第3話 パパラッチ強襲

さて、俺のスキルがクラス中に漏れた翌日の事である。

何故か俺の家の前にマスコミが押しかけていた。

口の軽いクラスメイトというのはどこにでもいるもんだ。


「章、あんた何やったの? こんなに押しかけてきて、ご近所迷惑じゃない。母さんこれじゃ表に出れないわよ!」

「なんもやってないって。っていうかなんで俺?」


かーちゃんが速攻で俺に疑いをかける。

つい一週間前に警察のお世話になったものだから、まだ疑ってるらしかった。


「章、諦めなさい。好奇心というのに人は抗えないんだ。父さんも昔……」


とーちゃんの昔話が始まってしまった。こうなると長いんだよな。


「そもそも、なんの用事でうちに押しかけてんのさ?」

「なんでもあんたがすごいスキル? だかを授かって秘匿してた事が問題だって話よ? 母さんもよくわかんないんだけど、それは本当?」

「ああ、やっぱそれか。その話はマジだよ。でもそんなに使い勝手がいい話じゃなくて。実は……」


俺は家族に能力を打ち明けた。

転移は可能であるが、再使用までの期間は1週間単位である事。

何をすればレベルが上がるのかは不明である事。

異世界での一週間、安全とは言い切れないことを述べる。

打ち明けた家族の顔はなんとも言えない感じだった。

やっぱそう思うよな?


「それはなんとも使い勝手が悪いわね」

「だろ?」

「しかしどうやって帰って来れたんだ?」

「ああ、なんか転移先に『教室』があってさ。そこを選択したら帰れたんだよね、建物ごと。多分俺が認識した範囲が教室だったら教室ごと、王宮、お城だったらお城ごとって感じで規模がデカくなるんだと思う。自分で言っててあれだけど、割と不便だと思うんだよ、この能力」

「自分の意思で範囲の選択はできないと?」

「やってもいいけど、今やっていい? 言っとくけどなんの準備もままならない、朝の住宅街を巻き込むことになるけど。本当にやっていい?」


とーちゃんの指摘に、脅す様にけしかける。


「むしろあの人達が迷惑だから、ターゲット絞るんなら『マスコミ』に選択してやってみたら?」


かーちゃんが真顔でそんなことを言った。今この瞬間切り抜けられればいいと言う浅い考えである。

やはり家族。考え方って似るんだな。


と、そんな時。頭の中で再びピンポーンとインターホンが鳴った。

ドアのインターホンと同じ音なので紛らわしいったらありゃしない。


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 ❗️ <選択範囲を居住区から職業に変更しますか?>

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どうやら居住区単位が職種単位で飛ばせる様だ。

なんだ、便利な機能があるんじゃないか。

でもそれって職業斡旋じゃね?


そう思ったが、今現在迷惑してるのは本当なので『教室』に『マスコミ』を選択して飛ばしてみた。流石に異世界に飛ばすのは常識的に考えてやりすぎだろう。そもそも俺がいない場所で帰ってくる見込みもなければイタズラでは済まされない。


すると家の前に押しかけたマスコミ達が一瞬にして消え去った。

代わりに転移先に自宅前【即時可能】が増えている。


ああ、こうやって転移前と転移先が増えてくタイプなのか、これ。



─────────────────────

アキラ・イソガイ

スキル:転移LV1

<転移先>

教室【168:59:27】

レグゼル王宮【即時可能】

自宅前【即時可能】new!

<選択範囲>

建物 new!

職業 new!

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