳にはいかない!」


そして必死に食い下がった。


「そっか。危なくなったらいつでも帰ってきてね? あたしは安全なバイト先で頑張るから」

「ごめんね? バイトが休みの日なのに」

「いいの。あっくんもこの世界を売り込むのに大変だもんね?」

「ああ、もし転移後に不備があったらお客さんからクレームが来ちまうからな。社長として不安要素はできるだけ取り除いておきたいんだ」

「うんうん、会社のために働く夫を立てるのも出来る妻の務めだもんね。お仕事がんばってね!」

「うん」


美玲さんを送り、俺はようやくホッとした。


「自由だーーー! ひゃっほーー」


思わず小躍りしてしまうほどの開放感。

しかし自由と言っても何をするべきか?

もちろん検証もするが、向こう(クラセリア)の時間とこちら(エスペルエム)の時間の差異次第では俺の自由時間がどれくらい増えるかが掛かってる!


だがその前に。

この育ちきってるスキルの検証もなんとかしないとな。


───────────────────────────

カウンター転移LV6

1_【無意識下の時、害意を持って近づいた相手】を【アトランザ】に

2_

3_

4_

5_

6_

───────────────────────────


設定は割と長い説明でも大丈夫な様だ。

転移先は覚えてる場所ならどこでも設定できる様だった。


ならば俺はこう設定してみる。

わざわざ【入れ替え】を使って転移先を増やしつつ検証。


───────────────────────────

カウンター転移LV6

1_【無意識下の時、害意を持って近づいた相手】を【アトランザ】に

2_【財布を狙って体当たりしてきた相手の財産】を【俺の財布】に

3_【敵意を持って接近してきた相手】を【肥溜め】に

4_【殺意を持って接近してきた相手の武器】を【武器屋】に

5_【殺意を持って接近してきた相手のスキル】を【俺のスキル欄】に

6_【騙そうと近づいてきた相手】を【牢屋】に

───────────────────────────


正直、設定しつつもいくつか無理だろうなって思うものがある。

以前変えた善人を判定する設定はまるで機能しなかったし、ダメ元だ。


しかし、レベルアップをして実感してたけど。

街の人並み変わったなぁ。

身構えなくて良くなった分、このスキルの活かしどころがないのも困ったところだ。


いっそ此処で冒険者の続きでもしようかね?


ただあんまり転移を多用するとやりがい搾取をされかねない。

そこで一日に使える量を限定してみるのはどうだろう?

ステータスばっか強くても俺ってば戦闘はからきしだからなぁ。

やっぱりポーターか商人になるわけだ。


こういう時、桂木先生の戦闘技術を末恐ろしいと思う。

なんでアイテムバッグのスキルで対人格闘やってんだろ、あの人。

やったらできたじゃないんだわ。

主人公補正だろ、そういうのって。


俺にもそういうのつけてくれよ、本当。

そんなことを考えつつ俺は冒険者ギルドを訪ねた。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る