第73話 マナの仕組み

監督から注意を受けたので、有り難く実家に帰って食べさせた。

かーちゃんはそれを受け取って眉を顰めたが、とーちゃんに味見させて生でも食えるトマトの親戚だと理解した。


生ハムにモッツアレラチーズ、オリーブオイルを垂らしておしゃれに頂いた。見た目はアレだが、大変美味だ。

向こうじゃドレッシングや調味料の類もないので生で齧り付くしかないが、流石職にうるさい日本人。拘り方が段違いである。


実家に帰ってきたついでに久しぶりにあーちゃんと再開したが、タイミング悪くぐっすりと眠っていた。

しかし美玲さんが抱き上げると、再起動する様にキャッキャとはしゃぎ出す。


そのことにかーちゃんは驚いていたが、俺はなんとなく察する。

ホムンクルスが糧とするのは何か?

きっとマナだ。それも大量のマナを要し、それが切れる寸前になるとスリープモードに移行するのだろう。


実は俺たちがジャキンガルに渡って3日目でスリープモードに入ったらしく、それきり寝ていたらしい。今まで通りの子育て方法がまるで通用しないので焦っていたみたいだ。俺の持論を展開したら、あんまり理解できない様でいた。

それも仕方ない。うちの両親はともにMP消費型ではないからな。

MPを獲得するにはアトランザやエスペルエムに行く必要があるのだ。


それはさておきなんて上手い仕掛けだろうと思う。

同時に下野達が世に販売しない理由もわかる。

これもきっと次元門と同じレベルの代物。


美玲さんだからこそ預けた一点もの。

母親が抱き抱えることで起きる様に見せかけた巧妙なトラップだ。

これは定期的に抱っこしに来なければいけないな。


そしてすぐにジャキンガルに戻り、時間の計測をする。

エスペルエムで懲りてるので、もはや日課となった行動だ。

特に時間の差異はないのでホッとする。


そしてこっちでも実家での様な食べ方ができないか思案した。

流石にこの里にモッツアレラチーズを仕込む施設はないし、オリーブオイルもそれに近しい果実がここにあるのかどうか。

それを自由時間に美玲さんに話せば、そこに姫路さんが混ざって料理の話になった。


いつも調理の際に扱うのは水や火の魔法。

女性は聖霊との相性が良く、得意属性によっては調理に欠かせない戦力になるのだとか。

風属性の魔法で野菜や肉を切り、包丁やまな板の類がないんだって。

なんだったら台所もなく、カゴに乗せられた収穫物を巧みな魔法操作で料理に仕上げていく様は精密機械の様だったとか。

なお、二人とも精霊との契約を結んでいないらしいので、俺が朝方気がついたネタを提供する。


「え、契約枠って消せるの?」

「おう、教官殿曰く、それは素質だから祈る旅に枠が埋まるが、それが空いてるだけでマナ我慢単位で消費するとかなんとか」

「万も持ってかれたら僕は何もできなくなるよ?」

「ここで肝なのがクラセリアで入手できるスキルだ。俺たちは偶然にもMP消費型ではない。多分マナって他の世界でいうところの魔力やMPの事だよな?」

「多分ね」

「しかし俺はさらにそこからマナの総量を増やす術を発見した」

「大発見じゃない。その方法は?」

「恋人と一緒の時間を作る。多分エッチなことしてれば上がるぞ」

「「そんな事で?」」


下野と姫路さんの声がハモる。

この夫婦はカップルだった時から随分マニアックだったと聞く。

だから俺たちに迫るくらいかそれ以上あって然るべき。

そう思っていた俺に、美玲さんが控えめに挙手をした。

かわいい、じゃなくって。


「なに、美玲さん?」

「もしかしてあっくんのマナ量が多いのって、あたしのせいかも」

「どうしてそう思うの?」

「実は……」


彼女の独白を聞き、俺は確かに思い当たる節があった。

その思い当たるものとは?


エッチした後に異様に疲れる事。

だというのに行為中は一度も折れずにビンビンだった事である。

しかも行為をおっ始めたら10時間以上つながりっぱなし。

若いからってそれは異常だと下野夫妻は言う。


だが美玲さんはそれができた。

彼女はとうとう充填で回復できるものを魔石の様なアイテム、メンタル的なMP。さらにその先、男の性欲までも瞬時に回復。なんなら耐久まで回復してしまい疲れを残さないエッチの申し子になっていた。


まさか俺との間にそんな熟練度を上げまくっていたなんて知らなかった。

俺としては不思議だなと思っていたが、それは自分がそういう体質だからだと思っていた。

まさか全部彼女の仕業だったとは……


その最たる理由が「だって早くあっくんとの赤ちゃん欲しかったんだもん」との事。

男が言われたらたまらなく貢献してしまうであろう破壊力抜群のセリフ堂々の第一位だろう(俺調べ)


早速その気になってベッドに押し倒すが、下野夫妻がとても言いづらそうに俺と美玲さんを見比べ、こう提案してきた。


「それ、僕たちにもしてもらえる?」

「そうよね、二人だけずるいわ。トモ君は体力ある方だけど、磯貝君程あるかと言われたらちょっと疑問だし」

「いや、アレは磯貝君がおかしいんだって! 僕は普通に耐久力には自信あるよ?」

「それはわかるけど。私結構欲求不満なのよね……特に美玲ちゃんの声聴いちゃってるとウズウズしちゃうの。トモ君は先に寝ちゃうし、残された私だけ自分で慰めてるのよ?」

「ぐっ……それは面目ない。というわけで、どうだろう磯貝君?」

「美玲さん」

「そうだねー、お友達だもん、それぐらいは許可してあげないと」


その日、四人揃ってマナ上限を1000上げた。


流石にエルフが長寿であろうと、種を出せばマナがごっそり減る。

人によってマナ総量が異なる様に、回数も決まっているのだ。

俺たちの様に天井知らずに致せるカップルはそうそう居ないので、まさかこんな単純な方法でマナ総量が増やせるなんて知らなかったみたいだ。


ただ、知ったからってやれるかと言われたら話は別だったりする。

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